84/142
第84話 脱サラ反社
僕のコーヒー代を出そうとしたけれども、断って別々に注文した。
「おい、俺の茶が飲めねえってか?」
冗談ぽく言う男に、
「反社からの利益供与は受けません」
と答える。
「よく勉強してんな」
テーブル席に向き合って座る。
「で、お前は誰なんだ」
「先代大志です」
「・・・それ、本名か」
「はい・・・どうして?」
「賢いのかバカなのか分からんな。暴力団相手に個人情報さらして」
「自分の名前ぐらい堂々と名乗りたいです」
「おもしろいな。俺はお前の素性を訊いたつもりだったんだが」
「高校生です。休学中ですけど」
「休学? 何か悪い事でもしたか?」
「停学じゃなく、休学です。ごく個人的な事情で」
「ふうん。俺は山田。一応多田組の若頭だ」
「若頭って・・・」
「ふっ。まあ、会社で言えば取締役みたいなもんだな」
「偉いんですね」
「偉い・・・か。学校とか仕事とかで褒められたこと無いけどな」
「仕事?」
「ああ。笑われるかもしれんが、色々あって、”脱サラ” してヤクザになったんだよ。まあ、個人的な事情でな」
「そうなんですか・・・」
そんなことより、暴力団の若頭がファストフードの100円コーヒーを飲んでいる姿がなんだか新鮮だった。




