第56話 スイカのプリント
プールサイドで2人して体育座りをしていると、雲が晴れ日差しが強まって来た。
「日焼けしちゃうけど、いーの?」
「うん、いーの」
志成はごく自然体だ。
そう言えば背中まである長い自慢の(多分)髪もいつも風呂上りにドライヤーでわしわしと乾かすだけで、朝も特に手入れしている様子を見たことが無い。もちろん、化粧もしないし。服だって買い物はジャージで行き、それ以外も特段変わったおしゃれはしない。今日にしたってTシャツにキュロットで自転車を漕いできた。
「志成はおしゃれとかしないの?」
「え? した方がいい?」
「と、いうか志成ぐらいの年の女の子だったらおしゃれしたいものなのかなって思って」
「うーん、今はいいかなって感じ」
「何で?」
「えー、節約しなきゃいけないし・・・それに面倒くさいし」
「あ、何か意外」
「そう?」
「だって、志成はすごい几帳面でしょ。台所廻りは道具を所定の位置にきちんと片付けてるし、スーパー行く時は必ず献立決めてから行くし。最近家計簿もつけ始めたでしょ?」
「それ、普通だよ」
「おしゃれだって女の子にとったら普通なんじゃないの?」
「・・・もしかしたらあれかもしれない」
「あれ?」
「太ってた時、おしゃれとか意味無いって思ってたから、やっぱりその意識が強いのかも。この水着だってね」
志成は脇腹あたりのスイカのプリントに目を落とす。
「投薬のお蔭でやせた時に、お母さんがほとんど無理矢理買ってくれたんだよね。今までこういうの着れなかったから、取り戻さなくっちゃ、って。すごくうれしかったけど、自分としてはそこまで興味がある訳じゃないんだ」
「そっか」
「まあ、でもこうして大志からプールに誘ってもらえたんだから、やっぱりよかったな、って思ってるよ」
僕はちょっとだけ照れた。




