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タイシとシナリ  作者: @naka-motoo
最終章 最後の敵~決戦
127/142

CEOに指導をくれてやる

 前日のアポなのに、


「先代のばばです」


と言っただけで市長はスケジュールを空けてくれた。

 双輪市役所の1F。住民票や戸籍を取りに窓口で待つ人たちを見ながら、ばあちゃんと僕はエレベーターで市長室に向かう。

 6F。商工労働部なんかと同じフロアーの一番隅に市長室はあった。

 秘書? なのか分からないが、中年男性が市長室に僕たちを通してくれ、彼はそのまま執務に戻った。


「先代さん、ご無沙汰しております。ご主人のお葬式以来ですね」


 そう言って市長は入り口まで僕たちを出迎え、応接テーブルに座らせてくれた。そのまま僕たちに急須でお茶を淹れてくれた。


「市長自らお茶出すのかい」

「ええ。わたしのお客さんですからね。職員もそれぞれ執務がありますし」

「これは私の孫ですわ」

「先代大志です」

「市長の林です。おばあ様には大変お世話になっております」


 50代半ばの中年男性なんだけれども、テレビで見るよりはるかに若い。それと、笑顔が嘘っぽくないので好感を持った。


「市長。あんたの父親が死んで何年になる」

「20年ですね。私もとうとう父の年齢を超えましたよ」

「あんたが初めて姑様の所へ来た時、高校生じゃったな」

「ええ。ちょうど大志さんぐらいの時分でしょうね。父が最初の選挙に出る時です」

「本当ならあんたの父親は国会議員になる運は無かった」

「ええ。分かっています。父は国をなんとかしたいという思いで、”先生”が不思議な力をお持ちだと噂で聞き、出馬の相談に行ったんです」

「”先生”はよしなされ。姑様も私も、市長の一市民に過ぎんからの」

「まさか。本当は人間の呼称で及びするのすら畏れ多いぐらいです」

「あんたの父親は心底国を良くしたいという真心を持っておられた。じゃから姑様は”運”を授けたんじゃ」

「はい。まざまざと覚えています。対立候補が悉く汚職で自滅して父が当選。”先生”のお力が恐ろしいくらいでした」

「そうじゃったな。神仏は必ず正しい者の後押しをなさる。要はそれを待てるか待てんかの話じゃ」

「ところで、今日のご用向きは」

「うん。それは私の孫が話しますわい」

 

 ばあちゃんに促され、失礼します、と言って、僕はテーブルの上にノートPCを取り出し、市長に画面を見せる。


「市長。3月に市民プラザでコスプレサミットが開催されますね」

「ええ。今年で5年目。地方開催のイベントとしては日本でも5指に入る規模に成長しました。今や海外からも大勢の方の参加をいただいてます」

「スポンサーは足りてますか?」

「実は、開催期間を1日から3日間に延ばすこともあり、募集中です。正直、もう一息ですね」


 僕は、タ、と画面を変える。


「この企業、ご存知ですか?」

「Natural Age・・・リアルなオンライン人生ゲームをやってる会社ですね。ええ、名前だけは」

「CEOは双輪市の出身です」

「え、そうなんですか? や、これは不勉強でした」

「市長、この企業にスポンサーの打診をしていただきたいんです」

「Natural Ageにですか? ですが、世界のトップ企業が地方自治体のイベントに乗るかどうか・・・」

「それは大丈夫です。打診さえしていただければ、必ず受けるよう仕向けます」

「仕向ける?・・・大志さんが?」

「はい。それで、1つだけ条件を提示して頂きたいんです」

「何でしょう」

「CEOと市長の会見をイベント会場で行いたいと」

「事情をお訊きできますか?」

「すまんが、市長にも全部は言えん」


 ばあちゃんが、すぱっ、と答える。


「ただ、この会社とシーイーオーとやらには、”指導”をくれてやらんといかんと神仏が仰せなのじゃ」

「・・・こちらも1つだけお約束ください。決して市民に危害を及ぼさないよう」


 市長の言葉に、ばあちゃんが僕に向けて顎をしゃくる。

 僕は姿勢を正して答えた。


「神仏に誓って、僕が市の人々を守ります」

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