第30話 激突! 聖の守護部隊
ついに第30話になりました!
ここまで読んで下さっている皆様ありがとうございます!
「グランドグールは光の国西方、リザードマンの村を壊滅させた後、ブリン湿地帯を越え、ブライティ平原へ到達、まもなく我々聖の守護部隊と衝突します!」
「聞いた通りだ。皆の者、あの聖の討伐部隊をも倒した相手だ。決して油断しないように、心してかかれ!」
女エルフの掛け声と共に、全員が敬礼する。
「はっ! 全ては光の国の栄光の為に!」
王宮直轄部隊、聖の守護部隊の五百名近いメンバーが、ブライティエルフ西のブライティ平原にて、敵を迎え撃つ。各々決戦に向け準備を重ね、ついに運命の刻を迎えた。二十年前、ダークドラゴン襲来の際は、ブライティエルフの街にまで被害が出てしまった。今回はそうさせないために、ブライティ平原にてグランドグールを止める―― これが、聖の守護部隊に課せられた使命だった。
「隊長ー、どうして隊長が指揮を取らないんですか!?」
ミスリルアーマーを着た騎士姿の女エルフが声をかける。
長い耳と、翠髪のポニーテールが美しい。
「ですぜ隊長、いつも、俺様とミディアに任せすぎですぜ」
「いや……表に出るの……苦手だからさ……会議も眠いしさ……戦い早く終わらせて寝たいよ……おやすみなさい……」
「いやいや、寝ちゃだめですよ、ルーディス隊長! もうすぐ敵来ますから!」
「敵はゴンドーとミディアが倒してくれるでしょ? 僕の出番はないよ、きっと」やる気を見せようとしない隊長。
「まぁ、俺様の力があればグランドグールは余裕で倒せますけどね!」
ゴンドーと呼ばれた筋肉隆々のエルフが胸を張る。
「隊長だめです、私はまだしもゴンドーはいつも突っ走って失敗しますから!」
「隊長ーー、来ましたーー! グールとインプが大量にやって来ますーー!」
「隊長の手間を取らせるなー! グランドグール衝突まで、先陣部隊でグールとインプを斬り捨てよ! 防御部隊は結界の準備、グランドグール接近の際は我々に伝えよ! 隊長含む我等三名で片をつける!」
「はっ!」
「ミディア、なんで三名なのさー。ミディアなら倒せるでしょ……」
「隊長……自信持って下さいよ、どう考えてもこの中で一番強いの隊長なんですから……」
「はぁ……帰って眠りたい……」
ルーディスは帰って眠る事しか頭にないようだった――
「報告します! 一般兵士及び、魔導連結部の先導により、ブライティエルフ西地区住民は王宮地下の戦時対策シェルターへと避難誘導完了しました。 東地区住民は待機、魔導連結部メンバーは各ポイントにて、結界の準備をしております!」
「うむ、ごくろう! 国王! 聖の守護部隊がまもなく敵と衝突します! いい報告が期待出来るでしょうわい!」
上機嫌のガディス公爵が国王に報告する。
「そうか、分かった。被害が最小限になるよう、武運を祈ると皆に伝えよ」
「心得ました! お主も下がってよいぞ!」
「ははっ!」
―― アラーダよ……後は頼んだぞ……
心の中でそう思うブライティ王であった。
かくして、飛びかかるインプに対し魔法を放つ聖の守護部隊の隊員達……
「くらえ! 光源弾!」
ドーン! という轟音と共に吹き飛ぶインプ。
「グォオオオオオオオオ!」迫り来るグール。
「浄化の光よ、魔を照らせ! 昇天光射!」
浄化の光を浴びて、グールが消滅する。
先陣を切った聖の守護部隊とグール、インプとの戦闘が続く。グール、ハイグールには昇天光射と聖なる迎撃で攻撃、インプには直接攻撃に光源弾。次々と敵を倒していく。そして、半分近くの敵を倒した時、目標の相手が見えて来た。
「隊長、来ました! グランドグールです!」
「防御部隊! 結界発動!」
隊長の代わりにミディア副隊長が指示を出す。攻撃部隊が下がり、百名近い部隊が前へと出る。
「「邪を受け止めよ! 聖騎士の盾!」」
一斉に聖騎士の盾を発動し、光の壁が現れた。
「来るぞ! 続けー、迎撃部隊準備!」
「ぐおおおおおおおおおおおおーーーー」
グランドグールは、耳をつんざくような叫び声と共に、目の前に居る標的目がけて暗黒の吐霧を吐いた。シュワーという蒸気が広がっていくかのような音と共に、空間が暗闇に包まれていく。
「ぐわぁっ!」
聖騎士の盾の光の壁で受け切れなかった何名かの兵士が、妖気力の正と負の反発により吹き飛ばされる。
「怯むな! 迎撃部隊! 討て!」
「輝きの矢!」
百名の防御部隊の後ろに控えた迎撃部隊百名が一斉に輝きの矢を放つ!
「ぐぉおおおおおおおおおおお!」と叫び声をあげるグランドグール……
「あいつ、木偶の坊だな。あんなノロマじゃあ、格好の的だな」
ゴンドーが吐き捨てるように言う。
百本の矢が刺さったグランドグールの動きが一瞬止まった。
……フシュゥウウウウウウ
しかし、百本の矢はグランドグールに刺さったまま全て溶けてしまった。
矢が溶けるや否や、グランドグールが再び雄叫びをあげた。
「ぐおおおおおおおおおおおおーーーー」
「邪を受け止めよ! 聖騎士の盾!」
―― バチン!
「ぐわぁ!」
光の壁が弾かれる音と共に、再び何名かの兵士が弾き飛ばされてしまう。
「駄目よ、これじゃあかすり傷もつかないし、こっちの妖気力が持たないわ」翠髪のエルフ、ミディアが呟いた。
「ちっ、しょうがねーな、俺様の出番かよ。防御部隊! 自分の身は自分で守っとけよ!」
そのままゴンドーが、グランドグールの目の前へと走り出す。
「おい、木偶の坊! 俺様が相手だ! 来やがれ!」
グランドグールが巨大な拳をゴンドーへと向ける。
そのままゴンドーが潰されてしま……
「ぐぉおおおおおおおおお!」
「おいおい、でかいのは図体だけか? そんなんじゃあ俺様は潰せねーぜ! おりゃあ!」
潰されてしまうかに見えたゴンドーは背負っていた大剣でグランドグールの拳を受け止め、そのまま拳を持ち上げ、大剣でグランドグールの腕目掛けて斬りつけたのである!
ドーン、という轟音と共に、切り捨てられたグランドグールの左腕が地面に落ちる。
「ぐぉおおおおおおおおお!」
しかし、グランドグールは斬られた腕に構う事なく、そのまま暗黒の吐霧を吐く。
「おいおい、腕斬られたの無視かよ!」
暗黒の吐霧がゴンドーに届く直前、今まで部隊の指揮を執っていた翠髪のエルフがゴンドーの巨体を抱え、素早くその場を離れた。
「ぐわぁ!」
後方に居た防御部隊の何名かが結界を弾かれ、吹き飛ばされる。
「ゴンドー! いつも勝手に突っ走るなって言ってるでしょ!」
「そう言うなよ、ミディアが助けてくれるだろうと思ってたぜ」
「ぐぉおおおおおおおお!」
気づくとグランドグールの左腕が再生されていた。
「しかし、埒があかねーな、こいつ。どうするよ」
「あんたの馬鹿力でも、私のレイピアで放つ聖なる迎撃でも無理でしょうね。片腕やっただけじゃあ再生されるわよ」
「輝きの矢!」
迎撃部隊が俺達も戦いますと言わんばかりに矢を放つが、グランドグールには傷ひとつつけられない。
「ここはやはり隊長に出てもらうしかねーな」
「ぐぅわあああああああああああああ」
すると、先ほどと違う叫びをあげるグランドグール。
「さっきから、ぐおーぐわーうるせーんだよ!」
ゴンドーがすかさず大剣で左足を斬り捨てる。
―― ドーーーーーン!
バランスを崩したグランドグールの巨体が地面に倒れる。
「よっしゃ! これなら動き取れねーだろ! 余裕だな」
「あんたにしてはナイスよ、ゴンドー、止めを刺すわよ!」
ゴンドーとミディアがグランドグールへ飛びかかる!
次の瞬間!
……シュワアアアアアアア
「え?」
「何?」
目の前の視界が暗闇に遮られたかと思うと、ゴンドーとミディアが骨と化してしまったのである ――
「ぐわぁあああああああああ」
「ミディア副隊長ーーーーー!」
「ゴンドーさーーーーん!」
目の前のグランドグールは確かに倒れたままだった。
しかし確かにゴンドーとミディアが飛びかかった瞬間、目の前の空間が暗黒の吐霧に覆われたのである。何が起きたのか分からないまま、その場に居た防御部隊の皮膚・身体・内臓全てが腐敗し、肉体が骨と化す……。
「ど、どうなっているんだ!」
暗黒の吐霧の霧が晴れた瞬間、残りの隊員達は絶望する ――
そこには倒れたグランドグールの背後にさらに二体のグランドグールが居たのである ――
「ば、ばかな! グ、グランドグールが三体だと……一体でも最凶クラスだぞ!」
「副隊長がぁああああああーーー副隊長がぁああああああーー」
「も、もうだめだーーーーーー」
「ぐぉおおおおおおおおおおおお!」
足を再生し、起き上がろうとしていたグランドグールが、無情にも、再び絶望する隊員達へ向け暗黒の吐霧を吐こうとしていた。
「……聖なる迎撃! 旋回無双!」
ドーーーーーーン!
「……くそ……僕は家に帰って寝たかっただけなんだ……でも、これ以上仲間を死ぬところなんて見たくない!」
目の前のグランドグールの両足が同時に斬られ、一瞬で倒される!
細身の長い銀髪のエルフ、ルーディスは銀色の鎧を身につけ、気づけば双剣を構えていた!
さっきまでの眠たそうにしていたルーディスの姿はそこにはなかった。
「ル、ルーディス隊長!」
「そうだ! 俺達には双剣のルーディス隊長がまだ居るじゃないか!」
「ぐぉおおおおおおおおお!」
しかし、背後に居た二体のグランドグールも同時に暗黒の吐霧を吐こうとしていた。
―― 攻撃透過! 接続! 熱くなれ! 透過焔刃! 燃やせ、焔刃投擲!
―― 聖なる迎撃 五月雨!
一体のグランドグールには暗黒の吐霧を吐こうとした口の中へ炎を纏った短剣。
もう一体のグランドグールには顔面に聖なる迎撃の連撃が浴びせられる。
「き、きみたちは……! そ、それに貴方はク、クレイさん!」
「ルーディス久しぶりだな! その双剣の構え、親父に似てきたな!」
「あんたの仲間を思う勇気に免じて、あたいらが手伝ってやるよ!」
「俺も今回は活躍するぜ!」
そこには、戦場へと駆けつけたクレイ、ファイリー、和馬の姿があった ――




