第41話 後楽園ホールへ
1か月経ち、今、僕と志成は後楽園ホールに居る。
先だって1か月前、一切合切を報告する時、僕はまずばあちゃんに文句を言った。
「何だよ、懐刀って。志成は本気で自分の喉を突くところだったんだよ!」
仏間で3人で向き合い、ばあちゃんは茶を啜りながらゆるゆると話す。
「あれは、お姑様が婚礼の時に白無垢で実際に身に付けられた懐刀だ。私も結婚式の時に貸してもらった。懐刀の意味ぐらい知っとろうが」
「・・・女子が誇りを傷つけられそうになった時、自害してでもそれを守れ、っていう戒めだよね?儀式上のものでしょ?」
「何を言うか。その時、東金は普通の精神状態でなかった。刀が無かったらどうなっとたと思う?」
「はい・・・確かに」
「ただ、持たせるようお告げがあった時、私も正直お守りの意味だと思っとったが、まさか本当に鞘から抜くことになろうとは・・・志成ちゃんよ」
「はい」
「志成ちゃんはすごい。やはり神仏の見込んだ女子だ。志成ちゃんこそ男女同権やらを語る資格があるぞいね」
「いえ、そんな・・・」
「ばあちゃん。2人目の敵は終わったんだよね?」
「さあな。とにかく、東金の試合を見届けておいで。そしたら分かるはずだ」
「はい」
2人して声をそろえた。
「ただし、日帰りじゃぞ。2人で泊りがけなんぞ許さんぞ」
いや、もちろんです。って・・・かわいそうに、志成が顔を真っ赤にしちゃってるじゃないか。




