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タイシとシナリ  作者: @naka-motoo
第7章 最後の敵~決戦前になすべきこと
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社員全員、敵

”法人”というつかみどころのないものに途方に暮れそうになる。CEOである近田忠が当然中心人物だけれども、相手は彼1人ではない。全世界に散らばる8000人の社員が敵なのだ。そして、両親ですら近田忠と連絡が取れない以上、接触できるところから攻めるしかない。


「志成、Natural Age の日本拠点ってどこ?」

「神保町の東京営業所」

「神保町?」

「うん」

「そりゃまた渋い所に・・・」

「しかも日本法人とかじゃなくって、あくまでも営業所だから」

「え、じゃあ、日本にいる取引先と契約交わす時とかどうするんだろ」

「一応営業所長かCEOの副印持ってるから、CEO名の契約書作って、それで締結できるみたい」

「志成、詳しいね」

「経営コンサルのブログに載ってた」

「今時、情報って筒抜けなのか」

「わたし考えたんだけど・・・東京営業所に直接コンタクトするのはあまりよくないかも」

「どうして?」

「だって、どんなに考えたって、いちユーザーが連絡を入れる理由が思いつかないもん。却って警戒させると思う」

「じゃあ、ゲームに関するクレームとか質問とかって言えば?」

「全部アメリカのオンラインセンターでやってるから不自然だよ」

「そっか・・・じゃあ、何かアイディアでもある?」

「うん。あのね、ライバル企業に当たったらどうかな、と思うんだ」

「ライバル企業?」

「そう。それも規模や収益面で同等のライバルって意味じゃなくて、零細だけど脅威になり得るコンテンツを持ってるっていう」

 

 志成がスマホを見せる。


「これ見て」

「? ”うつボツ”?」

「うん。オンライゲーム。㈱Anti Bullying が作った、うつ病治療のシュミレーションゲーム。代取と取締役2人だけの会社。登記上の本社は東京の巣鴨。代取の実家が本社社屋」

「え、え、何それ?」

「要は代取と取締役が実家の一室にこもって、つまつまとゲームを開発してるってこと」

「へー」


 ちょっとだけサンプル画面を動かしてみる。うつ病患者のコミュニティがゲーム内にできてるという解説。それで、会社でのパワハラやセクハラ、過度のノルマ主義等、うつ病の原因となる相手を敵とみなして立ち向かっていくという内容だ。パワハラ上司やセクハラ上司がデフォルメしたモンスターとして描かれている。


「まあ、斬新だよね。でもこれが関係あるの?」

「Natural Age はM&Aで㈱Anti Bullyingを買収しようとしたの。でも失敗した」

「あ、そうなんだ? でもそんな2人だけの会社をなんでNatural Ageみたいなメガ企業が」

「だって、うつ病をゲームにしようなんてエキセントリックな発想だよ。一つ間違えば危ない人たちだけど、やっぱり天才だと思うじゃない」

「なんでM&A失敗したんだろ」

「Natural Ageが上から目線だったんだろうね。コンサル使って、”御社にはメリットしかないでしょ?”なんて交渉したら、”お前らみたいなリア充企業と組めるか!”って一蹴されたらしいよ」

「なんかおもしろいね」

「Natural Ageも意地になってネットでAnti Bullyingを叩いたりして。でも、言うこときかないみたい。逆にAnti Bullyingの知名度が上がっちゃって」

「志成はどうやってその情報を?」

「Anti Bullyingの代取が個人的にやってるブログがあって、そこにそれらしい愚痴がいっぱい載ってた。このブログが会社の広告宣伝部門も兼ねてる」

「なるほど。ていうか、よくそんなブログ見つけ出したね」

「大志。わたしは、ずっといじめの中で生きて来たんだよ」

「え? う、うん」

「いわばわたしはいじめられのプロ。Anti Bullyingって直訳で”反・いじめ”ってことだよ。わたしがチェックしない訳ないでしょ?」

「・・・なるほど」

「一応、アポ取ってみたんだ」

「え!?」

「最初会社にメール送ったら、”乞う写真添付”って返信があった。で、写真送信したら、”いつでも大歓迎(^▽^)/”って返って来た」


 大丈夫かなあ・・・

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