第101話 背中の大きなどうにもならない荷物
志成をおんぶしたままエレベーターで1階に降りると、品のいい女性と入れ違いになった。
多分、奥さんだ。
なんてきわどいタイミングだ。
マンションを出ると通天閣が見えた。とりあえず、近い駅まで歩こう。ホテルになんとかたどり着かないと。
「おー、兄ちゃん。かっこええぞー」
酔ったサラリーマンから声をかけられた。みんな背中の荷物に興味があるらしい。荷物が、口をきいた。
「大志・・・」
「あ、起きた? 大丈夫?」
「うん・・・なんか、さっきのおじさんにキスされそうになった」
種田のことだ。
種田め。僕なんて志成にまともに触れたことさえ無かったのに。
まあ、今はおんぶして密着してるけど。
「大志もあの女子にキスされそうになってたから、おあいこだね」
「怒るよ、志成」
この酔っ払いめ。でも、さっきから気になってること言ってみようかな。
「志成、ごめんね」
「ん? なに?」
「その・・・志成のこと、あんな呼び方して・・・」
「あー。別にいいよー。だってわたし、リバだもーん!」
けらけらと笑う。笑い上戸か。と思ったら、突然泣き声になる。
「ど、どうした? やっぱり辛かった?」
「・・・わたし、こんなにお酒弱かったら、大志と三三九度できないよー!」
「え!?」
三三九度って、それって、つまり?
「酔ってるんだよね・・・?」
返事の代わりに寝息が聞こえて来た。




