表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
3章 ヤンデレ妹の兄は先輩の彼氏を演じるようです。
114/339

紛れもないストーカー

「――おにいちゃん……」

「あかり……」


 視線を声が聞こえた方へと転じれば、そこには何食わぬ顔で、あかりが立っていた。


 本来なら、ここにはいないはずのあかりの突然の登場? 出現? だというのに。


「……おにいちゃん、そこまで驚いてないね?」

「……まぁ、な……」


 驚いている。驚いてはいるのだが……あかりの言う通り、そこまで驚いてはいなかった。


 それは、心のどこかで、もしかしたらあかりは付いてくるのではないだろうか……と思っていたからかもしれない。


 好きだからという理由で平然と発信機と盗聴器を仕掛けるというストーカー行為をしてしまうあかりのことだ。


 盗聴器と発信機入りのストラップを外されて会話を聞くことも居場所を特定することも出来なくなったあかりが、いっそのこと本当にストーカーすればいいのでは? と思ってもおかしくはない。


 まぁ、本当にストーカーをするとは夢にも思っていなかったが、そればっかりはあかりの行動力を舐めていた自分に非があるのかも……いや、ないな。まったくない。あるわけがない。


 そんなわけで、変な心構え……で表現があっているかどうかはさておき、驚かずに済んだのだが、気になることが一つ……。


「なぁ、あかり。もしかして、あのストラップ以外に盗聴器とか発信機とか仕込んでたりする……?」

「ううん、してないよ? でも、GPS機能でいつでもおにいちゃんの場所はわかるよ?」

「それ発信機仕掛ける必要ってあるか……?」


 GPS機能で場所を特定出来るのならば、わざわざ発信機を仕込む必要はないと思うのだが……小首を傾げるあかりを見るに、きっと無意識だったのだろう。もしくは、気付かなかっただけかもしれない。


「でも、場所はわかってもここまでの道のりはわからないんじゃ……」

「それなら大丈夫だよ? おにいちゃんの後を付けてきたから」

「何も大丈夫じゃないし聞きたくなかった……」


 さらっとストーキングしてきた宣言をするあかりに、夜はいつ学生からストーカーに転職したんだ……とため息を吐く。


 一体、何が大丈夫だというのか。一度、あかりには常識とかを一から教えなおした方が……いいとは思うが無駄な気がする。


 そんなあかりとの何気ない会話のキャッチボールに、何故だろう。


 安心感というか、安堵感というか……ほっとしている自分がいるのは。


「さてと、それじゃあ……」

「おにいちゃん、部長は?」


 帰ろうと、そう言って逃げ出したかったのに。あかりの質問に息が詰まる。


 一緒に帰ろうという約束を交わしたことを、あかりは盗聴していたから知っている。


 だから、瑠璃がいないことを疑問に思わないわけがないのだ。


 はぐらかせるわけがないのに。誤魔化せるわけがないのに。


 その方法を模索するべく思考を巡らす夜の耳に、ポケットに入れていたスマホから鳴る着信音が届いた。

※2020/11/13に三章改稿に伴い割り込み投稿しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ