ゲームで人生が破綻していく
その頃、表彰会場でスタンバイする市長と近田はサバゲー大会の様子をモニターしながら話し込んでいた。
「近田さん。あたなのような優秀な方がこの市のご出身とは存知上げませんでした」
「市長、優秀だなんて・・・たまたま起業してユーザーの方々のご指示を頂いただけ、ってことですよ」
「いや、素晴らしいですよ。それに近田さんは信念、というか、揺るぎない経営哲学を持っておられるそうですね」
「はい。オンラインゲームを通じて、人類の知性を呼び覚ますというのがそれですね」
「社是ですか」
「いえ、むしろ私個人の願望、いや、野心と言ってもいいでしょうね」
「野心・・・」
「私が千年も万年も生きられるのなら別ですが、どんなに長くても寿命は100年です。ということはあと60年ほどしかない。60年で人類を救うためには人間の長所を伸ばすだけでは間に合わないんです。短所を潰す作業を同時にしないと」
「と、いうと?」
「優秀な人財はより伸ばし、ダメな人間は切り捨てる」
「・・・・」
「リアル人生ゲーム、やってみられました?」
「・・・はい」
「どうでした?」
「そうですね。正直仕事が忙しいものですから、あそこまで緻密で本格的な内容だとやってる時間はないですね」
「そうでしょう。あれにハマるのはダメな人間ですよ」
「はい?」
「ダメな人間はあのゲームにハマり、実際の人生も破綻していく。ただし、せっせと課金して私の会社は収益を上げる。私はその資金であんなゲームとは無関係の優秀な人々に投資して人類を救う」
「・・・民間の営利企業でいらっしゃるからきれいごとでは済まないというのは、私も子供じゃないから分かります。また、理想のためにはプロセスを腕力で整えようというのも、一定の所までは忍耐できます。だが近田さん。今のあなたの話は度が過ぎている。どうして私にわざわざあなたの会社が不利になるようなことをおっしゃるんですか」
「市長、先代さんて知ってますよね」
「え?」
「随分仲がいいようですね」




