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”お帰り” って一言が
「志成、何軒回れた?」
「バイトと買い物の間に2軒。2軒ともお年寄りの1人暮らしで、おばあさんから昔話聞かされちゃった」
「へえ・・・僕も2軒。やっぱりお年寄りの1人暮らし」
「うーん。近田忠さんて32歳だからご両親はせいぜい60歳前後でしょ。だったら昼間家に居る方がおかしいのかな」
「でも、電話だとどの家も知らない番号だと出てくれないしさ。振り込め詐欺撃退モードの電話もあるから。直接行くしかないじゃない」
「じゃあ、夜に行ってみる?」
「そうだなあ・・・」
「わたしが小学校の時とかさ」
「うん」
「学校が辛くてしょうが無かったけど、家に帰ったらお母さんがご飯の準備しながら、”お帰り” って言ってくれて。その一言で生きてるって感じだったな・・・」
「そっか。僕も学校から帰ったら、ばあちゃんが居て、母さんが居て、かすみがいて。それで父さんが仕事から帰ってきたらみんなでお経上げてから晩ご飯食べてた」
「いいね、すごく・・・日本じゃ今、そういうの流行らないのかな・・・」




