第27話 作戦会議
「よーし、到着だ! ありがとうウリリン」
「ムームムムムームー(どういたしましてムー)」
「さて、時間がありません、森の奥の湖まで参りますよ!」
「レフティさん、了解です、行くよパンジー」
「おーけー雄也! こないだ活躍出来なかったから任せてよ」
今雄也はブリンティスの森という、ブライティエルフ北にある、魔を寄せつけない山〝ブリンティス山〟の麓にある、聖なる森へ来ていた。
ここに居るのは雄也、パンジー、レフティーの三名のみ。和馬とファイリーは来たる日に備えてクレイと戦闘訓練、リンクは療養しており、レイアも一緒に診ている。
優斗はブリンク、ライティと一緒にまほろばさんの結界準備のお手伝いをしている。
エイトからあの時言われた作戦は、雄也達が予想していないような大掛かりなものだった。
よくそこまで思いついたなと感心したが、そこは元魔導連結部隊長といったところだろうか。
ちなみに、ブリンティスの森の奥にある、聖なる湖……その湖周辺に住んでいるというユニコーンに逢いに行くのが雄也達の目的だ。〝ユニコーンの涙〟というアイテムを求めて……。
★ ★ ★
「あたいじゃあナイトメアに勝てないとでも言うのか!?」
ファイリーがエイトに食ってかかる。
「半分はあっているかもだが、半分間違ってる。ファイリーさん、でも、あなたの炎がナイトメアに効かなかったのは体感しているはず……違うかい?」
「く、くそ……悔しいがあたいの炎であいつは全く無傷だったよ。だから次こそは!」
「いや、僕は今回の作戦に参加しないで欲しいとは言っていないんだ。ファイリーさん、そして、和馬君……君たちにはグランドグールを倒してもらいたいんだよ」
「グ、グランドグールだって?」
「あれですよね、今ここに向かってるっていう強いやつですよね?」
優斗が代わりにエイトへ質問する。
「そう。グランドグールはナイトメア程ではないが、かなりの強敵になる。恐らく聖の守護部隊だけに任せるのは危険だと判断したんだよ。ファイリーさんと、和馬君が作戦の鍵を握る事になる」
「じゃ、じゃあ、ナイトメアはどうなるんだよ!」
ファイリーは納得していないようだ。エイトは続ける。
「実は、あの戦いの時、僕の凍氷刃尖矢でほんの一瞬だが、ナイトメアの黒いオーラが凍結したのを見たんだ。恐らくナイトメアの弱点は水(氷)属性と考えられる。あの時リンクさんは防御に回っていて一切攻撃が出来なかった。つまり、レイアさんや優斗君、ブリンクさんでしっかり防御を固める事が出来たなら、僕とリンクさん、雄也君で攻撃に廻れる……といった計算だよ」
「じゃあ、あの煉獄爆炎はどうやって止めるんだ?」
ファイリーがリンクの防御結界なしに止められないんじゃないかという疑問を投げかける。
「鍵は……雄也君、優斗君がちゃんと戦いに参加出来る環境を作る事……そして、煉獄爆炎を撃たせない事だね」
「え? 撃たせない?」
雄也が聞き返す。
「続きは隣でウズウズしている現隊長から説明してもらおうかな?」
エイトの横顔を終始うるうるした紫の瞳でじーーっと見つめていた魔導士風の女性エルフへと話を振るエイト。
「はぁーエイト様ーーーーー凛々しい横顔……素敵な作戦の解説でしたわーーー。はい、皆さん、自己紹介が遅れました。魔導連結部隊長のまほろばです。エイト様がこうして雄也君、優斗君、和馬君、適合者の皆さんを連れて来てくれたお陰でパズルのピースが揃いました。嗚呼ーーーさすがエイト様ーーー何もかもお見通しなのですねーーー」
「まほろばさん……あの……説明を……」
雄也が恐る恐る声をかける。
「あ、ごめんなさいね。さて、皆さんには私の準備に協力してもらいます。えー、まず雄也君!」
「は、はい!」
突然呼ばれて思わず返事をする雄也。
「君のその水鉄砲を三日間お借りします」
「え?」
思わず聞き返す雄也。
「そもそも君達の武器は強敵と戦うような武器じゃない。雄也君の場合は水妖精の魔力だけではなく、魔水晶から抽出した魔力を籠めて撃てるように改良します。それから、雄也君にはそこのパンジーさん、レフティと一緒に〝ユニコーンの涙〟を取りに行ってもらいます」
「まほろば様、ユニコーンってブリンティスの森に居る、あのユニコーンですか?」
まほろばへそう聞いたのはレイアだ。
「そう、ユニコーンは臆病故、妖精や夢みる力が強い者でなければ近づけない。恐らくあなた達の中でそれに適しているのはそこの三名です。レイアさんはリンクさんを診る役目がありますしね」
「申し訳ございません、雄也様。お任せする形になりそうです」
「なんかよくわからないけど、やらなきゃいけないんだよね?」
レイアに促され、雄也が返答する。
「さっきエイト様が煉獄爆炎を撃たせないと言った事に繋がるわ。魔水晶へ〝ユニコーンの涙〟の浄化の力を籠める事がきっと、強い負の妖気力への対抗策になるわ。加えて、人間の夢みる力、さらには光妖精の正の妖気力を籠めて……そこから結晶を作って……はぁー想像しただけでワクワクするわー」
なんかまほろばさんが上を向いて涎を垂らしているようにも見える……。
「ええと、結局、雄也達だけで、ナイトメア止めるって事だよな?」
和馬が心配そうな顔で雄也を見ている。
「そうなるわね。まぁ、そのためにはリンクさん以外のメンバーも、ナイトメアの負の妖気力に耐えてもらわないとダメね。だいたい強敵と対峙する前に結界も何もはらずに突っ込むのも相当な勇気だけど、貴方達の装備も酷いわね。優斗君に至っては、レザーウィップに……何その格好? よくそれで死ななかったわね?」
まほろばが珍しいものを見るかのように優斗を見ている。
雄也は水の都の王宮の者が来ているベストとシャツ、和馬は炎の国特製のプレートアーマーをつけていた。が、優斗は何せ夢見の回廊に居ただけだったため、人間界製の長袖シャツにジーパンのままだったのだ。
「言われてみればそうですよね……これじゃあ、布の服でボスに挑んでみたっていう縛りプレイですよね……」
と、自分なりに反省する優斗。
「という訳で、君達にプレゼントがある。メイアさん」
「はいはーい、エイト様」
エイトがまほろばお付のメイドに声をかける。メイアと呼ばれたメイドさんが大きな箱を持って来た。箱を開けるとみんなが驚く。
「エイト様、こんな高価なもの……よろしいのですか?」
聞いたのはレイアだ。
「いや、ナイトメアを倒したのなら、国を救う英雄になるんだよ? これくらい装備してもらわないと困るだろ?」
雄也には光の国特製のホーリーベスト、水鉄砲は魔水晶の魔力が籠められるよう改良が約束された。
優斗の武器はレザーウィップから鋼鉄製のスティールウィップに。雄也と同じホーリーベストが渡された。
和馬には聖の守護部隊が身につけているという、ミスリルプレート、そして……
「おい、それ! プレミアの聖剣、ブライトブレイドじゃないか!?」
クレイがエイトに驚いて話しかける。
「そう、ファイリーさんが見つけてくれたんですよね?」
「ああ、それはナイトメアと対峙したあの場所で見つけた剣だ。まぁ、和馬が装備するなら文句ないだろう?」
「そうだな……和馬君、その剣は亡きプレミアや聖の討伐部隊の強い意思が籠められている……。その聖剣でやつの敵を討ってやってくれ」
和馬は剣を持ってみる。軽めの剣だったが、聖なる力と今まで戦って来た者の強い意思が感じられる……。実際の重さより重く感じる。
「この剣が早く扱えるよう、俺頑張るよ」
「和馬君は短剣も扱える。短剣を飛び道具に使いつつ、接近戦でその剣を使うといい。ファイリーさんとの透過を併せて攻撃すれば、グランドグールにも有効かもしれない。残りの期間、時間がないが訓練を続けて欲しい」
「わかりました!」
「仕方ないな。ナイトメアは任せてグランドグールはあたい等で倒すよ」
「ありがとう、ファイリーさん。辛い役回りだとは思うが、よろしくお願いします」
エイトが改めてお願いをする。
「さて、話もまとまったところで、今後に向けて、それぞれ動いてもらうわよ。雄也君、パンジーさん、レフティはブリンティスの森へ。ファイリーさんと和馬君は早速クレイ様と訓練開始。レイアさんはリンクさんのもとへ戻っていて下さい。それから残りの優斗君、ブリンクさん、ライティは私を手伝ってね?」
「え? 俺ですか?」
「何かにゃーーー?」
「ぇえ? 私もですか!?」
「さっき言ったでしょう? 魔水晶に、人間の夢みる力、さらには光妖精の正の妖気力を籠める必要があるって。これから君達は私の実験にとことんつきあってもらうわよー? 今まで出来なかったあーんな事や……あ、あれも出来るわねーーふふふふふ……」
―― ええ、まほろばさんが、何か不敵な笑みを浮かべている気がするのは気のせいでしょうか?
★ ★ ★
「優斗達……大丈夫かなぁ……」
「私の場合、ライティ姉さんを優斗さんと一緒にする方が心配です」
レフティも溜息をついているが、違う意味合いが含まれている気がする……。
「僕達は早くその〝ユニコーンの涙〟を手に入れて戻ろう!」
「そうだね、よし、行こうパンジー」
雄也達はユニコーンに逢いに、森の奥へと入っていく……。




