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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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詩和翔太一周年記念番外Ⅰ 転校生

今回の番外編は、〝展ラブ〟と〝死姫〟のコラボです。

読んでいない方に興味を少しでも持っていただけたらなぁ、という詩和の考え(宣伝)です。

本編にはまったく関係ないのでご注意を。

 六月二十日。


「なぁなぁ、聞いたか。今日転校生が来るらしいぜ」

「あぁ、知ってる。しかも、男と女だってよ!」

「男子の方はカッコいいって噂らしいよ」

「女子の方も可愛いって聞いたわ」


 夜のクラス、二年C組では朝からこの話で持ち切りだった。何と、このクラスに転校生が来るらしい。性別は確定ではないが男と女の二人だと言われている。どうやら、ナギ高とは違う制服を着た男と女が歩いていたらしい。しかも、その二人を案内していたのがC組の担任だったのだ。転校生が来る、と言われたら、もしかして、その二人なのかな? とそう思うだろう。


「へぇ、転校生か」

「ん? 夜は楽しみじゃないの?」

「いや、楽しみだよ? でも、この時期に転校って、なんかあると思わないか?」


 そう、普通転校と言えば学期の始まりだ。なのに、六月二十日という中途半端な今日に転校。確かに、少し怪しいかもしれない。考えすぎのような気もするが。


「さぁ、みんな席に着け~。転校生を紹介するぞ~」


 教室のドアから担任教師が入ってきた。続いて、二人の男女が入ってきた。どうやら、噂は当たりだったらしい。


 一人は黒髪の男。表情は緊張しているのか強張っている。身長は夜より少し低いか、変わらないくらいといったところだろうか。しかし、女子が噂していたようなイケメンではなかった。言うなれば普通である。


 もう一人は、茶髪の女性。優し気で思いやりのありそうな女の子だ。まるでどこぞのメインヒロインのような容姿である。なんか、ちらちらと隣にいる男子生徒を見ているような気がするが、気のせいだろう。気のせいったら気のせいなのだ。


「それじゃあ、自己紹介を始めてくれ」

「如月魈きさらぎしょうです。まぁ、よろしくお願いします」

「……え、如月君、それだけ?」

「……それだけだけど」

「もう、ちゃんと自己紹介しなきゃ! 私は光崎綾こうさきあやです。こっちは如月君。趣味はアニメ鑑賞、ゲームプレイ、ラノベを読む、マンガを読むだよ。私は、そうだなぁ……、如月君と話してる時が楽しいかな。よろしくね?」


 次の瞬間。


「「「「「何でだぁぁぁぁ!」」」」」


 男たちの悲痛な叫びが木霊した。転校生が美少女だったことに、少し浮ついた気持ちを抱いた男子生徒。だが、当の本人は好きな人がいるという。しかも、パッとしないやつ。だから、どうしてもう相手が決まってるんだよ! と。どうして二人一緒に来たんだよ! と。どうしてそんな奴を! と。まぁ、言いたいことはわかる。だって、美少女と普通の男だ。叫びたい気持ちはわかる。でもそこは、まぁラノベだから仕方ないよね?


「いや、光崎さん!? 何誤解与えてるの、まったく違うからね? 俺と光崎さんは何もないからね?」

「嘘つけこの野郎! 何もないはずがねぇだろ!」

「そうだそうだ! わざわざ言うくらい好意を向けられてるんだろ! このクソ野郎!」

「如月君、クラスの人たちみんな元気だね」

「いや、君の所為だから! 転校初日からどうしてこんなことになってるんだよぉ!」


 なんか嬉しそうに魈を見ている綾、男子達に囲まれて滅茶苦茶されている魈、二人の関係をどう思ったのか黄色い声を上げる女子達。


 それを見て、夜と梨花は……。


「「何この渾沌カオス……」」


 まったく同じ感想を呟くのだった。




 朝の騒動が終わり、魈は自席に座って項垂れていた。隣には綾が座っている。


「あぁ、疲れたぁ……」

「お疲れ様、如月君♪」

「本はと言えば君の所為なんだけどね、自覚はないんだね……」


 魈は綾を睨みつける。一体、誰の所為でこうなったというのか。しかし、当の本人は自分の所為だという自覚はないようだ。益々質が悪い。


 魈は綾にバレないようにため息を吐いた。私といるとつまらないのかな? と思われても別にいいのだが、その後の質問攻めが面倒なのだ。どこを直せばいいかな? と言われても魈は知らないとしか言えないのである。まず、他のクラスメイトの視線が痛い。どうしてここでも……、と魈はもう一度ため息を吐く。


「でも、如月君。他の人と関わりに行かないとダメだよ? 少しの間とはいえここでお世話になるんだから」

「俺はあまり人と関わりたくないんだけど……」

「もう、そんなこと言わないでさ、私と一緒にいこ?」

「ごめんね、お断りするよ。光崎さん一人で行って来たらどうかな、俺はもう疲れたから……」

「そんなこといわずに行こ?」


 お気づきであろうか。魈は綾と何の関係もないと言っていたのだ。確かに、それはれっきとした事実ではある。だが、そんなことを知らないクラスメイトが傍からこの光景を見れば、こう思うに違いない。


――イチャイチャしてんじゃねぇよ! このリア充が! と。


 勿論、魈には関係のない話であるし、はた迷惑な話である。言ってしまえば被害者なのだ。どうやら、転校する前の学校とナギ高での魈の立場はあまり変わらないらしい。まだ、色々と言ってくる輩がいないだけマシかもしれない。まぁ、視線が痛いのに変わりはないのだが。


 魈と綾が友達作りをするか否かという話をしている時、夜はと言うと……。


「梨花、俺如月を二次元部に誘いたい」

「いきなりね……、まだ転校して来たばっかだけど、理由を聞いてもいい?」

「あぁ、二次元部には俺以外の男がいないだろ?」

「まぁ、そうね」

「だから、如月がいれば男が二人になるんじゃないかって。だって、二次元部って俺のハーレムを作るためだけの部活とか言われてんだぞ?」


 今の二次元部は男一人の女五人というハーレム状態にあるのだ。それに加えて、あかり達女の子は全員(玲奈を除いて)夜に好意を向けている。しかも、揃いも揃って美少女。その所為か、何故か、ハーレムだ! マジでふざけるな! という噂が広まっているのだ。


 最近、今まで届かなかった入部届が何枚か出されたことがあったのだが、入部希望者は二次元に興味などなく、ただあかり達とお近づきになりたいという魂胆が見え見えだったので、夜が入部は認められないと直接言ったのだが、それがまたハーレム疑惑を加速させてしまったのかもしれない。夜にそんなつもりはないのだが、人間は思い込みが激しいのだ。しかも、みんな言っているから、という謎の力も働いている。噂とは恐ろしいものなのだ。必殺技である“みんな”も怖いのだ。


「それで、如月君を二次元部に誘おうというわけなの?」

「まぁ、そういうことになるな。まぁ、あいつは何か他人と関わりたくないようだけど」


 夜は、未だに口論という名のイチャイチャを見せつけている(魈にそんな気はさらさらない) 魈と綾の方を見た。梨花も釣られてそちらの方を見やる。


「なんか光崎さんとは滅茶苦茶関わってんな、一方的にだけど」

「うん、少しあかりちゃんに似てる気がする……」


 どこがとは言うまい。好きな人のことで一杯になると周りの人が見えなくなるところとかなんて言うまい……。


 とりあえず、早めに誰か魈に話しかけないとこのままでは体育館倉庫裏に連行されてしまうかもしれない。転校初日だからそれはないとは思いたいが、このクラスの男連中はやりかねない。ソースは夜自身である。


 夜は魈を二次元部に誘うべく、絶賛お取込み中の魈へと歩みを進めた。


「ちょっといいか?」

「ん? 俺に何か用ですか?」

「あぁ、二次元部に入らないか?」

「部活の勧誘なら断らせ……、今何て言いました? 二次元とか聞こえたんですけど」

「あぁ、二次元部な。光崎さんの話によるとオタクらしいから入ってくれるんじゃないかと思って誘ってみたんだ。あ、別にオタクがあれだとは言う気はない。どうだ? 入ってみないか?」


 魈は思考を巡らせる。この高校――ナギ高にいるのはわずかな時間だけ。しかし、その間ただ普通に学校を過ごすのはつまらない、否、純粋に嫌だ。学校にいる間、きっと綾が無理にでも関わりに来るだろう。そして、周りの反応など知らない綾だ。また爆弾を落とす可能性だってある。いや、絶対に落とす。別に、クラスで浮いてもいいが、楽しいことが一つもないというのは割に合わない。


 しかし、二次元部という部活は名前の通り二次元に関係した部活なのだろう。別に積極的に人と関わりたくはない。だが、同じ趣味を持つ者同士というのなら話は別だ。きっと、綾悪魔から逃れられる楽園になるだろう。


「先に言っておきますけど、俺は一週間しかこの学校にいません。それでも、入部してもいいんですか?」

「あぁ、構わない。むしろ来てくれ。じゃなきゃ俺がきついんだ……」

「二次元部って何してるんですか……」


 魈は心配になった。一体何がどうなればきつい状況になるというのか……。先行きが不安になってきた。


「そうだ、名前言ってなかったな。夜月夜だ。気軽に夜とでも呼んでくれ」

「俺は魈です。魈と呼んでください」

「それで、入部の件は考えてくれたか?」

「うん、入部させてもらうよ。短い期間だけどよろしくね?」

「あぁ、よろしく」


 夜と魈は握手を交わした。それをにこにこと見る綾とよかったわねと微笑む梨花。


「じゃあ、私も入部していいかな?」

「……え? 光崎さん、今なんて言ったの?」

「二次元部に入部したいって言ったんだよ? 夜月君、どうかな?」

「いや、別に構わないけど……」

「じゃあ、決まりね。一緒に頑張ろうね、如月君♪」


 何故か綾も入部することになってしまった。これでは、魈の一人(他の部員のことは考えていない)の時間がなくなってしまう。


 だが、綾の喜びようを見れば今更ダメなんて言える訳もなく……。


「夜君、俺部活辞めていいかな?」

「一緒に苦労してこうぜ、な……?」


 夜と魈はともに遠くを見つめた。あぁ、空が綺麗だなぁ……。二人が今それぞれ考えている女の子は、言わずもがなだろう……。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたなら幸いです。

え? 昨日死姫で今週の投稿は難しいって言っていたって? ふ、それは嘘だ。

いや、確かに難しいですよ? だってテストがあるんですから。

だがしかし! 俺は勉強よりも小説なんじゃあ! というわけでね? 投稿はするよ?

それと、一話で終わるとも言っていない! つまり! 次話の投稿も早いということ!

あぁ、明日は詩和番外はしないです。理由は、お察しの方はわかるかと。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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