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掛け軸、見せてください
もうやめようかと思った15軒目。インターフォンに出たのは女性の声だった。
『はい、どなたですか?』
「突然すみません。忠さんという方が居られたら話をお聞きしたいんですが」
『ちょっとお待ちください』
10秒ほどして、がちゃっとドアが開く。見ようによっては40代くらいにも見える女性だ。
「忠は息子ですが、あなたは?」
「先代大志と言います。高校生です。忠さんのことで色々とお話をお聞きしたくて」
「どういうことですか?」
「ええと・・・」
不思議なことに近田忠の母親は、志成に初めて会った時の感覚を思い出させた。だから僕は、包み隠さずにすべて話すことにした。
近田忠の母親は、僕が一方的に話すのを黙って全部聞いてくれた。先代家の大徹さんのことも、ひいばあちゃんのことすらも。その上にご主人にも話を聞かせてから忠のことを教えるかどうか判断したい、と言った。まるで志成と同じだ。忠の母は条件を出した。
「その大徹さんの掛け軸を見せてください」
と。
意図は分からないけれども、僕に選択権のあろうはずが無かった。だから、先代家に来てもらって、忠の父と母に話すことになった。




