第24話 彼女の、人生
昼をスーパーで食べながら、5組の様子を田中さんから聞く。
志成は今朝、カフェラテを頭から浴びせられた。
広田さんと仲のいい女子が、
「あ、ごめん!」
と言ってコンビニで買って来たカップのカフェラテを、志成の頭頂部からかぶせた。
「手がすべった!ごめん、ごめん」
そんな手のすべり方をする訳がない。ホットだったが、志成は、熱い、とも何とも言わず、そのままの姿勢で座ってたそうだ。
「謝ってるんだけど!・・・」
ハンカチで拭こうともしない志成を見て怖くなったのだろう。その子は逆ギレするような雰囲気だった。
「いいよ。手がすべったんでしょ」
テキストを出し始めた。
制服の胸元からスカートの裾まで濡れているが、志成はほったらかしだ。そのまま1限目が始まった。
古典教師は志成を見て、
「拭いて来なさい」
と言ったけれども、
「いえ、いいです」
志成は何の問題も無いように答える。
「周囲が不快だと言ってるんだ。体育のジャージがあるだろう。着替えて来なさい」
「じゃあ、ここで着替えさせてください」
「何!?」
「わたしはもう日数が無いので、せめてきちんと全部授業を受けたいんです。聞きながら着替えます」
そう言って志成はがたっ、立ち上がり、制服の上着を脱いだ。
その下は下着ではなくTシャツだったけれども、居合わせたクラスの人間には衝撃的な光景だった。ジャージのズボンを穿き、濡れたスカートを下ろした。
カフェラテをぶっかけた子は真っ青な顔で俯いていたそうだ。
こんなことを1週間繰り返して、もう金曜の昼だ。今日の午後の授業が終わったら僕と志成は学校を去る。




