第70話 【第4章 プロローグ】巫女巫女会議
夢見の回廊でもない……どこでもない……不思議な空間……。
妖精界のどこかに設けられた、ごく一部の者しか知らない場所……そんな空間にふわりと浮かぶ神殿があった。
そんな神殿の奥にある吹き抜けになっている円形の部屋、時折星の砂が散りばめられたかのような煌めきを放つ透明な地面に、大きな大理石で出来たかのような円卓、四方にふかふかの椅子が用意され、それぞれ特徴ある衣装を身につけた者が座っている。
「へぇー、じゃあ、あんたのとこの妖精とその人間、覚醒技使えたんだー! なかなかやるじゃなーい?」
白に金色の細かい刺繍が入ったミトラと聖衣を身につけた銀髪の女性が頬杖をついた状態で、向かいに座る幼女のような印象の女性に声をかける。
「ええ、国の妖精達も含め、皆さんよくやってくれました。お陰で我が国は救われ、ようやく妖精界の夢渡力が解放される事となりました」
幼女に似つかわしくない、大人っぽい穏やかな口調で、美しい淡紫色の着物を身につけた女性が笑顔で答える。
「その事について、聞きたい事があるのよ。貴方の国で、人間の女の子が助けられたハズよ? 助けられたのは一人だった?」
幼女姿の女性、右隣に居た人間界の白と赤の巫女服を身につけた女性が尋ねる。
「ええ、そのようでしたよ?」
幼女姿の女性が答える。
「おかしいわね、どうやら行方不明だった残りの三名まで見つかっているようなのよね」
そういうと、円卓に置いてあった紅茶のカップに手をつける巫女服の女性。
「え、なにそれー? じゃあどうして人間の子が解放されたのにもかかわらず、闇夜大国の怪しい動きが消える気配がない訳?」
聖衣の女性はうちの国も監視するのが大変なのよー、とぶつぶつ呟いている。
「恐らく……人間の子が必要なくなったか……あるいは解放されたのは予期しない事だったか……のどちらかでしょうね……そうでしょう? 十六夜?」
今まで口を開いていなかった、透き通るような水色の羽衣を身につけた女性が、幼女姿の……そう、夢見の巫女――十六夜へと尋ねた。
「さすがね、エレナ。話が早いわ……実は、今回の戦闘において、敵側についていた人間の女の子が居たのです。アリスという名の女の子でしたが、彼女は強力な夢渡の力を備えていました。人間の子供達を連れ去った人物が居なくなった事で、人間の子供達が持つ夢見る力を制御出来なくなった……という可能性はありますね。それに夢の国が解放された事で、妖精界にて、人間の夢みる力や、夢渡の力を行使する事は、私に異変を知らせる事になる……現に私は、既に異変が起きている場所を把握しておりますから」
十六夜は、全てを知っているかのように語り、ゆっくりと紅茶を飲んだ。
「そこまで分かってるんならさー、あたしの国もなんとかしてよー? 魔族が動き出したら、聖魔大国の聖魔術賢団でも倒すのにひと苦労するわよー?」
面倒くさいと言わんばかりの表情をした聖衣の女性。
「こちらも準備はしております故、もうしばらく待っていただけますか、ビクトリア?」
笑顔で返す十六夜は、相手がどう答えてくれるか分かってるような表情だ。
「はぁ……そう言うと思ったわよ……銀眼妖精……娘のミューナにも、ちょっと準備してもらっとくわ。他の国まで手が回らないから後はなんとかしてよね、十六夜?」
溜息をつきながら、十六夜へ返答するビクトリアと呼ばれた女性。
「分かりました。エレナ、そちらの準備は大丈夫ですか?」
十六夜がエレナへ尋ねた。
「ええ、蒼眼妖精……娘のリンクには水精霊の試練、赤眼妖精には火精霊の試練を受けてもらいます。人間の適合者は、一旦十六夜の所へ向かわせますね」
エレナがそう答える。
「よろしくお願いします。それから、人間界の動きは……お任せしますね、ヨウコ」
「ええ、わかってるわ。雄也達もちゃんとそちらに送り届けるから安心しててよね」
夢見の巫女『十六夜』、エレナの巫女『エレナ・ルーシー』、聖魔の巫女『ビクトリア・ホワイト』、そして、現継の巫女『ミナセヨウコ』……四大巫女の会議は、誰にも見られる事なく、静かに幕を閉じる事となる――
第4章 夢見力覚醒編、いよいよスタートです。
よろしくお願い致します。




