第79話 バチは当てなさらん
「でも、水田さんの訴訟ってその人がしたんですか?」
「おお、そうじゃった。私もつい懐かしくて昔話してしもうた。そうじゃ、その人が水田を訴えたんじゃ」
「何て言って?」
「それまで水田に渡していたお金が惜しくなったんじゃろうな。不当な対価だった、と返還を求めて訴えたんじゃよ。どっちもどっちじゃ。水田はそのことがきっかけで脱税も露見してな。没落した。ただ、水田の孫の女の子が利発で霊感があるともっぱらの噂だった。それで、その子が旧家の名門に嫁いだ、と聞いとった。それが武田美咲の母親。つまり、”さとり会”、の代表じゃな」
「うーん。何か同じことを繰り返してるような感じ」
「本当に人助けしてるんならいいんだけどね」
「さあてな。だが、娘が銃を持つぐらいじゃ。まともではなかろう」
「・・・ところで、”その人”はどうなったの?」
「根が強欲だからの。色々あって自己破産した。家は競売されて今はテナントビルが建っとる」
「え? じゃあ、その神様は?」
「もったいなくも、未だにお住まいが定まらん」
「何とかならないんですか?」
「私はお姑様と違い生身の人間じゃからな。神様に直接働きかけるなど、到底そんな力はない」
「その人はやっぱりバチが当たったってことかな」
「それは違うぞ、大志」
ばあちゃんがきっとした眼を僕に向ける。
「神様はそんな仕返しみたいなバチは当てなさらん。本人に反省を促し、更生させるための温かいご注意をされるだけじゃ。その人はな、履く言葉・行動が下衆だったから人から恨まれ、そのまま人間から跳ね返ってきた負のエネルギーにやられただけじゃ。ある意味、子の死も、破産も、自死と変わらん」
厳しいけれども、それこそが事実なんだろう。




