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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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GW番外Ⅰ 幸せな時間

これは、GWを記念とした番外編です。本編にまったく関係ないのでご注意を。

 五月五日。ゴールデンウイークの真っただ中であり、〝こどもの日〟、〝端午の節句〟と呼ばれている。雛祭である三月三日を〝女の子の日〟とすれば、五月五日は〝男の子の日〟と言えるだろう。


 そんな今日。夜はあかりと二人きりで過ごしていた。他の二次元部の部員である夏希、梨花、瑠璃、玲奈はゴールデンウイークということで実家に帰っているのだ。瑠璃も、あの一件が終わった日から家に帰っていないようだったが、心配はいらないだろう。


 他のみんなは帰省してるんだから俺たちも、とあかりに提案したところ「やだ、おにいちゃんと二人きりがいい」と言われてしまったのだ。ここで、無理やりにでも実家に帰ってみろ。甚大な被害が夜だけでなく、母親と父親にまで被ることになってしまう。それだけは避けねばならぬのだ。


 ということで、夜はあかりと二人きりで過ごしていた。因みに、今は遊園地に遊びに来ている。あかりがデートをして欲しいと言うのだ。最初は断ろうとしたが、無機質な瞳になったところで夜は諦めた。ダメだ、あかりはもう手遅れだ……、と。


「ねぇ、おにいちゃん。あそこ行こ?」

「ん、ジェットコースターか……。俺、絶叫マシンダメなんだけど……」

「いいからいいから、行こ?」

「ま、待て、まだ心の準備がぁぁぁぁぁ」


 あかりは夜の手を引き、ジェットコースターを乗るために並んでいる列の最後尾へと向かった。その間、夜はまるで子供のようにいやいや言っていた。が、あかりは止まらなかった。こんなことで止まるのならデートなどしていない。


 そうして待つこと小一時間。遂に、夜とあかりの出番が来た。


「やったぁ、一番前!」

「おし、それなら俺は一番後ろの席に……」


 夜は、あかりが席に座り安全装置を降ろしたのを確認して後ろの席へ向かうために歩き出した。安全装置があれば、あかりは降りられない。一番前じゃなくていいのだ。嫌なら乗りませんと言えばいいのだが、並んでしまった上に、スタッフさんに迷惑をかけられないのだ。なら、並んでいる時にと言われるだろうが、あかりにずっと手を握られていた。逃げられるわけがないのである。ならば、せめて一番後ろでと思ったのだ。しかし、


――がしっ。


 誰かに腕を掴まれた。え? 誰にって? 夜はギギギとロボットのように振り返った。そこにいるのは、当然あかりさんである。ヤンヤンしているあかりさんだ。既に、目はハイライトが消えてしまっている! 最近、無機質な瞳がデフォルトとなり始めてしまったあかりさん。原因は誰か、そんなもの言わずもがなである。


 あかりはにこっと笑って、


「どこ行くの? おにいちゃん。わたしと離れるなんて嫌だよ?」

「はい、すみませんした」


 夜は一瞬で座り、安全装置を降ろした。夜は負けたのだ。妹であるあかりに。一時的な死と、永遠の死。どちらを選べと言われたら、一時的な死である。


「おにいちゃん、楽しみだね♪」

「ア、ハイ」


 手をぎゅっと握ってくるあかり。夜は、ぎゅっと握り返した。そうなれば、あかりは頬を赤らめる。後ろから向けられる嫉妬の含まれた視線が痛かったが、夜は気にしないことにした。こういうのは気にしたら負けなのだ。


「それでは、出発します。行ってらっしゃ~い!」


 スタッフさんの言葉。夜には「行ってらっしゃ~い!」の部分が「逝ってらっしゃ~い!」に聞こえた。夜は心の中で死にたくねぇ! と叫んだ。


 ジェットコースターは上り坂をカタカタとゆっくりと、しかし確実に上っていく。それは、まるで死刑宣告のよう。夜はガタガタと震えはじめる。まるで、何処かのタンスに隠れるあの人のように。……流石にそこまでは震えていないが。


 あかりの手を握りしめる手の力が強くなった。夜はあかりの方を向く。


「大丈夫だよ、おにいちゃん」


 あかりの言葉に、夜はもう大丈夫なんだ……と思った。……って思えるか、ボケェ!


 そして、時は来た。


 ガコン、と音がしコースターは止まった。夜は冷や汗をダラダラと流してしまう。マズイ、本当にマズイ!


 そして、再びガコンと音が鳴り、コースターは下り坂を下りた、否、落ちたの方が正しい表現かもしれない。そう思えるほど速度が速かったのだ。轟ッと風の唸る音が聞こえる。あぁ、空がきれいだなぁ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 夜の悲鳴が遊園地に響き渡る。夜さん、絶叫マシンは本当に苦手だったらしい。


 そして、ジェットコースターが終わった後、夜はベンチであかりに膝枕をしてもらっていた。別に、頼んだわけでは無い。俺は休んでるから楽しんで来いと言ったら、おにいちゃんを一人に出来ない! となったのだ。そして、苦しそうにしてる夜を見たあかりが自分の膝に夜の頭を乗せたのだ。夜が起きようとすると、あかりがにこっと笑うのだ。夜は妹には勝てないのかもしれない。


 そして、二人は色々なアトラクションを楽しんだ。コーヒーカップにフリーフォール。ジェットコースターにジェットコースター。それらに乗る度に夜があかりに膝枕をしてもらっていたというのは夏希たちには言えないことだ。


 そして、時刻も七時になった頃。


「おにいちゃん、最後にあれ乗りたい」


 そう言ってあかりが指さしたのは観覧車だった。今は、空も暗く、夜景がきれいに違いない。


「そうだな、あれに乗るか」


 そうして、二人は観覧車に乗ることにした。並んでいる人は少なく、すぐに乗ることが出来た。夜とあかりは隣ではなく向き合う形で座った。


 ゆっくりと上昇していく観覧車。となれば、ライトアップされた遊園地や、街は暗闇の中で光り輝き、綺麗な夜景となって夜とあかりの瞳に映った。


「綺麗だね」

「綺麗だな」


 夜景の感想はそれだけ。だが、それ以上の言葉は必要なかった。お互いに、何を考えているのか、思っているのかがわかってしまうからだ。


 静寂に満ちる空間。そんな沈黙を破ったのは意外にも夜だった。


「ありがとな」

「……おにいちゃん?」

「色々とあれだったけど、楽しかった。だから、ありがとな」

「わたしも楽しかった。おにいちゃんといれて、嬉しかったよ」


 そう言って笑うあかりは、観覧車から見える夜景に負けないくらい綺麗で、それでいて美しかった。




 バスに乗り、帰る道中。


「す~、す~」


 夜は寝息を立てて寝てしまっていた。楽しかったと言えど、疲れるものは疲れてしまうのだ。酔いに酔ったのも原因かもしれないが。


 あかりは、そんな夜を愛おしそうに見つめ、夜の唇に自分の唇を重ねた。


 一瞬とも言える幸せな時間。でも、あかりには無限に等しい時間に思えた。


「ありがとね、おにいちゃん」


 そう言って、夜の肩を枕代わりにし、あかりも夢の中へと旅立っていくのだった。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただければ幸いです。

こどもの日、関係ないですねw 書き終わって気付きましたw

でも、詩和は満足です。書いてて楽しかった。

今回は、影の薄かったメインヒロインであるあかりを書かせていただきました。エイプリルフール番外は梨花でしたしね。

可愛く書いたつもりですが、どこにいてもあかりがヤンデレであることには変わりないんですね。ヤンデレ+妹。最高です。二次元に限りますが。

では、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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