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タイシとシナリ  作者: @naka-motoo
第3章 夏休み
50/142

第50話 いい感じだね、キミら

「よう、キミ」


 突然割って入った太い声に振り返ると、小柄な男性が立っていた。小柄だけれども、瞼がはれぼたったく、唇に切った後肉が埋まったような傷跡があり、髪は短髪で後ろだけ伸ばしている。はっきり言って、怖い。向こうのテーブルに座ってこっちを見ている男2人も怖い感じのお兄さんたちだ。


「なー、キミって東金さんとやって勝った子だよね?」


 あー、東金さんのジムの人か。どうりでボクサーみたいな顔してるんだ。


「勝ったって、あれは」


 ”マラソン”でだけど。

 志成に絡んできた女子3人はぎょっとしてどうすればいいか分からなくなっているようだ。


「その女の子はキミのツレだったよね。確か一緒に暮らしてるんだっけか」

「はい・・・一応」


 志成も目をぱちぱちさせてる。


「彼女の方もえらい度胸があるってジムのみんな感心してたよ。ところでキミ達」


 その人が女子3人組に顔を向ける。


「”友達”にしちゃ何かざわついてるからちょっと気になってね。一応教えておいてあげるけど、この”彼氏”はね、ボクシングで日本ランキング2位の人に勝ってるから」

「いや、だから・・・」


 いいから、とその人は僕に目配せする。


「ついでに言っとくけど、”彼女”の方ってすごい美人じゃん?だからその日本ランカーの人がちょっと口説こうとしたら”彼氏”がキレちゃって。まあ、試合前だったからうちの会長が穏便におさめてくれたんだけどね」


 志成も僕も、もはや言われるままにしておいた。


「行こ」


 3人はくるっと後ろを向いて振り返らずに歩き出す。


「お、”友達同士”もうちょっと話してけばー?」


 その人は追い討ちをかけた後、ふふっと笑い出した。


「いやー、女子高生をからかうのは面白いわー」

「あの・・・ありがとうございました」


 志成がぺこっとおじぎをする。


「いやいや。そーだよね。男だったら彼氏がぶんなぐっちゃえばいいけど、女相手だとねー。あーゆー女たちが一番たち悪いよねー」

「ありがとうございました」

「いや、いいよ。キミ達こそせっかくのデートなのに災難だったよね」

「デート、ではないんですけど」

「いーからいーから。2人ともいい感じだよ」


 じゃあ、と言ってその人はテーブルに戻って行った。



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