サバゲーとやら
幕の内も過ぎて早々に林市長から呼び出された。
「Natural Ageが動いてきましたよ」
ばあちゃん、志成、僕の3人は市長室のソファで身構える。
「動き、じゃと?」
「はい。市民プラザの隣に国際会議場があるでしょう」
「はい」
と、僕と志成がうなずく。
「最終日にそこでサバゲーの大会を開きたい、とスポンサー契約の条件をつけてきました。会場のセッティングも全部Natural Ageに任せてくれと」
「サバゲーとは何じゃ?」
「サバイバルゲームのことだよ」
ばあちゃんに僕が答えてやる。
「サバイバルゲームとは何じゃ?」
「え・・・と・・・」
「模擬戦のことですよ」
志成が上手い事一語で解説してくれた。
「模擬戦か。そしたら空包なんかを使うんじゃな」
「空包、っていうか、ゴム製の小さな弾丸を使うんだよ。エアガン・・・空気包で、本物じゃないけど弾は出るっていう」
「ふーん。近田は何か仕掛けてくるつもりじゃな」
林市長はばあちゃんのつぶやきに答えるように続ける」
「サバゲーの参加条件はたった1つ。”コスプレすること”だそうです」
「コスプレしてサバゲーやるんですか?」
僕が軽く驚いてみせる。
「ええ。コスプレサミットの目玉イベントにするつもりらしいですから。サバゲー経験ゼロのコスプレイヤーに参加して欲しい、っていうことで、銃は当日貸し出してくれます。自前で持って来てもOKです」
「何のコスプレしてもいいんですか?」
志成が市長に訊く。
「ええ、何でも。志成さんが似合いそうなのは・・・例えば、魔法少女でもOKです」
市長の言葉に志成は顔を真っ赤にする。市長は微笑して続ける。
「一応最優秀コスプレイヤーを決めるんですが、サバゲー参加者に限るそうです。表彰式はサバゲー終了後会場内で。近田CEOと私の会見もその時に行います。会場の混雑を避けるため、式に出られるのもサバゲー参加者とマスコミに限られます」
ばあちゃんが渋い顔をする。
「つまり、私らが近田忠に会うためにはサバゲーとやらに出ないといかんということじゃな」
「はい」
「市長のお力で近田さんに会わせていただくことはできないんですか」
「志成さん。現実の市長にそんな権限はありませんよ。今回も市は、協賛・バックアップするという立場であって、本来は民間のイベントですから。それと、申し訳ないんですが、”何か起こりそうだから”と言って、コスプレイベントに警察の警備を依頼する権限も私にはありません」
「つまり、自分の身は自分で守れ、ということじゃな、市長」
「それだけではありません。イベント参加者は一般市民の皆さんです。ましてや県外・海外からのお客様もおられます。先代さんたちがやろうとしておられることが、日本を護るためだということはよく分かっています。ですが、市長としてはまず市民、それとこのイベントに関わる方々の安全を確保したいのです」
「市長、分かった。このばばが命に代えても神仏に祈願しますわい」
「・・・分かりました。私も神仏のご意向に従います。でも、市長としては、これはやっぱり背任、なんでしょうね」
ふっ、と市長が微笑した。




