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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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感じることの出来た〝幸せ〟

 夜と玲奈は二次元部の部室へと来ていた。部室には、既に梨花と瑠璃がいて、夜と玲奈が来た三分後にあかりと夏希も来た。その目はどうして先に行ったの? と雄弁に語っていたが夜はスルーした。当然、不機嫌になるあかりと夏希。


「それじゃあ、全員揃ったし自己紹介をしようか。レイ、俺はした方がいいか?」

「いいえ、ルナ先輩に自己紹介はしてもらったので大丈夫です」


 二人の呼び方に、いち早く反応したのは夏希だった。


「ねぇ、ナイト。その〝ルナ〟ってなに?」

「えっと、俺の名前って夜月 夜だろう? それで月夜のことをルナって言うだろう? そこかららしい」

「そんなことは聞いてない。何で、僕以外の人に偽名で呼ばれてるのって言ってるの!」


 夏希が怒る理由、それは夜が自分以外に中二病的な名前で呼ばれていることに不満だったらしい。そういった名前は自分たちの特権だと思っていたのに、つい昨日知り合った人と中二的な名前で呼び合っているのが堪らなく悔しかったのだ。


「夏希の言いたいことはわかるけど、〝ナイト〟とは呼ばれてないんだからいいだろうよ……」

「それでも、なんか嫌なの」

「……あのなぁ、言っておくが〝ナイト〟って呼ばれるのを許すのは〝アリス〟だけだからな? 他の人には呼ばれたくない。アリスだからいいんだ。この意味わかるか?」


 夜の真剣な眼差しに、夏希は頬を赤らめてこくんと頷いた。ナイトはお前だけの物だと言われたのだ。好きな人にそんなことを言ってもらえたのだ、嬉しいに決まっている。少しどころかかなり違う意味で捉えているが、間違ってもいないので夜は訂正しない。これまでも、これからも、〝ナイト〟と呼ばせていいのは〝アリス〟である夏希だけなのだ。


「さて、話を戻そうか。私は二次元部の部長の星城 瑠璃だよ。因みに、夜クンの恋人だ」

「え、そうなんですか!?」


 瑠璃の恋人発言に玲奈は目を丸くし夜を見やった。そして、再び瑠璃に視線を戻し、夜に視線を向ける。その表情は信じられないと言っていた。夜は苦笑いを浮かべながら「元な」とだけ言っておいた。早く話を変えなければとある妹ちゃんはヤンヤンしてしまう。


「私は柳 梨花よ。よろしくね?」

「は、はい。よろしくお願いします、梨花先輩」

「僕はナイトの盟友のアリスだよ。よろしく」

「えっと、お願いします。夏希さん」

「わたしはおにいちゃんが愛する妹であるあかりです。おにいちゃんは渡しませんから!」

「お前は少し自重しろ。で、俺が夜だ。部員の紹介はもういいだろ。じゃあ、レイ」

「は、はい。えっと、小早川 玲奈です。二次元部に入りたくて今日は見学に来ました。お願いします!」


 玲奈はぺこりと頭を下げた。


「さてと、瑠璃。今日は何をするんだ?」

「そうだねぇ、もう自由でいいよ」

「毎日自由な気がするけど、まぁいいか。それじゃあレイ、こっち来てくれ」

「は、はい!」


 玲奈は夜に手招きされ夜の座る席の向かい側に座らされた。ごく自然な流れで夜の隣を座ったあかりさん。勿論、夜に追い出される。あかりはその場に崩れ落ちた。おにいちゃんの態度が冷たい! と。


 そんなこんなで、二次元部の活動は始まった。と言っても、あかりは遠くから夜のことをじっと見つめているし、夏希もスマホでゲームをしているし、梨花と瑠璃はゲームで対戦している。もはや、部活動と言っていいのかと思われても仕方が無い、否、思われる光景だった。


「ルナ先輩、二次元部っていつもこうなんですか?」

「そうだな、これが普通だよ。真面目に活動してると思ってた? 幻滅させたか?」

「いえ、みんな真剣に取り組んでいたらどうしようと思ってました。私のはただの趣味なので」

「ここにいるみんなも趣味だぞ? 例外はあるけど」


 あかりとか、あかりとか、あかりとかという例外があるのだ。一概に、そうだとは言い切れないのである。


 玲奈は「よかったです……」と胸を撫で下ろした。傍から見れば見えなかっただろうが、玲奈は相当緊張していたようだ。変に思われてないかな? 別に変じゃないよね? と頭の中は不安で一杯だったはずである。誰だって最初はそうなのだから。


「ルナ先輩、昨日言った話覚えてますか?」

「確か、ラノベを書くのか? だっけ?」

「はい。それで、私の書いた小説を読んで欲しいんです」


 そう言って、玲奈は自分の鞄から数えきれないほどの紙を取り出した。夜はそれを受け取る。


「多いな。ずっと書き溜めてきたのか?」

「はい、読んでくれますか?」

「うん、読ませてもらう」


 夜は玲奈の書いた小説に目を通した。紙の枚数は、百は超えているだろう。だが、流し読みは決してしない。小説を見せるには、かなりの勇気が必要なのだ。一度、ネットに投稿しようかなと考えたことがあるのでその気持ちはわかる。だからこそ、適当に読むといった書いた人の苦労を踏みにじるようなことはしたくないのだ。


 そうして二時間が経過した。部活動の時間は既に過ぎているのだが、あかり達はまだ帰っていない。夜が帰ってもいいと言ったのだが、まだいると言うのだ。今は、玲奈も交えてゲームをしている。馴染めるのか少し不安だったが楽しそうで何よりである。


「レイ、読み終わったぞ」

「!」


 夜の言葉に、玲奈はビクンと身体を跳ねさせた。そして、テレビの前から夜の向かいへと移動する。表情は、不安で一杯なのか暗かった。


「素直に言うぞ?」

「……はい」


 玲奈はぎゅっと目を瞑る。ホントは聞きたくない! でも、聞かなくてはいけないのだ! 読んでくれた夜のためにも。執筆を頑張った自分のためにも。


「面白かった」

「…………へ?」


 夜の感想に、玲奈は思わず間抜けな声を漏らす。今、何と言った? 面白いって言ったの? と。


「お世辞、じゃないんですよね?」

「素直に言うって言っただろ? 普通に面白かった。キャラの心情とか細かく書けてたと思う。読者を引き込むような描写もあった。読んでて面白かった」

「ホントですか? 嘘じゃないですよね?」

「ホントだし嘘じゃない。気になる点は何個もあったけど、普通に面白かった」


 夜の面白いという言葉に、玲奈は嬉しいやら恥ずかしいやらと言った表情をする。面白いと言ってもらえたのは嬉しい。でも、読んでもらったというのが、やはり恥ずかしかった。今の玲奈の感情を表す言葉。それは幸せ、なのだろう。今まで、アニメや漫画と言ったオタクな趣味を隠して生きてきた玲奈は、そういった話を他の人としたことが無いのだ。でも、今日初めて夜に、二次元部のみんなに話して、受け入れてもらえたのが嬉しかった。楽しかった。そんな感情を〝幸せ〟と言わずして何というのか。


「ルナ先輩、私小説家になりたいの。物語を自分で作ってみたいの。それが私の夢なの」

「うん。それで?」

「今以上の作品を書きたい。だから、手伝ってくれますか?」


 玲奈は頭を下げる。手伝ってください、お願いします、と。自分だけでは無理だから、手を貸してください、と。人に助けを求めるのは、意外と勇気が必要なのだ。それを、玲奈はやり遂げた。


「いいよ。レイの執筆を手伝う。それがレイのやりたいことなら俺はサポートするよ。先輩として、同じ部活のメンバーとして」

「あ、ありがとうございます!」


 夜の他に、あかり達も手伝うようだ。最初は、またライバルが増えた! しかも、親しい! 玲奈許すまじ! と思っていた四人だが、関わっていて、一緒にゲームをして楽しかったのだ。友達になったのだ。友達の頼みならば、断る理由などないだろう。


「じゃあ、明日からの活動内容はレイの執筆の手伝いっていうことでいいか? 瑠璃」

「私は構わないよ。後は、顧問の先生に入部届を出さないとね。二次元部に入るんでしょ?」

「はい! 入りたいです!」

「うん、よろしい。明日からよろしくね、玲奈クン」

「よろしくお願いします!」


 そうして、今日の部活は終わりとなった。


 帰り道。


「おにいちゃん。おにいちゃんは玲奈さんのことどう思っていますか」

「ん~、どうって言われてもなぁ。まだ知り合ったばかりだし」

「そうですか? ならいいです。なら、私のことはどう思っていますか?」

「大切な妹と思ってるけど」

「! 大切……。えへへ~」


 夜の言葉に、あかりがデレデレしたということは、きっと言うまでもないことだろう。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただけたのなら幸いです。

密かに小説家を目指す女の子、玲奈ちゃんですがこれからどうなるのでしょうか。プロットなしなのでどうなるかわからないですw 三章みたいにいきなりの急展開は多分ないと思います。思いたいです。

さて、三日投稿がかなりきつく感じ始めました。まぁ、頑張りますが。

そして、30,000PVを達成いたしました! 本当にありがとうございます!

感想、評価、ブクマetc……してもらえると、大変嬉しいです。ブックマークだけだと本当に面白いと思ってもらえているのかわかりにくいので、評価や感想などでその辺を教えていただければ嬉しいです。

では、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

それと、キャラ紹介Ⅰを改稿しました。梨花の誕生日とか変わってます。番外編を書けなかったためです。大変申し訳ございませんでした。

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