FRIDAY THE 13th番外Ⅰ あかりジ〇イソン
これは13日の金曜日を記念とした番外編です。本編にはまったくこれっぽっちも関係ないのでご注意を。
荒い息遣い。土を踏みしめる足音。それらの発生源である夜は、暗い森の中を走っていた。時々、後ろを振り返っては走る速度を上げる。胸が苦しくなるが、今はそんなことを気にしていたらやられる。後ろにいるはずの人物に。
「待ってよぉ、おにいちゃぁん……」
キョロキョロと周りを見ながら夜の名を呼ぶのはあかりだ。そう、夜が逃げているのはあかりである。しかし、妹から逃げるのは何故だろうか。それは、あかりが持っているものに理由がある。斧を持っているのだ。顔にはよく、夏祭りとかでお面を斜めにかぶっているような形でホッケーマスクを着けていた。そのマスクにも、斧にも、赤い液体――血が付着していたのだ。
どうしてそんな恰好をしているのかはわからない。だが、夜の警鐘が鳴り響いたのだ。何か危険だと。今すぐ逃げろと。夜は本能に従い逃げているのだ。
夜が今、持っているのは爆竹だけだ。これは途中にあったキャンプ地で拾ったものだ。こんなものを持っていてもしょうがないと思うのだが、無いよりはましだろうと持って来たのだ。
「あ、いたぁ……」
あかりは逃げる夜の姿を確認すると、物凄いスピードで夜を追いかけた。一体、その体のどこからそんな力が出てくるのか疑問だが、気にしている余裕はない。
夜はポケットから爆竹を取り出すとその場であかりに向かって投げた。破裂音を鳴らし、白い煙が噴出したお陰で、夜はどうにか逃げることに成功した。爆竹様々である。
そして、十分くらい走っただろうか。目の前に一つの小屋が見えた。木の陰に隠れてもいいが、それではすぐに見つかってしまう。夜は、小屋の方がまだ安全だろうと考え、小屋の中へと入った。
中は、二つの部屋と扉が一つ、窓が三つあった。中には机やテーブル、暖炉などいろいろな家具などが置かれていた。そこで、夜はあるものを見つけた。
タンスである。人一人入るには十分な大きさのあるタンス。この中の隠れればもしかしたら助かるのでは? と思い、夜はタンスの中へと入った。
今のあかりは何かがおかしい。何をしでかすかわからないのだ。斧を一振りされただけでもかなり危険なのである。それならば、この場でやり過ごした方がいいのではと思ったのだ。
それに、夜の隠れているタンスに背を向けた瞬間に、後ろから押し倒し、斧を取りあげれば危険は無くなる。
そう考えているうちに、あかりが来たらしくドアの開く音が聞こえた。カツンカツンと靴音が聞こえる。
「おにいちゃん? どこなのぉ?」
あかりは部屋の隅々まで調べ、遂にタンスの前へと来た。そして、
「いないなぁ……」
背を向けた。
夜は今だ! とタンスから飛び出した。しかし、目の前にあかりの姿はない。嫌な予感が夜の脳を埋め尽くす。そして、探している人物の声が横から聞こえた。
「おにいちゃんみ~つけた……」
突然のことで身体が思うように動かない夜は、あかりに押し倒される。しかし、あかりは女の子だ。ならば、押し倒されても大丈夫と思ったのだが、あかりの力が思った以上に強く、夜はその場に仰向けに倒れる。
「どうして逃げるの? ずっと一緒にいるためにおにいちゃんと一つになろうとしたのに……」
どうやらあかりは、夜と一つになりたかったらしい。勿論、あっちの方向の話ではない。文字通り、一つにだ。心も、身体も。
あかりは斧を振りかぶった。振り下ろされる場所は夜の頭だ。
「待て、待てあかり! 少し話を……」
「一緒になろうね、おにいちゃん!」
あかりの振り下ろした斧が、夜の頭に……。
「うわぁぁぁぁ!」
悲鳴じみた声を上げながら夜はその場で体を起こし、周りを確認した。そこは、森の奥でもなければ小屋の中でもない。自分の部屋だった。
「……夢、か……」
どうやら、今のは夢だったらしい。普通に考えればそうだろうが、逃げることに夢中でそこまで考えが及ばなかったようだ。
「おにいちゃん、大丈夫?」
夜の悲鳴に驚いたあかりが夜の部屋のドアを開け、中を確認してきた。夜は一瞬ビク! となりながらもさっきのは夢だと頭の隅に追いやり大丈夫だと返した。
「よかった、もう朝ご飯出来てるよ?」
「あぁ、今行く」
夜はベッドから降りるとリビングへ向かった。枕の横に置かれていた赤い何かが付着したホッケーマスクには気付く事無く……。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、13日の金曜日ということでの番外編でしたが、いかがでしたでしょう。もう滅茶苦茶ですね。三十分くらいで大急ぎで書き上げたものなのでそこらへんは何卒。
さて、タイトルが〝Ⅰ〟と〝あかりジェ〇ソン〟てことはですよ……。次は七月だそうなのでもしかしたら……。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。




