第69話 やるって、何を?
「これがその写真です」
僕は写真そのものは見せずに封筒に入れたそれを掲げた。
「見せてください」
「できません」
弁護士の申し出を一言の下に断った。
「個人の尊厳に関わる写真なので」
理由を明確に述べる。
「ならば、我々はどうすることもできません。娘が関わっているかどうか以前の問題ですね」
「ネットを調べましたけど、まだ流されていないようです」
弁護士のコメントを無視して僕は話を続ける。
「この画像データを持っている人間には、取り返しのつかないことをする前に改心して欲しい。それだけです」
「証拠は?」
「証拠? 何の?」
「その写真に娘が関わっているという」
「いえ、あなた方の娘さんなんて別にどうでもいいんです。犯人が誰か分かりませんが、下衆なことはやめたらいいのに、って思うだけです」
「不愉快だな」
弁護士がタバコを吸おうとすると、志成がぼそっとつぶやく。
「わたし、煙アレルギーなんです」
「私に吸うな、と?」
志成は馬鹿にするように、くすっ、と笑う。
「いえ。喫煙権を侵すなんてそんな。単にわたしがアレルギーだっていう事実を言っただけです」
弁護士は渋い顔でタバコを元に戻す。志成が不敵な笑みのままセリフを吐き続ける。
「わたしも写真観ましたけど、井上さんて美人ですね。犯人はきっと嫉妬したんですね。大方、好きな男の子が井上さんばかり見てるからとかくだらない理由なんでしょうね」
ユウの顔が鬼の形相に変わった。
「小鳥の足を送ったり、除草剤まいたり、写真撮ったり。もしかして、やや異常心理劇みたいなやり口を洗練された大人の振舞いとでも思ったんでしょうかね。精神は子供のくせに」
「ちょっと、娘を辱めるつもり?」
「はあ? わたしは自分の空想の物語を独り言で言ってるだけです。あなたの娘さんなんか知りませんし。別にどうでもいいです」
「大体あなたは何なんですか!?」
「先代くんの同居人です」
母親の質問に志成がしれっ、と答えると、ユウの反撃が始まった。
「ふ。気持悪い。この男とやってるんだ?」
「やってる? 何を?」




