第54話 中学生じゃないんだから
夏休み2日目。
今日も昨日と同様、開園時間と同時に乗り込む。
自転車で20分ほどの県総合公園の中にある屋外プール。客層としては圧倒的に小学生が多い。その次が中学生の友達グループや小さな子の家族連れ。中・高生のカップルというのは少数派だ。
「志成。一応言い訳しとくけど」
僕は蛇足かな、と思ったけれどもやはり言わずにはいられなかった。
「あの、いやらしい気持ちじゃなくって、夏だから1回は泳いでおきたいっていう純粋な気持ちだから」
「? ああ・・・もし不純な気持ちだったとしても、女としてそれはそれでうれしーからどっちでもいいよ」
志成はおおらかににこにこしてくれた。
志成の水着はワンピースの白地だけど、フルーツのプリントがいくつもされており、透けて見えることはない。他人の視線的には安心だけれども、自分としてはちょっと物足りないという本音もある。
「これ、一応持ってきたよ」
志成がプールサイドで、くしゃっと折り畳んだ浮き輪をちらちらと振る。
「じゃあ、ふくらまそうか」
「うん、わたし、やるよ」
言いながらもう口をつけて息を吹き込み始めている。結構肺活量あるんだな・・・と思ったら、3分の1ほどでギブアップした。
「ごめん・・・大志、お願い」
「え?でも、いいの?」
「何が?」
「いや、だって・・・僕が口つけていいの?」
「ん?ああ、間接キッスってこと? そんな、中学生じゃないんだから、全然気にしないよ」
じゃあ、と僕はさっきまで志成が口をつけていた空気孔をぱくっとくわえる。息を吹き込みながら、ついちらっと志成の唇に視線を向けてしまう。
不純だな、と、自分でも思うけれども、仕方ない。
一応、男子高校生なんだから。




