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第103話 毎日が命懸け
大阪出張から戻ると秋は急速に深まっていった。季節の移り変わりとともに戦ってきた記憶をたどる。
ボクサーと戦ったり、銃口を向けられたりもしたけれど、あまりドラマティックな印象はない。思い返してみたら敵はモンスターでもエイリアンでもない。ごく普通に日常を暮らしていたはずの一般市民ばかりだ。でも、わずかな異常や狂気を薄いウーロンハイのように積み重ねた結果、異常が日常となり、その悪因縁が他者を巻き込んでいく。そうして静かに日本が暗い闇に沈み込んでいくのだろう。
僕と志成の戦闘には日常との連続性があった。正直、死んでもおかしくない局面も多々あった。けれども、僕と志成は、
「行ってきます」
と学校にでも出かけるような気軽さで戦闘をくぐり抜けてきた。
いや、待て。
”気軽” なんてのは僕の失言だ。志成にとって、物心ついてから、およそ学校というのはこの世の地獄だった。志成の登校は毎日が命懸けだったのだ。異常の積み重ねが日常となっていた志成にとって、この戦いはむしろ平凡な日常くらいの感覚なのかもしれない。戦闘における僕のパートナーは、志成でしかありえなかったのだ。神仏が彼女を選んだのは誠に深い意味があったのだ。
むしろ僕は、この志成という少女に、2度も ”告白” されたことの方が衝撃的だ。




