第59話 次の敵は?
「ばあちゃん、次の敵は?」
僕と志成の”夏休み”が終わり、また”日常”に戻る。
”大志、ほんとに好き”
と言った時の志成のかわいらしい笑顔を忘れることができない。
忘れることができずに幾夜も悶々としたので、気を紛らすようにばあちゃんに質問したのだ。
「まあ、そう焦るな」
それが答えだった。別の質問をしてみる。
「神仏の約束を破ったら、どんなバチが当たるの?」
「志成ちゃんが気になるか?」
図星なので何も言えない。全部見透かされてるんだろう。
「大体、”こうなったら一番困る”、っていうことが起こると相場が決まっておる。もし大志が、”志成ちゃんと一緒に居たい”、と思っとるんなら、一緒に居られなくなる」
「え」
「困るじゃろ」
「うん・・・困る」
はははっ、とばあちゃんが高笑いする。
「大志は本当に素直なもんだの・・・あのな、一生女と関わったら駄目と言っとる訳じゃないんじゃ。時期というもんがあるって話だ」
「時期・・・」
「私だって大志にはいずれ結婚して貰わんと困る。そうでないと先代の家のお仏壇と神棚を子孫の代まで守っていけんからの。そうなったら姑様にも会わす顔がない。”縁”、というものはな、決まっているんというよりは作り出していくもんなんじゃ」
「縁を作り出す?」
「そうじゃ。大志と志成ちゃんは、”日本を守る”、という共通の縁のもとに一つ屋根の下で暮らしておる。志成ちゃんのお母さんは神職の家の出だ。神仏の世界にも抵抗感がない。志成ちゃん自身はいじめられたことから人の痛みが分かる優しくて芯の強い子に育っておる。志成ちゃんが、”先代志成”になってくれたらこんなありがたいことはない」
先代志成・・・なんか、いい響きだ。
「じゃがな、せっかくの良縁を浮かれて、”好き好きチュッチュッ”、と、ちちくりあってうつつを抜かしてみろ」
「ばあちゃん・・・恥ずかしい表現しないでよ」
「何言っとる。年頃の男なんぞそんなもんじゃろ。せっかく神仏が将来のために2人を巡り合わせて下さったかもしれんのに、お前が浮かれとったら、”その程度だったか”、と引き離されてしまうぞ」
「・・・」
「2人が結婚するかどうかは分からんけれども、志成ちゃんが最有力候補であるのは間違いない。ほんとに真面目に将来のために志成ちゃんとのことを思うんじゃったら、余程気を付けろよ」
「・・・はい」
「大方、志成ちゃんからそれらしいこと言われたんじゃろ」
「なんで分かるの?」
「分からいでか。男の嫉妬は見苦しいぞ。大志、誰かに嫉妬したな?」
「・・・はい」
「志成ちゃんはな、お前の嫉妬に乱れた心を安心させ落ち着かせるために、そっととっておきたい気持ちを我慢して、”好いとる”、と言ったに違いないんじゃ。女子にそこまで気を遣わせて恥ずかしくないのか。しゃきっとせんか!」
「は、はい!」
「分かったならよし」
「ちょっと走って来る」
ばあちゃんがまだ何か言っていたけれども、穴があったら入りたい気持ちだったので、そのままジョギングに出た。




