第53話 その程度でいいよ
「大志、ありがと。今日はすごい楽しかった」
「うん、僕も。何か久しぶりに色んなこと忘れて遊んだ、って感じだったなー」
ちょっとあの女子3人は余計だったけどね。
志成はこれでケーキ4皿目だ。
「あ、心配しないで。一応カロリーとか計算して食べてるから。そんなすぐにリバウンドしないから」
「ん・・・別に構わないけど」
「え?」
「いや、仮にリバウンドしたとしても志成の本質が変わる訳じゃないから、僕は別に構わないけど」
あ、ちょっと深く話しすぎたかな?
「・・・でも、”恋愛の対象”としては見ないでしょ?」
「え?」
「もし。もしもだよ。仮にわたしが大志のこと好きだとして、以前の姿のわたしから告白されてもOKしないでしょ?」
「・・・ごめん、分かんないとしか言えない」
「そうだよね。わたしの方こそごめんね。こんな、究極の質問みたいなこと訊いて」
「でも僕は今の志成を知ってるから。外見、ていう意味では今の志成の姿も志成だし、以前の姿も志成。志成じゃなくたって人間の外見は変わる。僕だって変わる」
「大志が?」
「うん。あと何十年かしたら髪の毛もだいぶ抜けてるだろうし。大体うちのばあちゃんだって、昔は結構美人だったらしいけど、今はああだから」
「失礼な。おばあちゃんは今もきれいだよ」
「美人、て言い切れる?」
「いや、美人、ていうか・・・まあ、”いい感じ”、かな?」
「でしょ?その程度でいいんじゃないかな、人間なんて」
「人間なんて、か・・・」
「人間ごとき、でもいいよ」
「ふっ。なんか、そういう投げやりな言い方の方がかえってすっきりするね」
「ところで、明日の予定は?」
「今日はわたしに付き合ってくれたから明日は大志に任せるよ。どこか行きたい所とかある?」
「どこでもいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、プール」
「え!?」
ちょっと誤解を招くような選択だったろうか。




