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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
3章 ヤンデレ妹の兄は先輩の彼氏を演じるようです。
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騒々しい再会

 門を潜り抜けたあと、玄関で出迎えてくれた秋葉原などにあるメイド喫茶やコスプレなどで着られるメイド服、ではなくちゃんとした、それでいて和服っぽい雰囲気のメイド服に身を包んだメイド――侍女に案内されるがままにだだっ広い屋敷内を歩く。


 その広さ故に夜には長く続く廊下が迷路のように思えて、一切の迷いなくすたすたと進む侍女に尊敬の念を抱いてしまう。


 それほど長年星城家に仕えているということになるのだろうが、だとしても夜からしてみれば凄いとしか言いようがない。きっと、夜には無理だから。


 そんなことを考えながら歩き続けること数分。


「こちらです」


 そう言って侍女が立ち止まり、目の前に現れたのは綺麗に装飾された、荘厳な雰囲気の襖だった。


 侍女が立ち止まり、瑠璃の表情が一層と強張ったことから察するに、この先にいるのは……。


 ここまで案内してくれた侍女は失礼しますと一言だけ言い残し、この場を後にした。


 ごくりと、固唾を飲みこむ音が静かな廊下に響く。それは夜のものか、はたまた瑠璃のものか、それとも両方なのか。


 夜と瑠璃は緊張を和らげるためにすぅはぁと深呼吸。


 すぅはぁ、すぅはぁ、すぅはぁ。


 何度も何度も深呼吸をしても気持ちが落ち着くどころか緊張したまま。一向に和らぐ気配はない。


 だけど、それも仕方のないことなのかもしれない。


 だって、すべてが決まってしまうのだ。文字通り、瑠璃のこの先のすべてが。


 一手でも間違えればその瞬間何もかもが終わってしまう。何もかもを失ってしまう。そのことが怖くて怖くて。どうしても怖気づいてしまう。


 瑠璃は握りしめていた拳を解き、夜の手と自分の手を重ねぎゅっと握りしめる。


 何度でも思い返す。ここにいるのは一人ではないのだと。


 頼りないけど頼ってほしいと言ってくれた、頼れる後輩が。友達が隣にいてくれるのだ。背中を支えてくれるのだ。


 だから、先輩として、友達として。何よりも好きな人に、恥ずかしい姿を見せるわけにはいかない。


 辛そうで来るそうな顔よりも笑っている顔を見てほしい。


 だから、どれだけ目の前が真っ暗でも瑠璃は前へ進める。


 もう一度すぅはぁと深呼吸。


 すると、緊張は和らぎ早鐘を打っていた鼓動も落ち着きを取り戻し始める。


 完全に不安や緊張が消え去ったわけではない。けど、それでも和らいだことに変わりはない。


 夜クンがいると思うだけでここまで変われるんだ……と内心驚きつつも、瑠璃は意を決して襖を勢いよく開け放つ。


 それは、自分の心に巣くう不安を取り払うため、否。


 襖の向こうで待っている相手に対する宣戦布告のため、否。


 夜クンにカッコいい姿を見せるため!


 部屋の中で待っていた女性――真璃は困ったように微笑んでいて、男性――隆宏は呆れているのかこめかみを抑えつつため息を吐いている。


「まったく、襖くらい静かに開けてほしいものだな……」

「おかえりなさい、瑠璃」

「うん、ただいま。お父さん、お母さん」


 隆宏(父親)真璃(母親)、そして瑠璃()


 そんな三人(親子)の再会は騒々しいものとなった。

ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

遅れて申し訳ございません! 書き上げていなかったものですから……。

さて、今回はいかがでしたでしょう。楽しんで……は無理か。

本性を現した乾治。きっと、いつもの夜なら殴り込みに行っていたでしょうが、落ち込み度が酷いんですね……。

次回の投稿は、申し訳ございませんが二日後辺りになるかと。申し訳ございません。

それでは今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

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