ヤクザが来たぞい
「大志、ヤクザが来たぞい」
風呂上がりにばあちゃんから言われ、慌てて表に出ると、門の外に多田組の山田さんが立ってタバコを吸っていた。
「山田さん、お久しぶりです。せめて玄関口にでも」
「・・・お前のばあさんから、ヤクザもんが敷居跨ぐなって一喝されたんだよ」
「多田組の若頭だって名乗ったんですか」
「そんな訳ねーだろ。俺の顔を見るなりそう言ったんだよ。お前のばあさん、ありゃただモンじゃねえだろ」
「・・・もしかしたら人間ですらないかもしれません」
「あながち嘘とは思えん」
僕と山田さんはそのまま寒気の中で立ち話した。
「武田さとりを自首させたの、お前なんだろ」
僕は答えずに苦笑いする。
「まあ、何をしたのかは訊かんが。ヤクザに住所調べられていい気分はしないかもしれんが、どうしても教えといてやりたいことがあってな」
「何です?」
「マシンガンが1丁、素人に売れたぞ」
「え?」
「・・・多分、お前に関わってくるはずだ。お前、コスプレサミットで何かやるつもりなんだろ」
「どうしてそんなこと・・・」
「隠さなくっていい。コスプレサミットに出張る屋台のクレープ屋とかたこ焼き屋な。テキヤ系おヤクザが仕切ってて、仲のいい幹部から聞いたんだよ。イベントの参加者に頭のおかしい奴が1人混じってるってな。エアガンで撃ちあうゲームやるんだろ」
「はい。サバイバルゲームです」
「うちの上部組織の若い奴らがな、金欲しさに売っちまったらしい。300万でな」
「300万?」
「分かるだろ。いくらおかしなマニアだって、借金もしなきゃ出せない額だ」
「・・・例えばアメリカの企業とか」
「悪いけどそれは訊かないでくれ。前にも言ったが若頭って言ったって、中間管理職に過ぎない。”守秘義務”があるからな。
思わず、吹き出してしまった。
「笑うなよ、まったく・・・ばあさんと言いおまえと言い、いい度胸だよ。だが、銃は笑い事じゃねえ。超軽量超小型で見た目はおもちゃにしか見えねえ」
そう言いながらタバコに火を点けて一服し、灰をエチケット灰皿に落とす。
「殺傷能力は低い。だが、まぎれもない本物のマシンガンだ。軽くて扱いやすいんで、対テロ用に導入してる外国の警察や軍隊も多いらしい。1秒間に20連射だ」
「・・・」
「トゥルル、ってな。針みたいに突き刺さるような弾丸で、顔を狙って撃つと効果的らしい。目くらましのついでにテロリストはほんとに失明するんだ」
「分かりました。ありがとうございます。でも、なんでわざわざ教えにきてくださったんですか?」
「・・・何でかな。まあ、マシンガンを、ぽん、と買える金持ちよりも、丸腰のお前が勝った方がおもしろいからかな」
不思議だ。見た目も立場も違うけれど、この人には樹っぽい雰囲気を感じる。




