73/142
第73話 口つけてないペット
「あ!」
失礼します、と横から追い越そうと並んだ途端、その女の人が、ふうっ、と倒れた。
「大丈夫ですか?」
5mほど慣性で走ってしまった後、急いで駆け寄った。
「すみません、ちょっとクラクラして」
一応大丈夫そうだ。咄嗟に態勢を立て直し、地面への直撃は避けたらしい。でも、ぼうっとしてしゃがみ込んでいる。
「あの、これ、口つけてないんで、よかったら」
腰のペットボトルフォルダからスポーツドリンクを差し出す。夏のランの必需品だ。
余程喉が渇いていたのだろう。
「ありがとうございます」
と一言だけ言って、ごくごくと半分近く飲み干した。




