悼の章-9
ずず
「さ、ね……ちゃん。早く」
ごぽり。末っ子は血を吐きながらも微笑みます。
「ぃ、いやあぁぁぁぁぁっ!!」
年子姉妹はこれでもかというほどの悲鳴を上げました。
その声を聞きつけて、他の兄弟たちが寄ってきます。一番上のお兄さんが末っ子の前に出ました。
そして、末っ子が裂いたお腹から、臓器を取り出します。無造作なため、ぶちぶちと血管がちぎれる男がしました。壊れた水道管のように色々なところから赤い水が噴き出します。
プラスチックの容器に内臓を一つ一つ乗せていくお兄さん。そこに
ウィイイィィン
末っ子が持っていたチェーンソーの刃が突然回転し始めます。何かの拍子でスイッチが押されたのでしょう。
ブゥンと暴れてチェーンソーはすこーんとお兄さんの首をはね飛ばしました。
ごろっとお兄さんの頭が年子姉妹の眼前に落ちます。二人は理性どころか意識を保っているので精一杯でした。からからの悲鳴しか上がりません。
「うるさいよ」
けれどそれを鬱陶しく思ったらしい双子の弟が、年子の姉の方を、どうにか御したチェーンソーで切りつけます。左足が飛びました。お姉さんはその場で転びます。
年子の妹の前には、引っ込み思案の子が立ちはだかりました。手にしている鉈を大きく振りかぶり、躊躇いなく自らの姉に振り下ろす姿は冷酷な鬼神。こちらのお姉さんも転びました。
引っ込み思案は倒れたお姉さんを一瞥もせず、双子の弟たちに向き直ります。
「貴方たちは自分でできるよね。私のをお願いしてもいい?」
「わかった。いいものがあるよ、姉さん」
家の中に消えていた双子の兄の方がやってきました。その手にはスプーン。察するに、これが"いいもの"のようです。
「素敵ね」
何が行われるのかわかったらしく、引っ込み思案の子は微笑みました。
それが彼女の最期の笑顔でした。
双子の兄はスプーンの先を姉の目にぐりっと押し込みます。ぷつんぷつんと何かが切れるのを聞き、ぐりんとスプーンを返しました。すると、綺麗にお姉さんの目玉が取れました。
首尾よくパーツ集めをしていた弟が容器を差し出します。そこにぽいと目玉を入れ、もう一方に差し掛かりました。一回やったので、二回目は更に上手くいきました。ぐちゅっと気持ちの悪い音がしたこと以外は完璧です。
もう一つの目玉もぽいと入れたところで、兄の方がふと気づきます。
「あれ? 兄さんの耳は?」
弟が容器の中を見、首を傾げました。よく見ると、一番上のお兄さんの顔には耳がついていませんでした。
「まずいなぁ。耳がないと成功しないのに」
「うーん」
双子は悩んだ果てに、こんな答えを出しました。
「そうだ、母さんに相談しよう」




