ただいまです
これにて4章は終了!
玲奈と智哉が仲直りをすることが出来た翌日、玲奈は二次元部の部室へと来ていた。もう、二度と来ることはないと思っていた自分の居場所。だが、智哉に許可を貰った今、ここに来ることが出来るようになった。そして……。
玲奈はドアのノックしようとした。が、緊張の所為か、それとも別の何かか。目の前のドアを開けることが怖いのだ。昨日、覚悟はしたはずなのに、いざとなると足が竦んでしまうのだ。
玲奈がドアの前で逡巡していると、後ろから声を掛けられた。ある意味で、今一番会いたくない人に。
「……レイ、ドアの前で何してんだ?」
「ひゃわ!?」
突然かけられた声に、玲奈は間抜けな声を漏らしてしまう。そして、我に返り顔を真っ赤に染める。何て恥ずかしいことをしてしまったのだと、恥ずかしい声を出してしまったのだと。
「……る、ルナ先輩!?」
「そんな驚くことか? ……ったく、さっさと行くぞ?」
夜は玲奈の手を取り部室のドアを開けた。開けた先には……。
「「「「おかえりなさい」」」」
ドアを開けた先にいたのは、優しく微笑んでくれていたあかり達だった。掛けるべき言葉は、たった一つ、「おかえり」だけだ。玲奈がどう思っているかは知らないが、そんなものは関係ない。何故なら、玲奈はまだ部活を辞めていないからだ。例え、退部届を提出されていても、瑠璃はそれを受理していない。つまり、玲奈はまだ部活を辞めてはいないのだ。
二次元部からしてみれば、玲奈は長い旅行に行っていたようなもの。それならば、かける声は「おかえり」の一言で十分、否、十二分だろう。
玲奈はどんな言葉を返せばいいのか迷っていた。玲奈自身は辞めたと思っていたので、おかえりなんて言ってもらえるとは夢にも思ってなかったのだ。迷う、というよりは驚いたの方が正しいのかもしれない。
「ただいまでいいんだって、レイ。お前はここに遊びに来たんじゃない。帰ってきた、そうだろ?」
そう言って笑う夜を見て、玲奈の迷いは吹っ切れた。そうだった、ここには遊びに来たわけではない。帰ってきたのだ。一度は諦めかけていた場所に、玲奈は帰ってくることが出来たのだ。
「……みなさん、ただいまです」
「あぁ、おかえり」
帰ってきたのだと、玲奈はようやく実感した。
そして、ここに来たら言わなくてはいけないと思っていたことがあるのだ。心に芽生えてしまったあの想い。もし、その想いを伝えてしまったら今までの関係ではいられないかもしれない。けれど、自分の想いには嘘を吐けないのだ。忘れようとしても忘れることが出来ないのだ。だから、玲奈はここで宣言する。
「あの、みなさんにお伝えしたいことがあります」
「ん? 感謝の言葉ならいらないけど……」
「おにいちゃんは静かにしてて。きっと、大事な話だから」
あかりのいつになく真剣な様子に夜は首を傾げた。しかし、夜に静かにしていて欲しいのはあかりだけでなく、夏希、梨花、瑠璃もだった。夜は嫌な予感が脳裏を過った。そして、玲奈の反応を思い出し、すべてを悟った。そして、疑問に思う。何処でフラグが立ったんだ? と。
玲奈は見透かされているということに恥ずかしさを覚えながらも、心の中であかり達に感謝の言葉を贈った。そして、夜の方へと向いた。
「私、ルナ先輩のことが、好きです。優しくしてくれる先輩が、私のために怒ってっくれたルナ先輩のことが好きです!」
「……レイの気持ちは嬉しい。前に言ったと思うけど、人に好かれるのは嬉しい。けど、俺は最低な男だぞ? 今も、あかり達への返事を保留にしている。だから、レイの気持ちに応えられないかも……」
「いいんです。確かに、フラれた方が諦めることも出来ます。でも、そうしないのはルナ先輩の優しさだと思うんです。だから、ハーレムなんて言われるんですよ?」
「確かにそうかもな……」
夜に、玲奈の気持ちを、想いについては何も言えるわけがない。それこそ、玲奈の想いを踏み躙るからだ。だから、ヘタレだのなんだの言われるのだ。それでも、夜には……。
「だから、私をルナ先輩のハーレムに加えてください」
「おい待てレイ。俺がいつからハーレムを作った? 俺は別に……」
「わかりました。玲奈さんをわたしたちは受け入れます」
「おい、あかり? 何言い感じに纏めてるの? ちょっと、あかりさん? お~い」
何故か知らないが、夜の知らない内にハーレムは存在していたらしい。夜にそんな気は全くない。女の子を侍らせる気など神に誓ってもないと言える。
「おい、夜! また女の子増やしやがって!」
いきなりドアを開け放ち、部室の中へ入ってきたのは柊也だった。何故か、涙を流している。少し、赤色が混ざっているのは気のせいだろうか。うん、気のせいだ。というかその前に、どうしてここに来たのだろうか。
「柊兄、どうしてここに?」
「いや、夜が一人の女の子誑かしてるって聞いてな!」
どうやら、校内では夜が玲奈をハーレムに加えようとしているという噂が広まっているらしい。一体、誰が流したのだろうか。そんな根も葉もない話を。
「ふざけんなよ、夜ぅ! どうしてお前だけがモテるんだよォ!」
「知るかよ! つか、手ぇ離せよ! 俺は別にハーレムなんざ作ってねぇ!」
その後、暴れに暴れた柊也は、運が悪かったことに足を滑らせ頭を打撲。保健室へと運ばれていった。一体、柊也は何がしたかったのだろうか……。久し振りの登場だからって張り切っていたのだろうか。そう考えると、柊也が少し不憫に思えてきた。可哀想に……。
「それじゃあ、話の続きですね。ルナ先輩、私はあなたのことが好きです」
「……俺は、その想いには応えてやれない」
「でも、それは「今は」ってことですよね?」
確かに、「今は」想いに応えられないのであって、「いつかは」その想いに応えられるかもしれない。つまり、可能性がゼロになったわけではないのだ。だから、それが好きでいることを諦める理由にはならない。
「だから、いつかルナ先輩が私を好きになってくれるように頑張ります」
「……はぁ、レイといいあかり達といい、どうしてこうも……。好きにしてくれ」
「はい、好きにします」
本当に最低だと思う。ここできちんと断ればあかり達に希望を持たせなくていいというのに。本当に、本当に、自分は最低だと嫌になる。
だが、夜が放ったその一言で、今の関係を壊したくないのだ。たった一言、されど一言。あかり達の人生を左右させると言っても過言ではないそんな大事なことを、夜は無碍に出来ないのだ。だから、考える猶予を貰っているのだ。
いつかは、一人一人の想いに応えなくてはいけない。夜は、そんな日が来ないことを祈るのだった。
そうして、月日は流れ、夏休みが始まろうとしていたのだった……。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、レイが晴れてメインヒロインへと昇格しました。パチパチパチパチ~……。どうしよう、俺ハーレム展開する気なかったのに……。これはもうキーワードにハーレムつけなきゃダメ? ですが、ラストはちゃんと一人の女の子とENDを迎えてもらいますのでご安心を。ハーレム展開を希望の方すみません。
さて、そんな話は置いといて。今回で四章は終了です。長々とお付き合いさせてしまい申し訳ありませんでした。まさか、ここまで長くなるとは……。まぁ、皆様にとっては地獄の一ヶ月番外編があったので長く感じるのかもしれないですね。
それと、番外編では出てきましたけど、本編ではお待たせしました! 柊也の登場です!w 無茶過ぎな気がしますが……。これで、約束は果たしたぜ、柊也( ー`дー´)キリッ
さて、五章からは投稿頻度が少しづつ遅くなっていくと思います。それでも、二日に一話。三日に一話を目指します。
それと、Twitterと活動報告では既に言いましたが、展ラブが75,000PVを達成いたしました。これも皆様方のお陰。心からの感謝を。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。




