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第165話 虹色に輝く水鉄砲

 虹色に輝く神秘的な装束を纏う女神はゆっくりと雄也達を一瞥する。遠くより、空飛ぶ魚(スカイフィッシュ)がホロホロと啼く声が神殿にも聞こえて来た。


「そう緊張しなはんな。世界創世の時代から精霊、魔族、妖精、人間……種種雑多な者達を視て来ました。わっちは不躾な態度で首を刎ねるような女神ではありません。安心しなはれ」


 どうやら女神は寛大な心を持っているようだ。女神の口調が気になるところだが、その醸し出す妖気(オーラ)は、彼女が女神だと言う事を告げている。


「……お招きいただきありがとうございます。女神様は……十六夜さんのお母さんという事になるんですか?」 


 雄也が女神に質問する。皆も同じ事を考えていたらしい。


「産み落としたと言えばそうなりますなぁー。但し、わっちが創造した精霊や巫女達は、生殖行為によって産まれた存在ではありません故、少し主らの認識とは(ちご)うとるかもしれへんなぁ」


 ――という事は、精霊と十六夜さんは同時期に産まれたという事になるのか?


「そうなんですね。十六夜さんが、千歳の巫女だと言っていた事は間違いではなかったんですね」

 

 雄也の代わりにリンクが尋ねると、女神の頭上になぜか疑問符が浮かんだ。


「はて? 十六夜は主らにそのように申したと?」

「ええ、そうおっしゃってましたよ?」


 アテナへ雄也が返答すると、なぜか女神は笑い始める。


「ふふふ……そうか。十六夜が? あの()も女でありますなぁーー。雄也殿。創世の時代に産み落とした巫女が千歳だと思いますかえ?」


「ええっと……言われてみれば……」

「あ、もしかして……」

「十六夜さんって……」


 雄也と優斗、和馬が頷き合う。人間界でさえ、西暦で二千年を超えているんだ。創世の話と言われると、矛盾している気がする。


「主らの世界では、それを年齢詐称と言うらしいのぅ! 滑稽滑稽。あの子を立てて本来の年齢は言うまい。四大巫女の年齢順で申し上げると、十六夜、ビクトリア、エレナ、水無瀬葉子の順番になりんす」


「あたいらよりもずっと昔から妖精界(フェアリーアース)を脅かす存在と戦って来たんだな」

「なりんすにゃーー! 十六夜さん凄いにゃーー」

「ちょっとブリンク! なりんすに突っ込んじゃだめよ! 女神様怒っちゃうわよ?」


 ファイリーが感心している横でブリンクが〝なりんす〟に反応するものだから、ウインクが止めに入っていた。


「アテナ様ーーそろそろ本題を!」

「おっと、そうでしたなぁ。主らは妖精界と人間界を脅かす存在を倒すためにここに来た――相違ないかえ?」

「はい、そうです。間違いありません」


 案内妖精が促し、女神が本題に入る。女神の問いかけに雄也が代表して答える。



「申してみ。主等はわっちに何を望む?」


 女神は直球で雄也達へ尋ねる。彼等は頷き合い、雄也が代表して答えた。


「もう女神様ならご存知かと思います。十六夜さんも命を落とし、諸悪の根源、如月エイトは魔王ベルゼビアを取り込み、魔人ウルティマと化しました。魔王は確か、時空の聖域クロノスサンクチュアリと言っていた。あの力に対抗する術を持たなくては俺達に勝ち目はない」

「その力が欲しいと……?」


 女神が皆の決意を確かめるかのように真実を射抜く双眸で見つめる。


「ええ。このままでは、きっと世界が滅んでしまいます」

「なるほど。わっちが主等へ手を貸さなければ、世界が滅ぶと言いたいのじゃな?」


 雄也が瞳を逸らす事はなかった。平和を願う真っすぐで強い思いは揺るがない。やがて、人間界と妖精界から来た戦士達に、女神は表情を緩ませ、優しく微笑んだ。


「数々の死線を潜って来ただけありますなぁ。いいでしょう。本来女神は調停を保つ存在であり、妖精界の事象へ手は出さぬのじゃがな。特別でありんす」


「ありんすにゃーー! やったにゃーー!」

「だからブリンク! そこ弄っちゃだめなの!」

「アテナ様、ありがとうございます!」

「さすが女神様、恩に着るぜ!」


 〝ありんす〟を気に入ったブリンクが喜びの声をあげ、ウインクが突っ込みを入れる。リンク、ファイリーが代わりに女神様へお礼を言う。


「時空の聖域へ干渉する力……既にその根源となる力は主等も持っておる。気づいている筈じゃが?」

「あ、はい。女神様。俺……夢妖精と融合したお陰で、十六夜様の力に準ずるって言われる妖読力(エナジーリード)の魔眼を開眼しまして。魔王が時空の聖域を使っていた際も此処に居るブリンクと融合した状態で動く事が出来たんです」

「うちと優斗は最強にゃーー!」


 優斗の横でブリンクが手をあげアピールしている。案内妖精が『あの子、面白いですですーー』と女神の横で羽根をぱたぱたさせていた。


「夢渡を凌駕した力が時空を渡る時渡りの力であるからの。鍵を握っておるのは契約者である人間三人、お主らそれぞれの力じゃよ?」


「雄也と和馬も?」

「え? 俺もですか?」

「俺にどんな力が?」


 優斗、雄也、和馬が各々反応を示す。


「まぁよい。三井雄也。お主にはわっちから精霊の神託を授けよう。五大精霊の力を身につけた時、創造の力(・・・・)は時空を超える。覚えておきなはれ」

「ありがとうございます!」


「お主が持つ水鉄砲を前へ」

「え? はい」


 雄也が水鉄砲(アクアシューター)を女神の前へ置く。女神が手を翳すと、水鉄砲が激しく明滅し、虹色に輝く水鉄砲が出現した。


「なっ!?」

「水鉄砲が……」

「虹色に変わっただって!?」


 雄也が叫嘆し、リンクとファイリーがその変化に目を丸くしている。水鉄砲から溢れる魔力を感じる。雄也がゆっくりと置かれた水鉄砲を手に取る。


「……軽い……。でも凄い力を感じる」

虹魔水霊銃(ラルクマギアサルト)――――五大精霊の力を兼ね備えた妖精界最強の銃でありんす。五大精霊全ての力をマスターした時、霊蒼の魔眼を持ってしても時空を超える力を手にする事が出来ますなぁ。全ては創造の力次第じゃ、三井雄也殿」




 ――創造の力次第……。




 雄也がアテナの言葉を心の中で反芻する。雄也の心理に呼応するかのように、虹魔水霊銃は七色に明滅するのであった―――― 



 大変お待たせしております。最終章、少しずつ再開致します。不定期更新となりますが、楽しんでいただけると幸いです。



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