★第19話 新たな出会い
「本来なら人間と妖精の契約は精霊の意思を形にする、〝巫女〟の力を持つ者の立会いが望ましいのじゃが、そうも言ってられんの」
族長アラーダ立会いの下、優斗とブリンクが契約をした。
猫妖精で、名前はブリンク・ライリーというらしい。
ブリンクは少し前にルナティと夢の中で話をし、優斗と契約するように促したらしい。本来対象の夢に対し夢妖精が干渉するという事は滅多にない事らしい。話を聞いた上で、優斗とブリンクが契約するに至ったという訳だ。
互いに首からロザリオをかけた。ブリンクの家系に伝わる〝光の十字架〟と言うらしい。
「ルナティがこっちに来れないんなら、ブリンクが仲間になってくれるのは頼もしいよ」
「ありがとうにゃーよろしくにゃー優斗!」
「よかったですねー優斗さんーブリンクさんが仲間になれば百人力ですー」
「先ほどの戦いを見ても、ブリンク様はかなりの実力の持ち主のようですね」
レイアがそういうと、エルフのクレイが補足してくれた。
「ブリンクは両親が元々光の国首都〝ブライティエルフ〟の軍部に所属していたのだが、二十年前魔物の襲来で死んでしまったんだ。まだ幼いブリンクを族長がこの村に連れて来たという訳さ。彼女の光妖精としての潜在能力は親譲りだな」
「にゃーー、任せるにゃーー!」
「よろしくねーブリンク」リンクが改めて挨拶する。
「これでようやく優斗も足手まといじゃなくなるな」
「うん、そうだね」
「ちょっと待て、和馬はまだしも、なんで雄也にまで言われないといけないんだよ」
「確かに優斗様は使役もしていませんでしたし、最近戦闘にも参加していませんでしたね」
レイアが痛いところを突いてくる。
「しょうがないじゃん、ルナティとあれ以来会ってないし、使役も出来ないしさ。あ、そうだよ、ルナティだよ! 夢の中でルナティ何か言ってた?」
「うん、優斗によろしくーって言ってたにゃー」
「え、それだけ?」
「それだけにゃーー」
「うーん、助けに来てくれてもいい気がするんだけど……」
優斗がそう考えていると、
「いや、それは無理……だったんでしょうな」
そこでアラーダ族長が会話に入って来た。
「え? それってどういう?」
「今この光の国は何者か――いや、先ほど倒した妖魔によると、〝ナイトメア〟という名らしいのう。そのナイトメアが作ったであろう結界に覆われておる。これが我々が、妖精界へ光を送れない理由と、夢渡りの力が使えない理由に繋がるのじゃ。そもそも夢渡りの力が使えないこの状況下に置いて、ブリンクの夢に入る事が出来たそのルナティという夢妖精はとんでもない力の持ち主、という事になる。恐らく緊急事態であるからこそ、ブリンクと優斗殿、そなたを契約させるように促したんじゃろうて」
「それだけこの国がヤバイ状況って事か……」
和馬が呟く。
「早く親玉をやっつけに行こうぜ!」
ファイリーが行こうとする。
「あ、あの……大変申し上げにくいのですが、早くこの服を直したいのですが……」
なんとそう言ったのはレイアだ。
「あまりに急展開でみんな服がボロボロなのすっかり忘れてたね」
「嗚呼、レイアさんの豊満で華麗な二つの双丘が拝めるのも今だけなんですねー。光妖精と契約した記念にその双丘にダイブさせて下さーーい」
ダイブする優斗を軽くかわすレイア。
「優斗様、分かりました。いいですよ、胸一回触るにつき、腕を一本切り落として差し上げます。ブリンク様と契約したのですから、ブリンク様に回復させてもらえば触り放題ですよ?」
「回復魔法なら任せるにゃーー」
よく分かってはないが、ブリンクはノリノリだ。
「い、いえ、レイアさん、ごめんなさい、遠慮しときます……」
「そうですか、わかりました」
「さて、行くか診療所とやらに」
「そうだね、行こうかリンク」
「はい、雄也さん、行きましょうー」
「ワシ達も同行しようぞ。今後の事もお話したいところであるから故」
一行は優斗を置いて診療所へと向かうのであった。
「い、いやーお待ちになって皆様ーー」
「あちらにおかけになってお待ち下さい」
診療所に入ると、受付に妖精人の女の子が立っていた。
「あ、ありがとうございます」
雄也が代表してお礼を言う。
「あら、族長様のお知り合いですか!? 院長を呼びますね。少々お待ち下さい」
後から入って来た族長を見て、慌てた表情で受付の女の子が裏へと駆けていった。
村の診療所という事でそんなに期待していなかったが、レンガ調の立派な造りで、中も受付があって待合室のようなソファーもあり、人間界の個人医を彷彿とさせる。幸いこの日は他の患者さんは居なかった。
「しっかりした診療所ですねー凄いですー」
リンクも興味津々で周囲を見渡している。
「村自慢の診療所じゃよ。外には妖魔もたくさんおるからの。怪我をした者や服がボロボロになった者など、回復魔法から修復魔法まで施しておるのじゃよ」
「小さな村にこんな立派な施設がある事は素晴らしいですね」
レイアも感心していた。しばらくすると先ほど受付の女性が出て来た。
「お待たせしました! 服を直す方々から順番にお入り下さい」
「失礼します、よろしくお願いします」
中に入るとナースっぽい服に魔道士のローブのような白いマント風の羽織を着た妖精人が二名出迎えてくれた。雄也、優斗、和馬、レイアが順番に入る。心配なのかなぜかリンクもついて来た。
「こ、こんなところでナース服……しかも魔導士風のローブとナース服のコラボですね! 素敵です!」
「優斗はいつも見るところが違うよな」
「順番に服を修復しますねー、って、あら? もしかして後ろに居るのは……レイア先輩?」
「あ、本当だ! レイア先輩、お久しぶりです! どうしてこんなところに!」
「え、あなた達! ライティとレフティ! お久しぶりですね! あなた達こそどうしてここに?」
突然親しげに会話を始める二名のナースとレイア。どうやら彼女達は知り合いらしい。
「私達はあの事件の後、ブライティエルフを出て、その能力を買われて、今の院長に拾われたんですよー。レイア先輩は確か、水の都に行かれたんですよね?」
「ええ、今はこちらのリンクお嬢様のお世話をしております。まさかこんなところで再会するとは……元気そうでよかったです」
レイアとナースの妖精が握手を交わす。
「へぇーー、レイアのお知り合いなんですね! 初めましてーリンクって言います!」
リンクがナース服の二名にペコリとお辞儀をする。
「うわーーお姫様初めて間近で見ましたー! 後でサイン下さい!」
「へ? サイン?」
「お姫様のサインなんて貴重ですからー! 家宝にします!」
「雄也さんーー、代わりにサイン書いて下さいー」
「えええーーなんで俺?」
いきなり話題を振られて驚く雄也。
「私こういうの苦手ですー」
リンクがわたわたしている様子を微笑ましく見つめる一同なのであった。
レイアが光妖精で、元々ブライティエルフの王宮メイドとして仕えていたという事をこの時初めて知った。なんとリンクも初耳だったらしい。リンクはエレナ王妃に今日からお世話係をする事になったメイドという形で昔紹介されたのみで、レイアの過去をあまり知らないそうだ。
診療所の看護師さん二名……、名前をライティ、レフティと言って、双子の光妖精で、ライティは、ブライティエルフの聖の守護部隊、レフティは魔導連結部という部隊にそれぞれ所属していたらしいのだが、過去ある事件をきっかけに脱退し、この村に来たのだそうだ。
ブライティエルフには軍部に一般兵士の部隊とは別に、王宮直属の特殊部隊、聖の守護部隊と聖の討伐部隊があり、研究部に人間の夢みる力や妖精の魔力や妖気力を研究する魔導連結部というものがあるらしい。こういう組織の名前を聞くと、国家として機能している大きな国なんだと再認識させられる。妖精界全体の光を管理している事もあって、妖魔や魔族に狙われる事も度々あるらしく、そういった歴史も関係しているようだ。
無事に服を修復してもらい、再会を喜ぶ二人、院長が奥の部屋で待っているとの事で、族長達も含めて奥の部屋へ入る事になった。さすがに人数も多いしね。
「院長ー、例の人達を連れて来ました。族長も一緒です」
「……入って下さいー」
若い青年っぽい声に呼ばれ、中に入る一向。
「お待ちしていましたよ。皆様、初めまして、僕がこの診療所の院長、如月エイトです」
―― え?
その顔を見て一同驚愕する事になる……。
「あの……もしかして……人間ですか?」
目の前にはこの妖精界には居るはずのない、大人の人間が立っていたのである……。




