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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
4章 ヤンデレ妹の兄は新入部員の夢を応援するそうです。
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瑠璃の変化

 瑠璃の結婚騒動から約一週間が経っていた。ニュースで取りあげられていた星城家、蔭山家のいざこざは音沙汰がなくなっていた。ニュースで報道された当初はなんだかんだと注目の的だったのだが、自分に関係のないことにはあまり興味を示さない人間によって騒がれることが無くなったからである。


 夜と瑠璃、二人の関係は元通りにならない、と思いきやほぼ何も変わることは無かった。ある一つの点を除けば元通りの関係なのだ。そう、一つの点を除いて……。


「ねぇ~、夜ク~ン」

「ん? どうかしたか?」

「なんもないよ? ただ、名前を呼んだだけ~」

「……ったく、必要も無いのに呼ぶなよ……」


 元の関係とは変わってしまったところ。それは、瑠璃の夜に対する接し方だ。普通、別れたとなれば関係はぎくしゃくしてしまい、疎遠になってしまうだろう。事実、最初の頃は気まずさはなかったが、裏切られた、裏切ったというお互いの何とも言えぬ遠慮さがあった。


しかし、このままではいけないという考えに辿り着いたのだ。いくら裏切った、裏切られたとはいえ、それは瑠璃が平藏のことを心配したが故に起こったこと。つまり、瑠璃が優しかったからである。そんな瑠璃の優しさを、乾治に自慢げに話される前から既に知っていた夜にとって、その時は辛く、苦しかったが、今ではそこまで気にしていないのである。それが、星城瑠璃という人間だとわかっているからだ。


 夜と瑠璃も、元の関係に戻ることを望んだからこそ、今まで通りの関係に戻ったはずなのに、そこで瑠璃から待ったがかかったのだ。夜には敬語を使って欲しくない。もう好きってバレてるからこれからはそれを隠さなくてもいいよね? と。その時の夜は、あまり詳しく聞かなかったがために許可を出したのだが、それが間違いだったのだ。


 夜が瑠璃に敬語を使わないというのはいい。事実、僅かな時間、本当に僅かな時間だけだが、夜は瑠璃に敬語を使わなかった。なんだかんだで違和感があるからと敬語を使っていたが、瑠璃からの頼みだ。流石に無碍には出来ないのである。これが、自分に出来ないことなら断っていただろうが、敬語を使わないくらいなら出来るということで夜は敬語を使わずに瑠璃と接することにした。問題は次だ。


 好意を隠さなくていい。夜はその時、あかり達に自分は夜のことが好きだと伝えるんだなくらいにしか考えていなかったのだが、翌日。


「おっはよ~、よ~るク~ン!」

「おはよう、瑠璃……、!?」


 ナギ高の生徒玄関で瑠璃に挨拶された夜はおはようと言いながら瑠璃の方を向けば、瑠璃は腕を広げ、夜の方へ飛んでいた。あれ? 危なくね? と思ってもよける時間がない。瑠璃は転んで自分に助けを求めているのだろう、と思ったりもしたのだが、この時の夜は思考が追い付いていないのだ。もし、瑠璃が本当に転んでいたならおはようと挨拶するのではなく、助けてとか言うはずである。ならば、何故言わなかったのか。


それは、瑠璃が夜に抱き着くために飛びついたからだ。瑠璃は言ってしまえばロリ体型である(本人に言ったら後が怖い)。抱き着いたとしても、転びはしないだろう。流石に、よろめいたりはするだろうが。


 そして、抱き着いてきた瑠璃に事情を訊けば、夜クンと恋人になるためにまずは夜クンにわたしを意識してもらうためと言うのだ。夜はそういうことだったのか……、と詳しく聞かなかったことを後悔した。そして、当然の如く、夜と一緒にいたあかりがヤンヤンしたのは言うまでもないことだろう。


 そして、今に至るのだ。


 因みに、瑠璃の夜への好意駄々洩れな件は、学校中に知れ渡っている。それもそうだろう。授業の合間に夜の教室へと遊びに来て、休み時間になればあかりよりも早くやってきて夜と一緒に昼食をとる。部活も一緒。帰るのも途中まで一緒。ほとんどが、瑠璃が夜にくっついているだけなのだが、傍から見たら恋人同士に見えてしまうのも仕方が無い。だから、二人は付き合っている! という当たっているような外れているような噂が流れるのは当然だった。なのに、夜の前以外では、今までの瑠璃なのだ。もはや別人と言える。


この噂を耳にしたとある三人が、瑠璃許すまじ……と嫉妬していたのは言うまでもないことだろう。そして、そんな瑠璃の二重人格といえるギャップを見て、瑠璃に好意を寄せる男子共が一気に増えたことも、やはり言うまでもないことだろう。


 因みに、今は休み時間だ。この場には、夜と瑠璃の他に、あかり、夏希、梨花と二次元部(いつも)のメンバーがいる。遂に、我慢できなくなったあかり達が、強引についてきただけなのだが……。


「はい、夜クン。あ~ん」

「あ~ん」


 瑠璃のあ~んに、夜は躊躇うことなく口を開け、んぐんぐと口を動かす。ここ最近、よく見られる光景だった。ある日、瑠璃が夜に食べさせたい! と言ってあ~んしたのだが、勿論、夜は断った。流石にそれは恥ずかしいし、友達同士でやるものではないと。


だが、断る度に落ち込む瑠璃を見て、心苦しくなった夜は一回だけのつもりであ~んされたのだが、瑠璃の作った料理が予想以上に美味しかったのだ。流石は一人暮らしというべきか。料理スキルは取得済みらしい。


普段は購買や、自分で作った弁当を昼食に食べている夜だったが、瑠璃が夜の分も作ると言ってくれたので頼んだのだ。しかし、瑠璃はあ~んじゃないと食べちゃダメという。一度やったら二度も三度も同じだ! という夜の暴論により、それ以降、夜は瑠璃にあ~んされているのだ。決して、夜はあ~んされたいわけではない。決して。


夜と瑠璃のあ~んしている光景は、非リアから見たら堪ったものじゃない。お前等早くくっ付けよ! とツッコんだ人が、翌日ガタガタ震えていたりもした。すみませんでした、あかりさん……と怯えた様子で呟いていたようだが、きっと気のせいだろう。


「どぉ? おいしい?」

「うん、うまい」

「よかったぁ、はい、あ~ん」

「あ~ん」


 付き合った時よりも恋人してる夜と瑠璃。そんな二人の作る桃色空間(仮)は、道行く人に砂糖でも吐かせたいのか、というほど甘かった。甘ったるかった。


 一方、あかり達はというと、言うなれば闇色空間を作り出していた。夏希と梨花は落ち込んでいるのか、三角座りで顔を膝に埋めている。あかりは、先程からブツブツと何かを呟いている。耳を澄まして聞いてみれば、「おにいちゃんはわたしのもの、おにいちゃんはわたしのもの、おにいちゃんはわたしのもの……」と言っていることがわかる。最近、ヤンに磨きがかかってきたあかりさん。今日もヤンヤンである。デレはないことはないのだが、割合にしてみると、ヤン9に対してデレ1である。あかりさん、デレを忘れかけている今日この頃。


「ねぇ、夜クン。今日の放課後なんだけど、新しくできたカフェに行かないかい?」

「カフェかぁ。行きたいんだけど悪い。今日はアニメートでラノベの新刊が発売されるんだよ」

「そっか。じゃあさ、今度二人で行こうね?」

「そこはみんなでじゃねぇのかよ……」


 その後、二人で行くなんてダメ! という三人の抗議もあって、後日、五人でその新しくできたカフェに行くことにした。瑠璃が少し悔しそうな表情をしていたが、夜は気にしないフリをした。




 午後の授業も終わり、放課後となった。夜は、一緒に行きたいというあかりをどうにか宥め、アニメートへと来ていた。


 日本中に店舗が存在するアニメ専門ショップ、アニメート。夜の行きつけの店でもある。品揃えも素晴らしく、対応も完璧。まさに、オタクな夜にとっては最高の店だと言えるだろう。


「えぇっと、お、あったあった」


 夜はお目当てのラノベを発見し、それを手に取る。だが、目的を果たしたからと言って買い物は終わらないのだ。


「さぁて、他には何があるかな……」


 夜はその後、買って帰るのではなく、店の中を見て回った。関係ないものを買ってしまうのは、この店では仕方が無いことなのだ。


「ん? あの子は……」


 店内を虱潰しに歩き回っていると、今まで何度か見たことのある人を見かけた。今日は平日ということもあって、その子は制服を着ていた。きっと学校の帰りに立ち寄ったのだろう。事実、夜もそうなのだから。だが、夜はその制服が気になった。


「あれ? あの制服ってナギ高じゃね? しかも、あのネクタイは一年……。まぁ、いいか」


 そうして、夜はお目当て以外のラノベを数冊とお目当ての物を買って帰路へと着いたのだった。


ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

さて、一週間後に投稿すると言っておいて、その三日後に投稿しているわけですが、そこは気にしない方向で。

さて、今回はいかがでしたでしょう。ちょっとデレ始めた瑠璃に、ヤンヤンしまくっているあかり。そして、ちょっと気になるアニメートにいた子。

四章も楽しんでいただければこれ幸い。

夏休みに入るにはまだまだかかりそうな気もするのでアンケートは引き続き実施しております。ぜひ、ご協力の方をお願いします。

では、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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