第78話 本物の、仏さま
「”祠には霊験あらたかな土地の神様がお住まいになられ、近隣住民の安全を守っておられた。そなたの親の代までは、お給仕怠りなく神様に仕えておったお蔭で、そなたの家も栄えておったのじゃ。それを目先の利にとらわれて、取り返しのつかぬことをした。祠は壊され、神様は雨露をしのぐお社も無く、お困りになっておられる”」
ばあちゃんは冷やしたほうじ茶をこくっと一口啜る。
「お姑様は仏さまに向かって手を合わせ、10秒ほど念仏を称えておられた。そして、こう言われた。”今、神様にお願いしてそなたの家に入っていただいた。床の間に雉の掛け軸を吊るしておろう。”また、びっくりじゃ。”はい、そのとおりでございます。””その掛け軸の左側じゃ。そこにお座りいただいた。そなた、これから毎朝その場所にお酒とご飯を供えよ。そして、心から懺悔するのじゃ。” それからお姑様はその人の背中をさすっておられた。ほどなくしてその人は病も癒え、家も落ち着いた」
「お姑様ってすごい人だったんですね」
「本物の仏様じゃったからな。その人はお礼に、と大金を持ってこられたが、にべもなくお姑様は断っての」
「え、そうなの?」
「”そなた、金が惜しいと思っておろう。金がぼうぼうと火を起こしている” その人はさすがに恐れ入って、それでも何かお礼を、と言うもんでな。”ならば、ここの仏様に大福餅一つ供えなされ”、と、それだけじゃ」
「へえ・・・」
「すごいですね。大志も仏様の承継者なんだ」」
僕はすさまじく恐縮し、恥ずかしくなる。




