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七つの子  作者: 九JACK
幸の章
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幸の章-1




 この章は虹の瀬ソラ視点です。





 日曜日。

「こんにちは」

 "虹の瀬孤児院"にルカとシランが訪ねてきた。子どもたちは大はしゃぎである。

「わーい、ルカ姉来たー!」

「ついでにシラン兄も!」

「おい、ついでって何だついでって」

「今日もシラン兄()、あ、間違った。シラン兄()遊ぶぞー!」

「うおい、お前今絶対"で"って言ったよな? "で"って言おうとしたよな? お前ら一体俺を何だと思ってるんだ!」

「ルカ姉が棒アイスの当たり棒だとしたら」

「すごい例えだな」

「シラン兄はその棒についてるアイス!」

「なんかすっごい微妙な気分なんだが……」

 シランと子どもたちの関係は相変わらずのようだ。ルカはそのおかしなやりとりにくすくす笑っている。

 朗らかな雰囲気。ルカもシランも虹の瀬が予想していたより元気なようだ。

 それなら、と虹の瀬は切り出す。

「ルカちゃん、シランくん、来たところ悪いけど、先生はこれから用足しに行ってきます。お昼には戻りますから、それまで子どもたちのことをお願いします」

「はい、任せてください」

 頼もしい二人の声にほっとする虹の瀬。そんな脇から子どもの一人が「よーし、おれがシラン兄ちゃんの面倒見てやるぞー」と宣う。「俺"が"お前らの面倒見んの!」といつものように口論が始まった。

 そんな光景にくすりと笑みをこぼしながら、虹の瀬は子どもたちの世話をルカたちと職員に任せ、一人生染地区の木造アパートを訪ねることにした。

 先日、十年振りくらいに自分の元を訪れてくれた男の子が翌朝に亡くなったことは知りたくなくても虹の瀬の耳に入った。

 実を言うと、あの時点ではまだ彼の話は半信半疑だったのだが、その彼の訃報を聞き、本当のことなのだと実感した。

 けれど、虹の瀬は受け入れられない。

 告げられた事実もそうだが、アオハがまだ小学生でありながらその運命を受け入れていたことが。

「大人は弱くていけないわね」

 一人苦笑した。

 木造アパートの二階、染崎ハルカが住んでいるという部屋の隣には、加賀美カナタの母親が住んでいるという。突然行ってももう十年近く会っていないのだ。ハルカは老けた自分をわからないかもしれない、と虹の瀬は自虐的なことを考えながら、角部屋の呼び鈴を押す。

 虹の瀬は自身が思っているほど老けてはいないのだが、それは確かに安全策だった。

 すぐに「はいはーい」と元気のいい声がして、かちゃりとドアが開く。中から白髪の老人が出てきた。虹の瀬の姿に驚いた顔をする。

「あらあら、まあまあ、たまげたわ。もしかして、ソラちゃんかえ?」

「お久しぶりです、るゐおばあちゃん」

 応じた虹の瀬に顔を綻ばせ、加賀美は虹の瀬を部屋に上がらせた。

「いやぁ、おんなじ町の中に住んでるんは知っとったんけど、なかなか行けんでの。ごぶさたしとります」

「いえいえこちらこそ。お元気そうで何よりです」

 リビングに行き、更にその奥の洋間が見える。洋間といっても、畳が敷かれ、和室のようになっているが──その奥にぽつんと仏壇があった。

 あ、と虹の瀬は小さく声を上げた。

 加賀美に向き直り、お線香を上げても? と問いかける。加賀美は何も言わずに頷いた。

 虹の瀬は軽く一礼してから、仏壇に向かう。そこにあった写真に、彼女は息を飲んだ──




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