第13話 彼女の家
加ノ上さんの家は思ったよりも近かった。中学時代の校区としては3ブロックほど離れているのだけれども、自転車で20分程で着くことができた。
同じ市内だけれども、この辺りにはほとんど来たことがないと思う。古びた小規模のショッピングセンターがあり、その周辺は一戸建て住宅が並ぶ。統一された住宅街ではなく、木造の古い家と、やはり木造だが、ここ10年前後の間に造られた、新しい建築工法による家々とがモザイクのように連なっている。遠慮なく言えば気分のいい風景ではない。
加ノ上家はショッピングセンターからはやや離れた、幼稚園のすぐ隣にあった。土曜日だけれども、預かり保育、というのだろうか、園庭には数人の園児と先生が楽しそうに遊んでいる。
加ノ上家の2階建てのおそらく新工法を使ったであろう新しい一戸建てからは園庭が真正面になる。自転車をガレージの脇に停め、深呼吸してからインターフォンを押す。
「はい」
加ノ上さんの声だ。
「先代です」
「はい。今、開けるね」
10秒程間を置いて、ドアが開く。
白い襟と袖にワンポイントの花の刺繍をあしらった薄い紺のストライプの入ったブラウスに、黒のデニム。グレーのソックスを履き、白の柔らかな生地のカーディガンを羽織った彼女がいた。
「おはよう」
「おはよう、先代くん。今日はありがとう」
自分の家なのに緊張している様子が伝わって来る。今日は僕が来ることを両親に何と説明したのだろうか。単に友達が来るとだけ言ってあるのだろうか。
「あの・・・親には今日の話の内容のあらましは伝えたから。いきなり本題に入って貰って大丈夫だよ」
そう言う彼女に僕はやはり伝えておかないといけない。
「最初の敵は加ノ上さんのお父さんだった」
「え?」
「ばあちゃんからそう言われて出てきた」
僕は彼女の表情の変化を読み取ろうとした。けれども、ほんのわずかに眉を顰めただけで、意外に反応が薄かった。
「そう・・・そうかもしれない」
「え?どういうこと?」
声のトーンを落とし、彼女は続ける。
「多分、父は先代くんをすごく不快な気分にすると思う。わたし、できるだけフォローはするつもりだけど・・・」
「怖い人なの?」
「ううん。怖いには怖いけど、それよりも、すごく・・・・陰険なの」




