90/142
第90話 言葉のあや
「志成ちゃん、夕飯の用意も大変じゃ。今日は外で何か食べんまい」
「はい・・・」
さすがに色々とショックだったのだろう。志成はかすれた声で返事した。
そば屋に入った。ばあちゃんは志成を絶賛する。
「志成ちゃん、さすがじゃ。志成ちゃんがおらなんだら私も大志も死んどった」
「そんな・・・おばあちゃんこそすごいです。堂々と銃の前に立って。大志もすごい。度胸もあって冷静だし、木刀の使い方もほんとの武士みたい」
「いや、はったりだよ。暴発の話、嘘だし。大体相手は親ぐらいの年の女の人だし、やりすぎだったよ」
「いや。ああするしかなかったんじゃ。3人の言動のどれ一つ欠けても誰かが死んどった」
「でも、ばあちゃんが、”殺すぞ” って言ったのが一番怖かった」
「言葉のあやじゃ」
あやの訳ない。本当に祈り殺すつもりだ。
・・・
「あ、出てるよ」
あの日から4日目の朝刊に、武田さとりと、弟の水田悟が警察に出頭したという記事が載っている。
「お疲れ様」
志成が僕の肩越しに、ぴょっ、と顔を出して新聞を覗き込む。顔が触れそうだ。
銃よりこっちの方が、ドキドキする。




