第21話 魔法習得! 新たな力
「悪しき者に水の洗礼を与えん! 水爆砲!」
ドーーーン!
「出、出来たーーー! 威力はリンクの半分もない気がするけど」
「やりましたね、雄也さん! 夢の欠片の力凄いですね!」
「立ちはだかる壁よ! 燃え上がれ! 火炎球!」
ゴゴゴゴゴ!
「よっしゃ来たーー!」
「あたいのに比べるとまだまだだが、やるじゃねーか和馬!」
「彼の者に癒しの祝福を! 治癒光」
ホワワワーン
「おぉーー! レイアさんに叩かれた痣が消えていく!」
「これが回復魔法にゃー! 優斗やったにゃーー」
――え、俺達が今なにをしているかって? そうです、見ての通り〝魔法〟を習得中です、はい。
あの後、ナイトメアを倒しに行こうとするリンクやファイリーを一旦止め、『どうしても行こうと言うなら、使役の力、夢みる力をもっと有効に使った方がいい』という事になり、院長室の地下へと案内されたのである。
すると、研究室のような部屋があり、さらには地下の奥に行くと、訓練場のような広い場所に出た。そう、ここには元魔導連結部隊長と、元夢見力探索室室長であるレフティが居るのだ。
ブライティエルフを離れた後も、エイトとレフティは夢みる力の研究を続けていた。そして、エイトは、なんと夢の欠片から抽出した魔力を、妖精と契約した人間に魔力を還元出来ると雄也達に告げたのだ。
こうして、今までの戦闘で手に入れた夢の欠片を素にして、雄也、優斗、和馬へ魔力が還元された。ゲームに例えるなら、人間がMPを得て魔法を覚えるというまさに夢のような光景だ。まだ少しの魔力しか得る事が出来なかったため、契約した妖精の基本魔法なら扱えるだろうと、訓練場で実践しているところである。
「あとは実践あるのみだ。戦闘で夢の欠片を手に入れた時はここに来るといいよ。魔力が増えると覚える事が出来る魔法も増えていくはずだよ」
「魔法が使えるなんてびっくりしました」
「凄いやん! ようやく異世界の冒険って感じやん」
「確かにこれはすげーな! 戦闘重ねる度に強くなる実感も湧くしな」
三人がエイトからの案内に興奮気味に答える。
「まだそこのリンクさんやファイリーさんのような〝詠唱破棄〟は難しいかもだけど、今は覚える事が大事だからね。それから君達は透過技ももっと実践で増やしていった方がいい。リンクさんやファイリーさんにばかり頼ってはいられないだろう?」
「私は任せてもらって平気ですよー。雄也さんが使役してくれるだけでも、私も強くなれますし!」
「あたいもこの武器、火炎の剣と固有能力である火焔の刃があれば、大抵の敵は倒せるぜ」
「そうかもしれませんが、敵の強さが想定以上と考えると、透過技、特に防御系の結界や、強力な攻撃技も必要になるでしょう。そうなると透過技は重要になってくると考えます」
そういったのはレフティだ。
「特にそこの花妖精パンジーさんと、光妖精のブリンクは契約したばかりなんだろう? それなら今使える技を整理した上で、使役主との透過を訓練するべきだとは思うよ」と、エイトが補足する。
「僕は別に訓練しなくていい気もするけど……まぁ、雄也と連携した事ないからやってみるよ」
「おーけーにゃー。でも訓練したらひと眠りしたいにゃー。美味しいものも食べたいにゃー」
ブリンクが猫の手でお腹を押さえつつ訴える。
「ではブリンク様、後で私が料理を作りましょう。ライティ、厨房をお借り出来ますか?」
「レイア先輩の手料理が久しぶりに食べられるんですね! ええ、診療所の奥が居住スペースになってますから、そこの厨房を使って下さい。私も手伝います!」
「やったにゃー! 美味しいもののために頑張るにゃー!」
「じゃあ、レイアとライティさんは訓練後の料理係ですね。よろしくお願いしますー」
「では訓練は私、クレイが相手しよう。私の訓練は厳しいぞ? 何ならまとめてかかって来てもいいよ?」
「うぅ……どうしてもやらないとダメですよね?」
「げーー、クレイさんって、元隊長じゃないですか? それ、ヤバくない?」
「俺は大歓迎だぜ、ファイリーとのコンビネーションを極めたいしな」
和馬が一人だけノリノリだ。かくして、雄也×パンジー、優斗×ブリンク、和馬×ファイリーの透過技及び使役時のコンビネーション訓練が始まったのである。
★ ★ ★
「くらえー! 種子爆弾!」
「甘い! 浄化せよ! 聖なる迎撃!」
パンジーが出現させた植物より放たれた数発の種子爆弾を華麗にかわし、種子爆弾を放っていたパンジーが生み出した植物を斬り捨てるクレイ。
「今だよ、雄也」
植物の陰に隠れた雄也が突然姿を表す。
「攻撃透過! 接続! 種子水弾!」
軽い衝撃音と同時に、クレイの顔面めがけ、種子爆弾の力が籠った水球が当たったのだが……。
「で?」
「あれ?」
「うーん、種子爆弾の威力をその水鉄砲に込めたつもりだろうけど……それさ……そこのパンジーが放った種子爆弾と変わらないよ? はい、やり直し!」
ほぼ無傷のクレイにまさかの駄目出しをくらう雄也とパンジー。
「えええええーー雄也と考えたのにー」
「やっぱり駄目ですか……」
「もっと創造しないとね。ほら、あっちは上手くいってるみたいだよ?」
「じゃあ、行くよ! 凍てつく氷よ、刃となり放たれん! 凍氷刃!」
魔法を詠唱したのはなんとエイト。エイトも魔法を扱えるという訳だ。放たれた氷の刃が向かった先は……
「優斗、行くにゃーー肩に手をやるにゃー」
「よし、おーけー、防御透過、接続! 光の壁よ、我らを守れ! 光源障壁!」
ブリンクの両肩に手をやった優斗、そのまま目を閉じ叫ぶ! ブリンクと優斗の前に光の壁が現れた。氷の刃は光の壁に阻まれ、そのまま弾かれ消滅する!
「やったにゃーー! 出来たにゃーー!」
「お、やるねー優斗君、両肩に手を置いた事で確かに夢みる力を契約者へ接続しやすくなる。どこでそんな事覚えたんだい?」
エイトが驚いて優斗へ声をかける。
「いや、俺が契約した夢妖精のルナティーが支援透過をやった時がそうだったんですよ。その時温かい力のような物が身体を駆け抜けた気がしたんです」
「なるほど、夢妖精か。君はもしかすると、妖気力を感じ取れるようになるかもだよ?」
「え? それは相手の強さが分かるようなものですか?」
「そうだね、妖気力の強さは相手の強さに比例するからね。その創造を忘れないようにするといい。次は攻撃透過をやってみようか?」
「わかりました! ありがとうございます!」
―― 優斗やるなー。元々空想とか想像するの得意だもんな。俺も頑張ろう……。
「パンジー、別の技を考えよう! クレイさん、もう一度お願いします!」
「お、やる気だねー雄也! 僕も思いついた技があるからやってみよう!」
「さて、次はもうちょっと強いのを頼むよ!」
優斗の様子を見てやる気になったのか、パンジーと雄也が再びクレイとの訓練を再開するのだった。
「行くぜ! 炎陣!」
「悪しき者より我等を守りたまへ! 光源の衣」
「まだまだ! 我が剣よ! 炎を纏え! 火焔の刃」
そしてこちらは和馬、ファイリー組。手合わせしている相手は杖を持ったレフティだ。
ファイリーが放った炎をレフティが魔法で造り出した光の衣で受け止める。が、すかさず炎を纏った剣でレフティに向かって斬りかかるファイリー。レフティは持っていた杖でファイリーの素早い攻撃を防いでいる。
「光源弾!」
「おっとあぶねー。やるじゃねーか!」
「あなたもさすがです!」
「攻撃透過! 接続! 熱くなれ! 透過焔刃! くらえ! 焔刃投擲!」
「しまっ!?」
ブシュッ、ゴゥ!!
ファイリーがレフティの視界を遮り、和馬が炎を纏った短剣を投げる、ファイリーは自身の妖気力を感じ取り、刃がファイリーの背後に来た瞬間かがみこみ、見事咄嗟に顔を隠したレフティの右腕に突き刺さったのだ。そのままレフティの右腕が燃え上がる。
「よっしゃ!」
ガッツポーズでファイリーの傍へ駆け寄る和馬。
「光源弾!」
「ぐわっ!」
「おい、和馬! 大丈夫か!?」
まさかの攻撃に吹き飛ばされる和馬。腕に刺さった短剣を抜き、地面へ投げ捨てるレフティ。燃え上がる右腕をそのままに左腕で光源弾を放ったのだ。
「彼の者に癒しの祝福を! 治癒光!」
次第に炎で焼かれたレフティの腕の傷が癒えていく……。
「これは訓練とはいえ戦闘なのですよ? 油断をしたらその瞬間負けです。それに腕を燃やされた程度で勝ったと思われるのは心外ですね」
「あんた……中々やり手だな?」
ファイリーがレフティに問いかける。
「これでもレイア先輩には一度も勝てた事はないですよ?」
「へぇーあのメイドさん……そんなに……強えーのか……」
光源弾のダメージを受け、肩で息をしながら返答する和馬。
「ファイリーさん、和馬さん、大丈夫ですか? 危なくなったら治癒源水使って下さい」
訓練を見守るリンクが呼びかける。
「いや、あたいは全然平気さ。和馬いけるか?」
「嗚呼……こんくらいの傷、屁でもねーさ」
「じゃあ続き……行きますよ!」
―― 三者……いや、三組三様の訓練は白熱さを増していったのであった。




