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第36話 Run
なめていないつもりでもやっぱり僕はボクサーの能力に対する認識が甘かった。僕らはあの志成が全力でこぐ自転車でも追いつけない程のスピードで走っている。しかも、もう既に3kmは走っている。
いかに疲れているとはいえ、いわば元走りのプロであった僕に東金は10mほどの間隔を引き離されずについて来ている。
3人の恰好がまずかった。僕はランニングの服装だし、東金はロードワーク用のアンダーアーマーのスウェット。自転車に乗る志成は買い物着のジャージだ。
スピードが異常なことを除けば、誰も違和感を持たない服装なのだ。
志成も何回か、
「助けて!」
と叫んでいるが、車の音にかき消される。僕は逃げる道を選ぶことすらできなかった。なぜなら信号が赤になればそこで左折するしかない。止まれば東金に捕まるし、信号無視して進めば車に轢かれる。結果、延々と幹線道路沿いの左側歩道を走り続けている。志成がどこかへ助けを求めに行ったって、その間に僕が捕まれば殴られる。場合によっては殴り殺されるだけだ。




