何処かで見たことのある展開
※ネタが切れたがために辿り着いてしまった末路です。お許しください。
玲奈との電話を切った後、夜は急いで支度を済ませた。少しだけだが、デートに来ていく女の子の気持ちがわかった気がした。服装って大事だね。
休日は基本的にラフな格好で過ごしているため、少し新鮮な気持ちだった。まぁ、玲奈の父親に会いに行くのにパーカーにジーパンだったらマズいだろう。中に着ているTシャツがアニメキャラの描かれているものなら尚更だ。最初から与える印象が悪過ぎる……。
「持ってくのは、スマホと財布だけでいいか。後は……、何にもねぇか。さてと……」
夜は家のドアを開けようと……、
「どこ行くの、おにいちゃん……」
後ろから声が聞こえ、夜はゆっくりと振り向いた。そこには、当然の如くあかりがいた。そして、お決まりのようにあかりの瞳からはハイライトが消え去っていた。こてんと小首を傾げている無機質な瞳の女の子が呆然と立っている姿は、やっぱり、ホラーだった。
「何処って、言わなくてもお前ならわかるだろうが……」
「うん、わかるよ?」
「なら、聞くなよ」
夜の電話に盗聴器と発信機が取り付けられている限り、あかりが夜のことでわからないことはあまりない。外してと言っても、外してくれるわけがないのでもう諦めているが。
「……ねぇ、おにいちゃんはどうして説得しに行くの? 玲奈さんのため?」
「そうかもな、いや、その通りだ。レイの夢を応援したいって思ってるからあんなこと言ったんだ。一緒にいて楽しかったし。それに、あかりも一緒に遊んでた時、楽しかっただろ?」
つまらなかった、と言えば嘘になってしまうだろう。最初の頃は、わたしじゃなくて、その女なの? とか思っていた。でも、一緒にいて楽しかったのも嘘じゃない。夜が玲奈と親し気にしているのも少しわかった気はする。
だからといって、おにいちゃんがそこまでする必要ってあるの? とも考えてしまうのだ。つまり、玲奈に妬いてしまったのだ。短い時間の付き合いなのに、ここまで想われている玲奈に。
「話は終わりでいいか? レイが待ってるから俺は行く」
「待って、おにいちゃん!」
あかりは夜の手を取り、引き留める。本心を言ってしまえば夜には行って欲しくない。だが、ここで止めては玲奈は部活を辞めることになるし、夜が止まるわけがないともわかっている。それでも、もしかしたら夜が玲奈と……、と思ってしまうのだ。
「一つだけ、教えて欲しいの……」
「……」
「おにいちゃんは、好きな人いる?」
誰を好き、とは聞かない。聞きたくないというのも理由の一つだが、聞いても夜の想いは変わらないだろう。もし、そうなったら自分が何をするかわからない。下手をすれば、夜を監禁しかねない。でも、誰かわからなければ、誰もいなければ自分にもチャンスはある。
「……この前言った気がするけど、いない。少なくとも、今はだけどな」
「わかった……。おにいちゃん、気を付けてね? ……行ってらっしゃい!」
「おう、行ってくる!」
あかりに背中を押されて、夜はドアを開けた。そして、心の中であかりに感謝の言葉を贈った。あかりの声が、涙交じりだったからだ。
「あかりの気持ちは、わかってたはずなんだけどな……」
あかりの涙の理由を、夜が完全にわかることは出来ないだろう。本当に、恋とは難しいものである。
「俺には、まだわからないな。あいつらの気持ちは。なのに、振り回して……。ほんと、嫌になるよ。自分の最低さが……」
夜がぼそりと呟いた独り言。しかし、夜はこの時忘れていた。今、ポケットに入っているスマホには、あかりが取り付けた盗聴器が仕掛けられているということに……。
ナギ高の正門の前に付くと、玲奈が既に待っていた。夜の姿を見つけると、玲奈は申し訳なさそうに頭を下げた。
「ルナ先輩、ごめんなさい。私の所為でこんなことに……」
「気にすんな、って言いたいとこだけど、そうもいかないよな。だから、終わった後にしよう。謝罪するのも、感謝するのも、全部終わってから」
「はい、そうですね……。それでは、行きましょうか、ルナ先輩」
玲奈に連れられるがままに、夜は玲奈の家へと向かった。道中、二人が会話を交わすことはなかった。少し気まずいのだろう。一週間も休んだ上に、いきなり辞めると言い、その上夜から言ったことだが説得までしてくれるのだ。嬉しい半面、申し訳なさの方が大きいのだろう。
夜はそんな玲奈の気持ちがわかってしまうがために、かける言葉が見つからない。どんな言葉をかけたところで、今の玲奈の後悔がなくなることはないだろう。
そうして、決戦の場――玲奈の家へと着いた。これまた、豪勢な一軒家だった。アニメ嫌いと聞いていたのでもしかしたらお嬢様なのか? とか思っていた夜の予感が当たっていたようだ。二次元部の部員ってお嬢様多くないですかね?
「な、なぁ、レイ。レイの父親って何してる人なんだ?」
「外科医だったはずです……」
「マジですか……」
ナギ高の理事長の娘である梨花。問題を起こしたが権力者の娘である瑠璃。そして、新たに加わる医者の娘である玲奈。本当、どうしてお嬢様が多いのか。不思議だ。これで、夏希までお嬢様だったらどうしたものだろうか。まぁ、夏希の兄である柊也からはそう言った話を聞いたことは無いので違うと思うが。
五人中三人がお嬢様でいいのか、作者よ……。
「まぁ、相手が誰だろうとここまで来たんだ。最後までやってやるさ」
「ルナ先輩、それ死亡フラグな気がします……」
「言わないでくれ、俺もそんな気がするから」
軽口を言ってはいるが、流石に手の震えは隠せないようで、玲奈はバツが悪そうな表情をした。夜は、瑠璃と一緒に平藏を説得しに行ったあの日を思い出す。あの時も、瑠璃の手は震えていた。
「はぁ、ほんとに、何やってんだよ。ネタ同じじゃねぇか……」
悪態を吐きながらも、夜は玲奈の手を取った。また、あかりに怒られそうだが、そんなことは気にしていられない。
「る、ルナ先輩……!?」
「大丈夫だ。大丈夫だから」
玲奈はその夜の言葉に、心が軽くなった気がした。そして、手を握られていることに、嬉し恥ずかしで頬を赤らめる。しかし、どうして嬉しいのかはわからない。
「それじゃあ、行くぞ、レイ!」
「はい! ルナ先輩!」
二人は手を繋いだまま、家の中へと入って行った。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、私はいかなる批判も受けます。さぁ、こい!
……本当にすみませんでした。まさか、こうなるとは俺も思ってなかったんです。
というか、まず三章のあの展開が本来はなかったはずなんです。どうしてああなった……。
だが、後悔はない! けど、申し訳ないです!
まぁ、言い訳がましいのは嫌いなのでこの辺で。
次回からはいよいよSEKKYOUタイムです。きっと、そうです。はい。
それと、執筆意欲はあるのに、書けなくなりました。遂にネタが切れたのです……。
その上、ここ最近、PV数の伸びがえげつなくて……、四カ月ぶりの一日で1,000PVなんて達成するものですから、これまたプレッシャーが……。
いい作品を書かないと、読者が離れてく、って……。
というわけで、これからも展ラブを宜しくお願いします。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。
次回の投稿は……、遅れそうです……。




