第3話 僕の学校
「大志、これ弁当な」
「ありがと」
ばあちゃんはその後珍しく質問してきた。
「大志今日は何時ぐらいに帰って来る?」
「え・・・と。始業式の後、新しいクラスのHRとオリエンテーションを午前中やって。弁当食べた後は学祭の実行委員の集まりがあるから・・・・3時過ぎぐらいかな」
「分かった。ちょっと話があるから」
「何?」
「帰って来てからな」
ふーん、と特に気に留めず自転車で高校に向かった。
「よ、大志。同じクラスだったぞ」
「ああ。また一年間よろしくな」
「受験だな」
「まあね」
新クラスは3年2組だった。結局、相棒ともいえる樹とは3年間同じクラスだ。
教室の座席に荷物を置いて、始業式のために体育館へぞろぞろと向かう。
僕はこの高校が、まあ好きだ。志望校だったし、部活はやっていないけれども1年の頃から学祭の実行委員会に入り、友達付き合いの範囲もそれなりに広い。
それにうちの高校は荒れてる訳でもなく、ごく平和だ。誰かの悪口を言ったり派閥ができたりはあるけれども、総じてみんな、”善人”、だと思う。
でも、今日は2年間で一度も見なかった光景を目にした。
「大志、5組にかわいい子がいるの知ってるか?」
「知らない」
「広田沙耶」
「フルネームか」
「ほら、あの辺にいるはずだよ」
樹が視線を向ける3年5組の方を見ると、けらけら笑ってる女子が何人かいる。
「あ、今ちょっと横向いて笑ったこだよ」
「ふーん」
遠くて、かわいいのかどうかよく分からなかったけれども、その広田さんは強烈に印象に残った。
”パン”、と前の女子の後頭部をはたいたのだ。
「樹」
「う・・・ん」
「今、なぐったぞ」
「いや・・ふざけて軽くはたいただけだろ?」
はたかれた女子は振り返りもしない。そのまま動かずに前を見ている。僕らにはその子の髪を背中辺りまで伸ばした後ろ姿しか見えない。広田さんがまたはたいた。
”バン!”
「おい」
「うーん」
叩かれた女子はやっぱり微動だにしない。広田さんは周囲にくるっと顔を向けて笑っている。周りの女子たちも声を潜めて笑っている。
「ちょっとヤな感じじゃないか」
「確かに・・・・」
「広田ってほんとにかわいいのか」
「顔は、ね」




