みんな大好き一年美少女
翌日の放課後。夜は昨日の玲奈との約束通り一年生の教室へと向かっていた。その道中、
「ねぇ、あの人って……」
「う、うん。宿泊研修の時の人だよね?」
どうやら夜は一年生の間で少し有名になっていたらしい。それもそうだろう。宿泊研修では色々と問題を起こしてしまったのだ。いい意味でも、悪い意味でも有名になったようだ。
夜は少しバツが悪そうな表情をしながらも玲奈のクラスへと向かった。教室に着くと扉の前で玲奈が待っていた。玲奈は夜に気付くと手を振りながら駆けてきた。教室や廊下にいた他の生徒はぎょっとしている。
「おい、小早川さんが〝変態〟に手を振ってるぞ!」
「そんな! 俺の玲奈ちゃんがぁ……!」
教室や廊下にいる生徒(男子生徒)が嘆き始めた。視線は夜に向けられており、その瞳には嫉妬が多分に含まれていた。玲奈はかなりの人気者だったらしい。確かに、玲奈は傍から見ればあかり達同様可愛い分類になるのだろう。面と向かっては言えないし、言ってはいけないが、玲奈の胸は大きい。そんな玲奈が、あかり達美少女を毒牙にかけている(本当はしていない)夜に手を振っているのだ。気が気でいられないのだろう。気持ちは少しわかる。
そして、後輩の〝変態〟呼びに、夜は遠くを見つめた。お母さん、お父さん、俺、変態って呼ばれてるよ……。しかも、後輩に。あれ? おかしいな、目から汗が……。と夜は心の中で泣いた。泣きたくなるのも無理はない。まず、夜は変態では無いし、玲奈はお前のじゃない。
「ルナせ……、夜月先輩!」
「……小早川って有名だったんだな」
「何のことですか?」
「あぁ、うん。小早川は知らなくていいことだ」
玲奈は首を傾げながら不思議そうにしていたが、夜は気にするなと言っておいた。因みに、二人の呼び方が変わっているのは他の人がいるからだ。オタクな趣味を隠している玲奈がオタクだと知られれば、どうなるかは明白である。あかり達に知られるということは了承してくれた玲奈だが、二次元部以外の人には知られたくないのだ。それなのに、二人が「レイ」「ルナ先輩」なんて呼び合ってみろ。オタクな趣味が知られるのは確実である。
「さてと、それじゃあそろそ……」
「楽しそうですね、おにいちゃん……」「楽しそうだね、ナイト……」
「っ!?」
そろそろ行こうか。そう言おうとしたその時、後ろの方で二人の声が聞こえた。声からも、夜の呼び方からもわかる人物――あかりと夏希が立っていた。気のせいだろうか。二人とも目が死んで腐った魚のような目になっているのだが……。
「あかり、夏希……」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして玲奈さんだけを迎えに来てるの?」
「だけって、だって玲奈は場所わからないだろ?」
部室の、とは言えないのだ。玲奈が二次元部に入ると知られればオタクであるということもバレてしまうことになる。
「ナイト? ナイトは僕よりもそこの小早川さんを選ぶの?」
「夏希? アリス? 選ぶも何も俺は何もしてないけど……」
「瑠璃先輩の次は小早川さんなの?」
「なんか勘違いしてないか?」
夏希も夏希で色々と病んでしまっている。夜が玲奈と関わっているのは付き合っているからだと思い込んでしまっている。
「ねぇ、おにいちゃん」「ねぇ、ナイト」
ハイライトの消えた無機質な瞳で見つめてくる二人は、普通にホラーだった。
夜は二人の手を握った。突然のことへの驚きと、手を繋いでくれたという嬉しさにあかりと夏希は頬を赤らめる。そして、頬に手を添えてイヤンイヤンと体をくねらせている。
「お、おにいちゃん、そんな、こんなところで……」
「ナイトが、僕を必要としてくれた……」
「さて、行こうか」
「……そうですね」
夜と玲奈は、イヤンイヤンしているあかりと夏希を横目に、部室へと向かった。因みに、頬を赤らめているあかりと夏希を見た男子生徒たちが、俺達のあかりちゃんと夏希ちゃんをこんなにしやがって……! と叫んだのは言うまでもないことだった。
そして、それを聞いたあかりと夏希が、「わたしはおにいちゃんのもの」「僕はナイトのもの」と言って、男子生徒達が四つん這いに崩れ落ちたのも言うまでもないことだろう。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんでいただければこれ幸いです。
今回は短いですが、番外編もあるのでご了承のほどを。それに、今、家に居ないんですよ。なので、前日である5月4日に書いています。しかも、急で。なので、短いです。
今回は、なんも進んでいませんでしたが、玲奈ちゃんの人気はわかってもらえたでしょうが。とても人気なのです。勿論、あかりと夏希、梨花と瑠璃も。彼女たちはナギ高の美少女なのです。
もう、何言ってんだと自分で自分に突っ込み始めてしまったのでこの辺で。
この次に番外編もありますので、そちらもどうぞ。




