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タイシとシナリ  作者: @naka-motoo
第2章 2人目の敵
42/142

第42話 挑戦者 VS チャンピオン

「あ、東金さん、出て来るよ」


 東金の試合は今日のメイン・イベントだ。

 せっかくだから、と客席がまばらな時間から他の試合もずっと観てた。

 ボクシングの試合を生で観るのは2人とも初めてだけれども、スポーツの域を超えている競技だと改めて思った。ランキングが低い選手の試合であろうとも、殴り合う白熱と、生死すら懸かるという厳粛な静寂とが同居している。

 ただし、タイトルマッチは、”華やかさ”、も加わった。


「ひ・が・し・が・ねーっ!!」


 応援団が怒号を放つ。

 入場テーマ曲が流れ、ガウンに身を包んだ東金がシャドーをしながら花道を歩いて来る。


「あ、この曲って・・・」

「うん、EKの、”ファイティング・スピリット・マン”、だね」

「え!?志成、知ってるの!?」

「うん・・・おかしい?」

「いや、そんなことないけど、意外だな、って思って」


 僕も知ってる。世間からはズレてるけれども、”戦えよ!”、っていうロックバンドEKのデビュー曲。はっきり言って、現実が充実した人間は余り聴かないバンドだ。

 女の子の志成が聴いているのはちょっと驚いたけれども、東金なら納得だ。初めて彼の人生に共感できたような気がする。

 しかし、そんな東金のテーマ曲を打ち消すぐらい会場が盛り上がる。

 チャンピオンの入場だ。


「あ、これもいい曲だ」

「うん、Acid VoiceのFree Falling Star、だね」

「ええっ!?志成、なんでこれも知ってるの!?」

「え?え?・・・大志だって知ってるじゃない。別にわたしが知っててもおかしくないでしょ?」

「いや、そう言えばそうかもしれないけど・・・」


 Acid VoiceもEKに劣らず熱いバンドだ。しかも、よりクールな哲学性も持つ。


「なんか、僕、志成のことやっぱり余り知らないんだな・・・」

「そんな、大げさだよ。音楽の趣味が同じで良かったじゃない」


 そうこう言っている内にチャンピオンがゆっくりと歩いて来た。


大道だいどーっ!!」

大道だいどうさーん!!」

「今日もKO頼むぞーっ!」


 男性ファンの野太い声だけでなく、女性ファンの数も多い。

 目を凝らすと、チャンピオンは本当に端正な顔をしている。

 甘いマスク、なんてよく言うけれども、このチャンピオンにこそぴったりな言葉だ。

 ただ、僕は瞬時に感じた。


「この人、強いよ」

「うん、わたしもそう思う」


 志成も僕も切羽詰まった戦いを2人分こなしている。だから、本能でチャンピオンの強さを感じ取った。同時に、僕はこうもつぶやいた。


「東金が嫌いそうなタイプだな」


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