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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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夜の本音

 玲奈とお化け屋敷を抜け出した後、二人は近くのベンチに座ってしばしの休憩を取っていた。お化け屋敷から近い距離にある為、悲鳴とかが聞こえる。あかり達はまだ出てきていないが、今聞こえた悲鳴がお化け達のだとなんとなく察していた。少し申し訳ない気がするが……。


「はぁ、あかり達が何やってるか想像できるんだけど……」

「はい、私もわかります……」


 きっと今頃、お化け達はあかり達のヤンデレぶりに畏怖を抱いていることだろう。そして、ある意味で夜に畏敬の念を抱いていたりもするだろう。正直、あまり嬉しくない。ハーレムを築いていることに尊敬されても、築いた覚えがないのだ。というか、築くつもりもない。


「さて、あかり達が来るまで何してようか。こんな広い場所で別行動とっても後で面倒になるだけだしな……。あと十分くらい待ってあかり達が来なかったら玲奈の行きたい場所に……」

「行きたい場所になぁに? おにいちゃん」

「……ず、随分とお早い到着じゃあないですか、皆様方……」

「うん、ナイトが逃げ出さなかったらもっと早かったのにね」

「まったく、急にいなくなるんだから」

「ほんと、心配させないで欲しいな、夜クン」


 あはは、えへへと笑う四人。傍から見れば可愛らしく微笑む五人の女の子に囲まれる一人の男。なんと羨ましい、妬ましい。あの男死ね! と思うことだろう。


 しかし、夜は別だ。だって、近くで微笑んでいるからこそわかるのだ。目がまったく笑ってないことに。瞳が単色である。ハイライトは一体どこに逃走したというのか。早く帰ってきてぇ! お願いだから帰ってきてぇ!


「ねぇ、おにいちゃん」

「ねぇ、ナイト」

「ねぇ、夜」

「ねぇ、夜クン」

「「「「どっちがいいの?」」」」


 どうやら、まだ諦めていなかったらしい。好きな人のことは全て知りたいのだろう。だが、あかりの〝おにいちゃんノート〟には書かれていないのだろうか。書かれていたらそれはそれで恐怖だが。


「いや、どっちって言われてもなぁ……」

「「「「どうなの?」」」」


 四人の女の子に詰め寄られる夜。傍から見ることしか出来ない彼女のいない男達は鷹のように鋭い眼差しで夜を睨みつけている。「あの野郎、あんな美少女侍らせやがって、しかもこんな場所でキスだと!? なんと羨ま……けしからん! あいつ死ね!」とでも思っているのかもしれないが、夜からしてみれば場所変わってあげようか? というか、お願いだから変わって!


「「「「ねぇ、どうなの!?」」」」

「いや、だからこんな所で言えるようなことじゃねぇだろ!? お前等は何言わせようとしてんだよ!」

「「「「どっちが好きなのか」」」」


 この四人は羞恥心とか場所とか関係ないようだ。少しは気にして欲しい気もするが、今のあかり達には何を言っても無駄なのである。


 その後、夜があかり達にどっちの方が好きか吐かされたのは言うまでもないことだろう。夜が好きなのはどちらなのかはご想像にお任せするが、あかりが何処となく嬉しそうだったとだけ言っておこう。




 大きい方か、小さい方かを吐かされた後、夜は一人ベンチに座り黄昏ていた。因みに、あかり達は嬉しそうに何処かへと旅立っていった。きっと、何かのアトラクションに乗りに行ったのだろう。


「はぁ、結局吐いてるし俺弱すぎだろ……」


 あまりの自分の弱さに夜は落ち込んでいた。あかり達が物凄い剣幕だったとはいえ、流石にあれはカッコ悪いではないか。男としてあれは恥ずかしいのだ。


「……まぁ、今に始まったことじゃないか」


 夜さん、立ち直った。もう何度も何度もあかり達には洗い浚い吐かされているのだ。今に始まったことではないのだ! 開き直ったのではない、諦めたのだ……。


「大丈夫ですか? ルナ先輩」

「あぁ、大丈夫、かな? というか、玲奈はあかり達と一緒に行かなかったのか?」

「はい、まだそこまで親しくないですし、あの雰囲気の中には入って行きにくくて……」

「まぁ、確かにな……」


 まだ二次元部に入部したばかりの玲奈があの四人の中に入って行くのは難しいだろう。あの無機質な瞳で詰め寄る姿を見れば尚更だろう。お化けが怖がるほどの恐怖なのだ。あの輪の中に入って行くのはまだ難しい。


「そうだ、ルナ先輩。聞きたいことがあるんです」

「ん? 聞きたいこと?」


 鸚鵡返しで聞き返す夜に玲奈はこくりと頷く。


「はい。ルナ先輩はあかりさん達に好きって言われてますよね?」

「随分といきなりだな……。まぁ、言われてるけど」

「ならどうして付き合わないんですか?」


 玲奈がずっと疑問に思っていたこと。それは、好きだと言われ続けているのにどうして付き合わないのか。誰か一人と付き合えばもう言われなくて済むというのに。


「どうして、か。確かにあいつらの内誰か一人と付き合えば好きって言われないようにはなるな。でも、俺は友達としては好きだけど、異性として好きなのかってのはわからないんだ。付き合った後に好きになればいいって奴もいるだろうけどさ、本気で好きって想ってくれているのにその気持ちを無碍にするような真似は出来ない。結果、あいつらが傷つくとしても、半端な気持ちで付き合うことは出来ない」

「相手が美少女でも、ですか?」

「相手が誰だろうとも付き合えない。というか、俺にはもったいない奴等なんだよ。その気になればいい寄ってくる男はたくさんいるのに」

「それほど愛されてるってことじゃないですか?」

「あぁ、ほんとにな。普通なら俺は何度も殺されてんだよ。あかり達にな」


 あかり達のヤンデレ具合なら確かに夜を殺すこともあったかもしれない。好きな人を手に入れるためには手段を問わない、そういうヤンデレな娘もいるのだ。なのに、あかり達はそうはしなかった。ヤンデレじゃなくヤンヤンなのに! ヤンヤンなのに!


 あかり達が他を殺して夜と無理やり二人きりになろうとしなかったのは、夜の幸せを願っていたからだ。夜の隣には自分がいたい。でも、何よりも、誰よりも夜の幸せを願っているのだ。


「だから、あいつらには申し訳ないよ。俺のことを想っての行動なのに礼の一つもしてやれない。本当に申し訳ないし、ありがたい。だからこそ、今の関係を俺の一言で壊したくないんだ。いつか俺が誰かと一緒になる日が来たとしても、それは今じゃねぇんだ。質問の返しはこれでいいか?」

「はい。ルナ先輩の考えがよくわかった気がします。噂を聞いた時はなんてクソ野郎だと思いました」

「結構な評価ですこと……。だから、最初に話しかけた時怯えられてたのか。少しショックなんだけど……」

「うっ、それはすみませんでした……。でも、ルナ先輩の本音を聞いて、どんなに優しい人なのか改めて実感しました。やっぱり噂は当てになりませんね……」

「まぁ、噂は所詮噂だからな。それに踊らされて自棄になる奴等もいるみたいだけど……」


 美少女五人も侍らせやがって! と学校中の男子からの視線が痛いのだ。夜に侍らせているつもりもなければ、する予定もない。なのに、恨み妬み嫉みを抱くのは噂に踊らされている証拠である。噂は時に人の人生を左右するのだ。いい意味でも、悪い意味でも……。


「ルナ先輩は、ほんとに優しいです。こんな私にも……」


 玲奈は胸の奥が少し締め付けられたように感じた。今まで感じたことのない感情、痛み。夜といると、安らぎを感じるとともに何故か鼓動が高鳴る。一体、この胸の痛みは何なのか。玲奈がそれを知るのは、もう少し先のお話……。

ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたのなら幸いです。

アニメを見ながら小説を書く毎日。夏休みの宿題? そんなの知らんなw そうして、最終日に「やばい!」と言いながらやるんだろうなぁ。そんなテンプレは嫌だなぁw

最近はなろうの大先輩である御身の方の作品である〝オーバー〇ード〟を見まくってます。本当に面白い。あの方の頭ン中はどうなってるんでしょうか。ある意味で化け物ですよ。ほんと尊敬します。

夜の本音を書けて、個人的にはスッキリしました。ヤンデレなのにどうしてあかりは夏希達が夜の傍にいることを許容しているのかが書けて、皆様の違和感が払拭できたなら今回の話の意味はあったのではないでしょうか。あかり、優しいね。でも、夜が幸せならわたしは……っていう考えは不幸を呼ぶだけなんだけどな……。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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