夏休みは暇?
夏休み初日。夜は宿題をするわけでもなく、外出するわけでもなく、ただひたすらだらだと過ごしていた。
こたつの上でごろごろする猫のように、夜は床に寝転がってだらだらとしていた。夜の夏休みの過ごし方は毎年変わっていない。ただひたすらにだらだらするのだ。わざわざ暑い夏休みの日中に外出などしたくないし、まず夏休みは暇なのだ。
始まる前までは楽しみで楽しみで仕方がないのだが、いざ始まってしまうと物凄く暇なのだ。部活で休みがなく忙しいという人はいるだろうが、生憎、二次元部は夏休み中の活動予定はない。みんなで遊びに行こうとか言ってはいたが、それが何時かもわからない。つまり、暇なのだ。宿題? そんなのあったっけ?
「おにいちゃん、何か欲しいものある?」
「ん~、いや、何もいらない……。動くのすら怠い……」
「じゃあ、一生養ってあげるからね? おにいちゃん。一生、一生だよ?」
「うん、ごめん。やっぱり動くわ」
このままでは本当に一生養われてしまう。あかりはやると言ったらやるだろう。それが、夜のためなら絶対だ。流石に、妹に一生養われるのは兄としてどうかと思うし、あかりには何時の日か大切な人と時を共に過ごしてほしいのだ。それなのに、養ってもらうわけにはいかない。まぁ、本当の理由を言えば怖いからである。兄として情けないと思われても、怖いものは怖いのだ。まだ死にたくないのだ!
「なぁ、あかりはどこか行きたいところはないのか? 折角の夏休みなんだからさ?」
「ないよ? わたしは、おにいちゃんと一緒にいられるだけでいいの。おにいちゃんが行くならわたしも行くし、おにいちゃんが行かないならわたしも行かない」
華の女子高生が夏休みに行きたいところがなく家に引き籠っていていいのだろうかと考えたところで、夜は見当違いをしていたことに気付いた。夏休みにきゃっきゃうふふする女子高生は普通の女子高生だ(夜の勝手な考え)。つまり、普通の女子高生ではないあかりには当てはまらないのだ。
流石にこのままではマズイ。夜が夏休みの間家から出なければ、あかりも家から出ようとはしないだろう。つまり、あかりと夏休みの間中ずっと一緒にいるということになる。別に構わないだろう、それが普通の兄弟なら。いや、子供ならまだしも高校生だったらあれかもしれないが、再度言うがあかりは普通ではないのだ。このままでは、本当に養われてしまうかもしれない。それだけは阻止しなくてはいけないのだ!
「俺、ちょっと外行ってくるわ……」
「それなら私も行く~!」
断りたいところだが、断ったところであかりは付いてくるだろう。何なら、バレバレの尾行までして夜の後を付いていこうとする。周りから不審に思われて警察のお世話になるよりは、一緒に行った方がいいだろう。
それに、夏休み中家の中でだらだらしていては身体が鈍ってしまう。元より、運動とか体育は嫌いなので別に構わないのだが、あかり達に今まで以上に振り回されると考えると体力はかなり重要となってくるかもしれない。
「それでおにいちゃん、どこに行くの?」
「ん~、考えてないんだよなぁ。あかりは行きたいところあるか?」
「おにいちゃんと一緒ならどこでもいいけど……、アクセサリーが見たいかな……?」
「……なんか欲しいのでもあるのか? 買ってやるぞ?」
「ほんとう!? それなら、婚約指輪を……」
「帰るか……?」
なんとなく、なんとなくだが察してはいた。アクセサリーと聞いた時点で嫌な予感はした。だが、まさか本当にそうだったとは思ってはいなかった。どうして、婚約指輪を妹に買わなくてはいけないのだ。そういう大切なものはいつか大切な人が出来た時に買ってもらえばいい。
だが、夜の横で幸せそうに微笑んでいるあかりを見ていると、大切な人が出来るか不安である。直接は言えないが、あかりには普通の恋をして欲しかった。
一体、何時からあかりはこんな風になってしまったのか。一体、誰の所為でこんな風になってしまったのか。それを、夜は知っている。全ては、あの日、夜が放った言葉がすべての元凶なのだ。
「どうしたの? おにいちゃん」
「いや、なんでもない。……さっさと行くぞ。街中行ったらあるだろ。指輪、買うんだろ?」
「え、おにいちゃん……。ついに、わたしと結婚……」
「しねぇよ。飛躍しすぎだ」
何時か、あかりには普通の恋をして欲しいと、夜は願いながら歩くのだった。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたなら幸いです。
文字数は少ないのに、書きあがるのが投稿ギリギリって何でなんでしょうね? 文字少ない代わりに詰め込み過ぎなんでしょうか? いや、そんなわけないですよね、ただでさえ少ないんだから。
夜達は夏休みに入ったというのに、俺は二学期が始まりましたよ。学校行ってる間書けないのは辛い……。持って行ってやろうかな?w まぁ、しませんけど。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。




