第77話 さとり会
神仏が情報や指示を小出しにされるのには理由がある。僕たちにとって、必要十分なものを出してくださるのだ。その時点では知らない方が安全なものは後にまわしてくださる。
まずは、武田美咲の素性から調べることにした。
あっ、と驚くようだが、警察に直接訊きに行くようにというお告げがあった。
そしてその役は、志成が適任だとも。
「ただいま」
「どうだった?」
「あのね・・・」
志成がばあちゃんと僕に、警察で仕入れた情報の報告をしてくれた。
「武田美咲と当日の昼間に親水公園で会った、ってそのまま話したのね。そしたら色々と事情聴取されてね。訊くだけ訊かれて帰されそうになったから、自分も直接接触した人間だし、市民として安全にかかわる情報を知る権利がある、ってゴネたの。そしたら、種田さんが出て来てくれた」
「あ、種田さんが」
ユウの事件の時、僕と志成とで事情聴取を受けた女性警官だ。
「うん。報道関係者に出せる範囲で、って、断ってから色々教えてくれた。武田美咲は24才。県内で親と同居。職業は家事手伝い。父親は武田建設の社長。それで、母親がね」
「うん」
「宗教法人”さとり会”の代表だって」
「さとり会?」
「うん。知ってる?」
「いや・・・初めて聞いた」
「やはりそうか」
「おばあちゃん、知ってるんですか?」
「うん。多分、水田の孫だ」
「誰?」
「私のお姑さまはお弟子さんを取っとらんだが、水田っていう少し霊感のある女が、勝手に弟子と名乗ってな。お姑様は放っておけと言われたが、その内に水田は訴訟を起こされたんじゃよ」
「へえ。何で?」
「水田は先代家の敷居をまたいでお姑さまに遭った功徳か、ますます霊感が増してな。自分の家で占いみたいなことやって、お布施を貰っとったんじゃよ」
「なんか、やな感じだね」
「ああ。ある時、先祖の土地を売るべきかどうか、って、相談しに来た客があってな。水田は、”今が一番高い。売れ” と言ったらしいんじゃな。そしたらちょうど欲しがっとる買い手が現れて、相場の2倍近い値で売れた。その人はたいそう喜んでな。水田の所に当時で50万円のお礼を持ってきたそうだ」
「よかったじゃない」
「ところが、その人は土地を売った途端、不幸が続いてな。半年の内に自分の子供が2人死に、自分も肝硬変になり、医者からは匙を投げられた。水田に相談しても、”汝の業だ” としか言わず、逆に叱りつけるほどじゃ。その人も嘆き果ててあちこち聞いて、藁をもつかむ思いで私のお姑さまに相談に来たんじゃよ」
「水田さん、ちょっとひどいですね」
「お姑さまはその2人を見るなり、”売った土地に祠があったろう” とおっしゃってな。その人はびっくりじゃ。見せもせんのにどうしてそんなことが分かるのかと」
志成も僕も、話に引き込まれる。




