第45話 あーん
「これ、おいしいよ。今度作ってみようかな」
東京駅のデパ地下で買ったお互いの弁当を2人で品評しながら、新幹線のシートでくつろいでいた。
ラーメン通りにも行ってみたのだけれども、どの店も行列だったので、諦めて弁当を買ったのだ。
「東金さん、これからどうするんだろう・・・」
「さあ・・・・もともと社会人やってたんだから、大丈夫なんじゃない?」
「そうかな。会社辞めた理由が本当にいじめのトラウマだとしたら、また同じ気持ちにならいかな」
「いや、それは無いよ」
「分かるの?」
「うん、分かる」
僕は断言した。
「前座で東金と戦ったのは僕らだけど、本当に彼を倒したのはチャンピオンだよ」
「ならぬかんにんするのこそが誠のかんにんと皆さんよ・・・そんな気持ちをちょっとでも持って貰えたかな」
「うん、持ったと思う。志成もすごいし、あのチャンピオンもすごい。志成は言葉で、チャンピオンは拳で、東金の目を覚ましたと思う。こだわった心を救ったと思う」
「うん・・・」
言いながら志成は僕の弁当をじっと見つめる。
「その玉子焼き、1個sかないけど、味付けを勉強したいな・・・」
「いいよ、あげるよ」
「やった、ありがとう」
そう言って、玉子焼きを取っていく。
「代わりに、これあげるね。あーん」
「え?あー?」
僕は反射でつい口を開けてしまった。志成の箸が穴子を一切れねじこんでくる。つい、ぱくっと志成の箸に口をつけてしまった。
志成は、
「おいしい?」
と言って、何が面白いのか、子供の様にけらけら笑い始めた。
やっぱり、志成のこと、まだよく分からん。




