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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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詩和翔太一周年記念番外Ⅲ SaM

今回の番外編は、〝展ラブ〟と〝死姫〟のコラボです。

読んでいない方に興味を少しでも持っていただけたらなぁ、という詩和の考え(宣伝)です。

本編にはまったく関係ないのでご注意を。

 そうして、歓迎会が始まった。


「さて、改めて自己紹介をしてこうか。俺は夜月夜だ」

「わたしはおにいちゃんの妹の夜月あかりです。よろしくお願いします」

「へぇ、夜君に妹さんなんていたんだ。優しそうで可愛い妹なんて羨ましいよ」

「あ、そう? じゃあやるよ。寧ろ貰ってくれ今すぐ」

「いや、それはマズいんじゃ……」

「おにいちゃん、魈さん、なんか言った?」

「「いいえ、滅相もございません」」


 出会ってまだ間もないというのになんというシンクロ率か。それほど無機質な瞳で見つめられるのは怖かったらしい。魈はあかりには逆らわないようにしようと心の中で誓った。何故か、綾があかりに対して対抗心を出だしていたように感じたが気のせいだろう。


(あれ? 俺夜月さんに名前教えたっけ?)


 どうして、あかりは自分の名前を知っているのだろう? と考え、魈はすぐにやめた。開けてはならぬパンドラの箱のように思えたからだ。きっと、知らない方が自分のためだ。


「僕は朝木夏樹(あさぎなつき)。よろしく!」

「私は星城瑠璃(せいじょうるり)だよ、よろしくね?」

「わ、私は小早川玲奈(こばやかわれいな)です。よろしくお願いします」

「私が最後ね。と言っても必要ないかもしれないけど。柳梨花(やなぎりか)よ」

「えっと、今日転校してきました如月魈です。その、短い時間ですがよろしくお願いします!」

「同じく転校してきました光崎綾です。よろしくお願いします」


 自己紹介が終わり、ジュースやお菓子を出してのパーティーとなった。こんなに歓迎してもらっていいのだろうかと不安になってくる。


「あの、夜君。ここまで歓迎してくれなくても……」

「ん? 気にすんなよ。ある意味レイの歓迎会も兼ねてるんだ。忙しくてできなかったからさ」

「え、てことは小早川さんも最近入部したの?」

「まぁ、そうだな。二週間くらいしか経ってないけどあの馴染みようだ。魈もすぐに馴染めるさ」


 夜の視線の先では梨花と一緒に楽しそうに話している玲奈の姿があった。聞けば、あかり、夏希、玲奈は一年生、夜と梨花が二年生、瑠璃が三年生だという。これだけ学年がバラバラなのに学年とか関係なく仲がいいのは二次元部があってこそなのかもしれない。


 それに、オタクだからと言ってバカにしてくる輩はいなかった。クラスメイトがムカついていたのも綾がいたからだ。前の学校でも綾がいたからだが、オタクということでも馬鹿にされてきた。それを考えると、ナギ高はいい場所なのかもしれない。いや、いい場所だ。


 魈が夜に誘ってくれたことに感謝の言葉を贈ろうとした時、


「ねぇ、ナイト。ゲームしよ?」

「今魈と話してるんだが……」

「いや、いいよ。それで、なんのゲームをするの?」

「えっと、SaMだよ?」


 SaM。正式名称Sword and Magic。今スマホで配信されているゲームの中でも屈指の人気を誇るMMORPGだ。プレイヤーが自分でアバターを作り出し剣などの武器と魔法を駆使して戦うゲーム。SaMはランキングがあり、強いプレイヤーはランキングに載り全プレイヤーから尊敬されるという。


「へぇ、SaMか。俺も一緒にやっていい?」

「そうだな、夏希以外とやるのは初めてだけど面白そうだな!」

「えへへ、僕達ALICE in Wonder NIGHTだからね!」

「……それって本当?」


 夜と夏希の二つ名に魈は反応を示した。それは、SaMをやる人なら必ずと言っていいほど知っている名、否、知らない人などいないだろう。それが、ALICE in Wonder NIGHT。黒髪で片目を隠しており、黒と赤のオッドアイで騎士なのに黒コートに身を包んだNIGHT。金髪のロングヘアの上に赤色の大きなリボン、白と水色を基調としたドレスに身を包んだ名前とともにアリスのような見た目のALICEの二人組。最強と恐れられているプレイヤーだ。


「じゃあ、協力じゃなくて対戦をお願いしてもいいかな?」

「おい、魈。俺達の名前を知って言ってるのか?」

「魈先輩、死にたいのかな?」


 二人とも、魈を下に見ているのか、それともテンションがハイになってるのか、少しキャラが崩壊しかけていた。見るからに魔王な二人と挑戦しようとしている勇者な魈。勇者がお似合いな奴は魈じゃなくて綾の幼馴染だというのに。


「いや、倒す気でいるよ。有名な二人だったら知らないかもだけど、俺もかなり有名なんだよ? 黒影の死神(ネロハイズ・リーパー)って聞いたことない?」

「あぁ、あの対人戦で負けたことのないプレイヤーだろ? 俺達が集団戦最強ならそいつは個人戦最凶って……」

「あ、聞いたことある。黒いフードで紅い大鎌を持っているプレイヤーでしょ? 気付いたら後ろにいて瞬時に首が斬り落とされるっているチートプレイヤーだよね?」

「うん。それ俺なんだ」

「「は?」」


 魈は嘘じゃないと証明するためにSaMのホーム画面を見せた。そこには自分のアバターがいるのだ。魈のホーム画面には、黒のフード付きのコートを着ており、背中にアバターよりも一回りくらい大きい鎌があった。色は、元からその色なのか、それとも人の首を斬り落とした時の返り血なのか紅色だった。プレイヤーネームはZEROというらしい。死神=死を司る神。死=ゼロからとったらしい。と言うのは後から考えた設定で苦し紛れに零ってかっこいいよね? ということでZEROになったとのことだ。


「いや、でも本物って保証がないだろ?」

「それは夜君達もそうなんじゃない?」


 夜の言い分も正しければ、魈の言い分も筋が通っている。もしかしたら、憧れただけでその姿を真似ているという可能性も少なからずあるのだ。つまるところ、お互いが本物かどうかがわからないのである。しかし、一つだけわかる方法がある。


「戦ってみればわかる、か」

「うん、そうだね。てことで、対戦をお願いしてもいいかな? 一度、ALICE NIGHTと戦いたかったんだ」

「僕も、僕達とは違う最強と戦ってみたかったんだ! ナイト、勿論戦うよね!」


 断るか、否か。そんなもの、夏希の嬉しそうな顔を見る前に決まっている。


「その申し込み、受けさせてもらう。個人戦と団体戦最強。どっちが本物の最強か決めようぜ」

「僕達が本物の最強なんだから!」

「いいや、俺が最強だよ。君たちの首には、既に死神の鎌が添えられているってことを証明してあげるよ」


 フフフフ……、と不気味な笑いを浮かべている三人。魈なんかキャラが変わってしまっている。一体何をしているのかわからない他の五人は首を傾げる。しかし、おかしな感想を呟いている人物が二人……。


「おにいちゃん、カッコいい……」

「如月君、カッコいい……」


 あかりと綾の二人である。あの不気味な笑みのどこがカッコいいのだろうかと思うだろうが、この二人にとってはどんな夜、魈でもカッコいいのだ。まぁ、首を傾げているだけであって他の三人もカッコいいとは少なからず思っているだろうが。二次元部に、正常な人はいないらしい。


 そうして、(NIGHT)夏希(ALICE)のALICE in Wonder NIGHTと、(ZERO)の黒影の死神。二つの最強が相まみえることとなった。


「魈、手加減はなしだからな。最初から本気で行かせてもらう!」


 夜は、否、NIGHTは二本の剣を握った。本気で相手をするときだけ使う戦法だ。どうやら、本当に最初から全力で行くらしい。


「僕も全力で行くからね!」


 ALICEは右に杖を、左に短剣を握った。本来、NIGHTが前衛でALICEが後衛なのだが、二人が全力の時はALICEも前線に加わるのだ。魔法を唱えながら暗殺者の如く背後から敵の首を斬り落とす。ある意味で死神である。死神の名が相応しいのはもしかしたらALICEの方かもしれない。


「そう来なくっちゃ面白くないよね!」


 テンションがハイになっているのかキャラが変わっている魈改めZEROは大鎌を構えた。刀身を染めるは敵の返り血。これが最強に上り詰めた証であり、ZEROの相棒である。


 ZEROはNIGHTが振るった二刀をいなしては躱し、消えては斬撃を飛ばす。それをNIGHTは斬撃で応戦する。斬撃と斬撃がぶつかり合い、同時に霧散した。威力は互角らしい。


 そして、ALICEもZEROの首をかっさらうべく背後から短刀を振るっていた。しかし、そこにはもうZEROの姿はない。ZEROの姿はALICEの後ろにあったのだ。


 ZEROが大鎌を振るうのとALICEが躱すのは同時だった。大鎌はALICEの右腕を切り落としHPを削る。


 因みに、SaMは部位破壊というものが存在しており、身体をバラバラにすることも出来る。一定時間が経過したり、戦闘が終われば回復はするが回復する時間がないこの戦闘では致命的となる。


「ナイト、ごめん! 右腕やられちゃった!」

「気にすんな! アリスは魔法で援護頼む!」

「いいなぁ、チームプレイ。ソロプレイヤーだから羨ましいよ!」


 その後、白熱した戦いは一時間は続き、剣と鎌が拮抗しては魔法の弾丸が飛び交い、躱しては飛んだりともはやゲームの域を超えている戦闘は引き分けという形で終わった。お互いのHPが同時に零になったのだ。つまるところ、引き分けである。


「あぁ、引き分けか。くそ、いけそうだったのにな……」

「うん、負けたことは無かったけど引き分けも初めてだなぁ……。ゼロ先輩強すぎだよ……」

「いつの間にかゼロ先輩になってるや……。でも、惜しかったなぁ、勝てると思ったんだけどなぁ」

「まさか、二人で相手してるのに引き分けになるとは思ってもなかった。魈の方が強いんじゃないのか?」

「いやいや、俺は姑息な手段を使ってるから引き分けになったんだよ。強いのはそっちだって……」


 SaMをやっていない他の部員からしてみればもうどっちも強いでいいんじゃないのか? と思うだろうが、三人が納得するはずもない。たかがゲームに何熱くなってるの? とか思う奴もいるだろうが、この三人にとってゲームはたかがではないのだ。


「あれ? ナイト、ゼロ先輩。さっきの戦いのリプレイがネットに上げられてるんだけど……」


 夏希が夜と魈に見せた画面には確かに、“SaM最強の三人の白熱の戦い!”というタイトルで動画が投稿されていた。コメント欄はチートだとか廃人だとか好き勝手な事書かれている。


「チート、そして廃人、ね」

「次元が違うからってPSをチートで片付けられたくないかな?」

「じゃあ、ナイト、ゼロ先輩。こういうのは面白くない?」

「「ん?」」


 そうして、三人はこそこそと話し始めた。なんかあかりと綾が羨ましそうな視線を夏希に向けている。


「それ面白そうだね」

「あぁ、いいかもな。楽しそうだ」

「うん、じゃあさっそく……」


 夏希は動画のコメント欄に“ALICE in Wonder NIGHTと黒影の死神でSaM全プレイヤーの相手してやる! 腕に自信のある奴はかかってきやがれ!”と書いた。


 そう、夏希の考えた面白いこととは、夜と夏希、魈でSaMの全プレイヤーを相手することだ。これで、敵わないと思っていた奴も数の暴力という武器を前にやる気を出してくれる。そうすれば、敵の数はおのずと増えていく。しかし、相手をするのは最強の三人だ。


 弱いプレイヤーがいくら束になってかかって来ようとも、夜達にとってはあまり大差ないのだ。だが、面白いことに変わりはない。だからこその、宣戦布告である。


「「「さぁ、ゲームをはじめよう!」」」


 三人は一度は言ってみたかったセリフを言えて満足なのか、楽しそうにスマホを操作し始めた。


 その後、三人はずっとSaMしかやらず、部活動時間が終わった後も居残り、三人が全プレイヤーを倒したのはそれから数時間後のことだったという。その後、三人の名が伝説として語り継がれるようになるのは、また別のお話。


「あぁ、終わったぁ!」

「ナイト、ゼロ先輩、一回死んでごめんね?」

「気にしないでよ、夏希ちゃん。俺も二回死んじゃってるし」

「でも、楽しかったな」

「うん!」

「そうだね」


 三人は帰る準備をするべく、立ち上がり振り向いた。そこには、


「あ、おにいちゃん」「あ、如月君」

「「やっと終わった?」」


 ニコニコとしているあかりと綾の姿があった。どうしてだろうか、瞳からはハイライトが消えている。どうやら終わるまでずっと待っていたらしい。何かのいたずらか顔の部分にだけ光がさしている。軽くを通り越して普通にホラーである。


「「「ギャァァァァァァ!」」」


 三人の叫び声は校舎中に響き辺り、見回りの先生がその声に腰を抜かしたのもまた別のお話。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたら幸いです。

途中からラブコメはどこ行ったという展開になりましたが、詩和個人としては楽しかったです。死姫の戦闘描写の練習になった(なったとは言ってない)ので。

まさかの番外編で夜と夏希がやっていたゲームの名前を書くことになるとは思ってもいませんでしたw もうSA〇とかでいいんじゃね? とか思ったんですけど流石にそれはマズいですし……。

それと、ショウのゲームの名前は適当です。苦し紛れの0ですw 見苦しいぞ俺……。

まぁ、そんなこんなで滅茶苦茶やった番外編Ⅲでしたが、楽しんでいただけたなら本当に幸いですw

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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