第29話 representing sweetheart
水曜。AM8:00ちょうどにアランに入った。
「おはよーございます」
「おー、大志くん。何、何?こんな時間に」
「いえ、ちょっとバイトのシフトが変更になって」
マスターと話しながら奥のテーブルに座り、志成がオーダーを取りに来るのを待つ。
「いらっしゃいませ」
志成は僕に対してもにこにこと接客してくる。
「ホットコーヒー」
「モーニングじゃなくていいの?」
「さっき一緒に朝ごはん食べたばかりでしょ?」
多分、相手に聞こえたと思う。
彼は何度かこっちを振り返ってる。僕も彼に聞こえるように言ったのだから。
念のため、志成に目配せで確認する。
”あの人?”
”うん、あの人”
志成も目配せで返す。
志成が行った後、持ってきた文庫本を読むふりをして彼を観察する。
レジに一番近い席に座っている。
年齢は志成が言う通り、20代前半と言ったところだろう。痩せていて小柄だ。
アンダーアーマーの黒のスウェット上下なので筋肉のつき具合までは分からないけれども、顎の線がとてもシャープだ。顔はけっこうかっこいいと客観的に見て思った。イケメンという表現は当てはまらないけれども、ちょっと惹かれる女の子がいてもおかしくないような容姿だ。
そして、一番の特徴は、志成へ常に視線を向けていることだ。レジ脇の座席にいるのも志成が近くに来る頻度が高いからだろう。
そんな彼は時折僕の方も見る。一瞬、目が合った。思わず目を背けてしまうほど、その眼光は鋭かった。たった一瞬のことなのに、”凝視された”、という感覚が残る。
ちょっと危ない人だ、と本能で判断できた。




